↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約解消されたオバカ令嬢、前世を思い出す  作者: 鷹居鈴野


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
38/63

第二十八話 リリアとの、協業計画

その翌週。


セレスティーヌは、再びベルロワ子爵邸を訪れた。


馬車に揺られながら、ふと思う。一人じゃない、と思うだけで、こんなに気持ちが軽くなるものなのね。


応接間では、リリアがすでに図面を広げて待っていた。


「ティナさん、これ見て」


挨拶より先に、本題だった。九歳児の距離感ではない。


「ふっ、リリア。もう令嬢の振る舞い、やめたわね」


「あ、はい。二人だけの時は」


「ふふ、楽でいいわ」


---


図面は、ベル・ロワ・カーヴに隣接する未開発地のものだった。


「ティナさん、ここ、ベル・サンテとベル・エトワールをつなぐ立地だと思うの」


「……ええ?」


「本拠地は王都南、ベル・サンテは王都北。離れすぎてる」


「たしかに」


「ここ、王都中央の未開発地。合同本部、置きません?」


セレスティーヌは、目を見開いた。


「リリア、それ、面白いわね」


九歳の口から出る言葉とは思えない。だが、その中身は、緒方真理子にとっても唸るしかない案だった。


「芸能と医療と美容、三本柱。これが、王国の女性たちの人生を変える塊なんです、ティナさん」


セレスティーヌは、小さく咳払いをした。


「ふっ、ふっ。緒方真理子、四十年の医療経験で言わせてもらうけれど」


「うん?」


「女性の人生を変えるのは、職業と健康と自己肯定感よ」


言ってから、内心で自分に突っ込んだ。十七歳の令嬢が、したり顔で講演口調になっている。傍から見れば、相当おかしいはずだ。


だがリリアは、目を輝かせるばかりだった。


「自己肯定感! ヘアサロンと美容とファッション、その提供元ですね」


「そう。リリアの所属タレントは、王国の女性たちの新しい自己肯定感の象徴になるわ」


「うわぁ、ティナさん、本物のお医者さんだ……現代の知見が、ぎゅっと詰まってる……」


九歳児に「本物のお医者さん」と拝まれてしまう、四十歳の魂だ。あまりのちぐはぐさに、セレスティーヌは夜勤明けの癖で、こめかみを揉んだ。


「ふふ、二人合わせれば、十年で王国の女性が生まれ変わるわ」


---


リリアがペンを握り、図面の隅に走り書いた。


> 計画名:ベル・トリオ。

>

> 美しい三本柱。

>

> 芸能(ベル・ロワ・カーヴ/リリア)

> 医療(ベル・サンテ/ティナ)

> 美容(ベル・エトワール/ロザリー&マチルダ+ティナ)

>

> 王国の女性たちの職業、健康、自己肯定感——その三本柱を立てる。


---


セレスティーヌはペンを受け取り、隣に署名した。


「セレスティーヌ・ド・シャティヨン」


続けてリリアも署名した。


「リリア・ド・ベルロワ」


「ふっ。契約成立ね」


「ふふっ、ティナさん、わたし、わたし、わたし、すごく楽しい!」


九歳の語彙に戻ったリリアが、両手を広げた。


「私もよ、リリア」


セレスティーヌも令嬢の作法を忘れ、両手を差し出した。四十年分の分別も、この瞬間だけは脇に置いていい。


二人は応接間の真ん中で、両手を握り合った。


---


インクは、まだ乾いていない。


図面の隅の署名が、二人の手の熱で、わずかに滲んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。