soul3:地獄への電話
僕の通っている学校では変な噂が流れている。それは地獄に繋がる電話番号があるらしいと言うこと。その番号は、
<090-0000-0000>
まったく馬鹿げているとしか言いようがない。こんな噂を信じている人達がこの学校にはたくさんいる。噂は所詮、噂でしかない。この噂もだれかが流したものだろう。
というか、実はこの噂を流したのは僕自身である。なぜこんな噂を流したかと言うと面白そうだったから、ただそれだけの理由だ。
しかも僕が流した噂は地獄に繋がる電話番号があると言っただけ。番号なんか一言も言っていない。いつのまにか付け足されている。
作り話がいつのまにか広がり、勝手に増強して噂になる。まるで生き物のように…。
この手の噂は広がると次に付け足される噂はだいたい予想できる。たぶん、この番号にかけた人が死んだとかそういうのだろう。
「なぁ優斗、例の地獄に繋がる電話にかけたやつが死んだらしいぜ」
優斗と言うのは僕の名前だ。
その日、僕は友達の信二と一緒に学校が終わったあとカラオケに行っていた。カラオケを楽しんだあと帰り道で信二が噂の話をしてきた。
「へぇ〜、そうなんだ」
僕は、軽く聞き流そうとしたが信二は話を止めなかった。
「死人が出たってことはあの噂は本当だったってことだよな!」
信二は少し興奮気味だ。
本当なわけがない、僕が作った作り話だ。
死人が出たという話が付け足されるのも予想していた。
帰り道、時間はちょうど深夜0時を過ぎたところ。この辺りは街灯もほとんどなく暗い道だ。空には三日月が顔を覗かせている。
「なぁ優斗!おれたちもかけてみないか!?」
信二はこんな時間なのに妙に興奮している。カラオケでテンションがあがって抑えられなくなっているのかも知れない。
僕は話を作った張本人だからこの噂が嘘なのは知っていたが、せっかくここまで大きくなった噂だ。僕は信二の話に合わせることにした。
「おっ!いいね!面白そうじゃん!かけてみよっか?」
「おっし!かけようぜ!あっ、でもおれは怖いから優斗がかけて」「なんだよ…。信二、自分から言っといて…根性なしか?」
「まぁそう言うなって。優斗がかけた後、おれに代わってくれればいいからさ」
「まぁ僕は別に構わないけどさ…」
僕は、信二の頼みで例の番号にかけることになった。存在しない番号に…。
ピッピッピッ…。
プルルルルルップルルルルルッ…。
やはりかかるはずがない。まぁ分かりきっていたことだが。
プルルルルルップルルルルルッ…ガチャ。
「?」
電話が繋がった。僕は予想外の事態に一瞬戸惑った。
<…………>
だが、なにも聞こえない。
<うっ…うわぁぁぁぁぁあ!!>
「!!」
男の叫び声が聞こえた…。
<たっ!助けてくれぇ!たすげでぐれぇ〜!!!>
その声はまさに地獄から聞こえてきたような声だった。僕は背筋が凍りつき固まってしまった。
「おい!優斗!なんか聞こえたか?おれにも代われよ!」
そう言って信二は僕の携帯電話を横取りした。
「あ!やめろ信二!!」
僕が止めるのも聞かず信二は携帯を耳にあてた。
<…は、現在使われておりません。もう一度、番号をお確かめのうえ、お掛け直し下さい>
「……、なんだ。使われていないだってさ。やっぱり噂は噂だったみたいだな」
そう言って信二は携帯を切った。
信二から携帯を返してもらった僕は信二に不思議そうにたずねた。
「なにも聞こえなかったのか?」
「聞こえたよ。現在この番号は使われておりませんって、それがどうかしたのか?」
信二も不思議そうに聞いてくる。
僕は答えようがなかった。
その後すこし行ったところで帰り道が違うので僕は信二と別れ、一人で夜道を歩いていた。あいかわらず空には三日月が出ている。この辺りも街灯は少なく暗い道だった。さっきのこともあってか。いつも帰っているこの道も不気味に見える。
さっきのはなんだったのか。幻聴だったのかも知れない…。第一この噂を作ったのは僕だ。けど、番号は誰が付け足したんだ?。この暗い夜道を帰っているとそんな不安と恐怖に押しつぶされそうになる
プルルルルルッ
突然電話がなった。僕は鳥肌が立つほどビックリしてしまった。携帯の画面を見ると非通知でかかってきたみたいだ。こんな夜中にいったい誰が。もしかしたら信二かも知れない。僕をビックリさせてやろうとわざわざ非通知でかけてきたのかも…。
そう思った僕は電話にでた。
<………>
なにも聞こえない。
「し…、信二?」
<…な…、なんで……なんで助けてくれなかったんだ?>
++++++++
「ねぇ、聞いたぁ?また例の地獄の番号にかけた人が死んだらしいよ」
「あ!知ってる。確かアレでしょ?地獄の番号に夜中の0時頃にかけると繋がるんでしょ?」
「そうそう!それでその後に、非通知でかかってくるらしいよ。で、その電話にでると地獄に連れて行かれるらしいね」
噂は増強する。まるで生き物のように…。
でも、その噂はほんとに噂?あなたが聞いたその噂は真実の出来事なのかも知れない。
プルルルルルッ!
どうだったでしょうか?感想など頂けると幸いです




