副産物
土石素の光がまだ新しい。
俺は規格外と思われる世界樹を背にし、俺達は白色に戻ったであろうレスカリウスを待っている。
三精霊ズは世界樹の樹の上の方でなにやら遊んでいるようだ。
「もういいよー」
「探すです」
とか。
神聖な場所なのに、あいつら本当に遊んでる。
恐れ知らずの精霊ズ。
大蛇が出たらどうしてくれる。
「シュロロロロ」って。
待っている間、先程までの出来事を思い出す。
先程までの俺の変貌ぶりはすごかった。
この世界樹に手をかけて、自分の中の土石素とこの世界樹の土石素を混ぜたら、俺の中の全ての素体が土石素になって爆発したような感じになった。
体から力が抜けて、幹にしがみつくように踏ん張った。
その後は何だか自分で自分じゃ無いような感覚でいた。
あそこまで強力な力を持つと、人間、性格まで変わってしまいうのかも知れない。そんな力だった。
「身分相応って大事だよな」とぶつぶつ言いながら、気になってもう一度俺の中の土石素を確認してみる。
素体を感じる体の中心。
各色をあてがういつもの小さな点の場所。
そこに大きな塊。
ありゃ?
コレ何じゃ?
緑の色を充てていた点が大きくなっている。
質量を感じる?
何じゃコレ。
物質?
目を閉じて、さらに意識を集中。
素体を使うと起こる副作用みたいな物か?
出来物のようなモノなら嫌だな。
転がすように感じてみる。
ピカリ、ピカリと輝く、様々な色を含んだ不思議な塊。
似たような物を見たデジャブ感。
万華鏡のように様々な光を放つ物。
コ、コレ…まさか。
大きく息を吸い込んで、
「精霊晶だー!」
俺の叫びが世界樹林にこだまする。
「どうしたのユーキ」
サフィ達が世界樹の上の方から降りてきた。
「サフィ、聞いてくれよ精霊晶だ。精霊晶が俺の中に出来ているみたいなんだ!」
「そう。すごかったもんねー。サフィもびっくりしたんだよ」
「あれほどの力を使ったのです。精霊晶も形作られて当然なのです」
そうか?
サフィとラーンからはそれほどの驚き感が伝わってこない。
あまり驚かれていない?
もっと「わーい」ってはしゃいでくれていいんじゃない?
感想それで終わり?
あれ?この熱の違いはナニ?
一瞬にして膨れ上がった俺の熱いパトス、膨れ上がり損?
そう言うモノなのか?
確かに、結果として、コルニアの大地を覆い尽くすほどの力を使ったのだ。
素体の使い方が正しかったのか間違っているのか分からないが、この精霊晶はその結果なのか。
精霊晶は精霊が力を使った時に作られ事があるのだっけ?
この作られ方は大丈夫なのか?
問題は無いのか。
驚く事ではないのか。
初めて尽くしの俺は、今度は逆に不安になってくる。
そもそも人外の力なのだ。
いまいち自分に自信の持てない俺。
―――不安にならずになんとしよう―――
そうだ、テネア。
―――可愛い精霊の嬢ちゃんよ、俺に教えてやっとくれ、易しく教えてや~とくれ―――
って、テネア樹の上からおりてこない。
俺の叫びはスルーですか。
ちょっと寂しい。
「ユーキよ、よくやってくれた」
うっそりと巨大な白銀龍がやって来た。
白銀の鎧鱗は時を駆ける龍の証だ。
待っていたぜ、レスリー、やはりレスリーは白色がよく似合う。
神秘的な感じが彼にはぴったりだ、が、ちょっと皮肉を言ってみよう。
「ああレスリー。グリーンドラゴンのままでいればいいのに」
「うん?たまにはなろうさ」
あ、なるの?
「そう不思議がるな。そなたがいなくなればコルニアの行く末を見守る者は我しかおらん。そうなれば此度のような方法もいずれは取らざるを得んだろう。そなたから教わったやり方ではあるが、許可が必要であったか?」
「いやいや許可なんてまったく必要ないよ。レスリー、その時はしっかりグリーンドラゴンになってくれ」
そうだった。
俺がいなくなった後。
これから先もコルニアはここにある。
悪素によって再び被害を受けないように、定期的に白銀龍は常盤龍へ変化して、ここにある世界樹の樹と同じ存在となり、コルニアの大地を守って行くのだ。
頼もしいなレスリー。
「そうだ、さっきの現象なんだけど、あのおかげで俺の中に精霊晶が出来たみたいなんだ。どうしたらいいかな。ほら」
見て。
とレスカリウスの目の前にポッと現物を出してみる。
キラキラと輝く俺の精霊晶。
土石素しか中心に使っていなかったのに、どうやら8色の色を持っているようだ。
色の感じ方はカイラルプスの精霊晶と変わらない。
俺達の後ろにそびえる世界樹と、同等かそれ以上の神秘的な存在感がある。
すごい代物だ。
こんなモノを俺が創った?本当に?
当事者であっても信じ難い。
「これは、黄金則の力を内包した精霊晶か」
レスリーは若干震える声でそう言うと、先ほどまで使用されていたであろう自らが持つ、カイラルプスの精霊晶を取り出した。
俺の精霊晶に箱は付いていないが、カイラルプスの精霊晶は箱に入っている。
箱の存在は、誰かが後から付け足した物なのだ。
俺もこの精霊晶の為に精霊箱と呼ばれる立派な箱を作ってやりたいな。
箱の中にあるカイラルプスの精霊晶。
レスカリウスは既に仕舞い込まれた箱から精霊晶を取り出す。
つい今ほどまで利用されていたからだろうか、精霊晶から出る光の力が強い。
レスリーは俺の精霊晶とカイラルプスの精霊晶を並べて見比べる。
若干俺の精霊晶の方が小さいが、やはり同種のモノに相違ない。
二つの精霊晶はお互い共鳴しているようにも感じられる。
ピキーンキーン。キュオーンオーン。ピカーンカーン。トコーンコーン。
なにやら遠く、時空の彼方から聞こえて来るような不思議な音が精霊晶から漏れ聞こえる。
「同属の精霊晶はお互いを呼び合うものだ。間違いない。ユーキよ、これはそなたが生成した精霊王の精霊晶だ」
驚きと喜びを半々に、興奮気味に話しかける白銀龍。
先程の精霊ズ達とは随分異なる反応だ。
そこまでの反応をしてくれると、見ていて背中がむず痒い。
精霊ズがあまりに無関心すぎたのだと理解する。
そうか、こっちの反応が普通か。
ちょっと嬉しい。
先にこっちに聞いておけば良かった。
そうだよな、この精霊晶、きっと相当なものだぞ。
多分レスカリウスに…『これは宝珠だ』って言ってもらえるはず。
「ユーキ、この精霊晶をどうするつもりだ」
真剣な表情で聞いてくるレスカリウス。
レスリー、それよか『宝珠。ホウジュ』って言ってくれないかな?
しかしうーん、どうしようか。
俺が持っていても宝の持ち腐れではあるよな。
地球へ持って帰ったとして、いや、仮に持って帰ることが出来たとして、精霊が星に宿らない地球では意味の無い石でしかないだろうから、やっぱり宝の持ち腐れではあるのだ。
そもそも、ここでの生活で手に入れた世界樹の枝にしたって、地球へ持っていける保証は何もない。
逆に地球へ帰るのに、障害になうる可能性だってある。
精霊のいない地球が、精霊力を持つモノを異物として感じてしまうかもしれない。
?む、ヤバいな。
その考えだと俺までも帰れなくなる。
地球へ帰る時、俺の力はどうなるのだろう。
来た時と逆の流れなら、精霊力は地球に着いたら無くなっている事になるのだが……。
「黄金則の力を持つ精霊晶は宝珠なのだ。ユーキ。この世界の為、その精霊晶を我に預けていってはくれまいか。もちろん、我に、邪な気持ちは無い。だが、宝珠を前に黙ってはおれぬ。そなたが明日にでもコルニアを去ると言うのならば、この精霊晶をこの世界に置いて行ってはくれぬだろうか?」
次回サブタイトル予告です。
~ボクのパパ~
お楽しみに。




