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婚約解消されたオバカ令嬢、前世を思い出す  作者: 鷹居鈴野


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第四十八話 ベル・サンテ、全国展開

 王宮の大広間で、王太子妃殿下主催の女性医療会議が開かれていた。王国全土から招かれた領主夫人や貴婦人、約六十名が居並んでいる。


 セレスティーヌは議長席に立った。


 膝が、かすかに震える。緊張だ、と真理子は自分に言い聞かせた。——症例検討会と変わらないわ。


「皆さま、王国の女性たちの命をお救いする、ベル・サンテ全国展開構想についてお話し申し上げます」


「お嬢様、ぜひご拝聴申し上げますわ」


「来年、王国五都市にベル・サンテ第二号から第六号までを開院いたします。同年、同じ五都市でベル・エトワールも五店舗、開店いたします」


「お嬢様、すごい!」


「資金は、サン・ジュスト公爵家・モンテーニュ侯爵家・シャティヨン伯爵家、そして王太子妃殿下の御内帑ごないどと王弟殿下のご後援により、合計七十万金貨をご用意いただきました」


 扇が、一斉に止まった。


「人材については、看護師第一期生十六名の卒業を機に、第二期生三十名を新たに養成いたします。これを毎年繰り返し、十年で千名の養成を目標といたします」


 脳裏に浮かんだのは、第一期生のマノンだった。入学の日は、包帯一つ満足に巻けず涙ぐんでいた娘だ。先月、彼女は難産の母子を一人で取り上げ、母親はいま元気に子育てをしている。


 数字の裏には、その顔がある。セレスティーヌは、それを忘れないと決めていた。


「お、お、お嬢様……」


「皆様の領地でも、ぜひご協力をお願い申し上げます」


 膝の震えは、もう止まっていた。


---


 その日のうちに、六十名の出席者全員が、地域協力を誓う書面に署名した。誰よりも早くと、インクを飛ばした夫人までいたほどだ。


---


 夜、ベル・サンテで、ラファエルとセレスティーヌは地図を広げていた。


「ラファエル様、私たち、本当に王国の医療を変えますわ」


「セレスティーヌ嬢、ええ、変えましょう」


「十年、本気で走ります」


「ええ。私も共に走ります」


 セレスティーヌは、地図の上の小さな染みを指先でなぞった。まだ何もない街の名前。


 二人は顔を見合わせ、深く頷いた。


---


 ——緒方真理子の、四十年の知識を、ここにすべて注ぐ。

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