soul2:見えていたもの……
僕は大学でサッカーのサークルに入っている。練習が終わると毎日同じ駅から電車に乗り一人暮らしの自分のアパートに帰る。いつものことだ。
その日僕はいつもより練習を終わるのが遅くなってしまった。とはいえいつもより1時間ほど遅くなってしまっただけなんだが…。時間は夜10時が過ぎたところだった。
いつものように大学の最寄りの駅から電車に乗り、家に向かって帰りはじめた。
この電車はいつものことながら、何故こんなところを通るのか不思議に思う場所を通る。それは神社の境内を通るのだ。わざわざこんな場所を通らなくてもと思うのだがいつものことなので、少しも気にはならなかった。
僕はいつも座席に座らない、特に理由はないがただなんとなく。だから僕は、いつもドアに寄りかかって外を眺めている。それもいつものことだ。
そしていつものように神社の境内を通る。ここはいつも暗い、街灯もなく、神社特有の重々しさを放っている。
電車が神社の境内を抜けようとした時、ふと目の前を青白い光のようなものが通り過ぎた。驚いた僕は、今通り過ぎた神社のほうを見る。なにもない…。当然だ。なにかあるはずがない。気のせいに決まっている
夜遅くに僕はアパートに着いた。もう11時も過ぎている。あまり家具のおいていないこの部屋にはテレビとテーブルがあるだけ後は備え付けの冷蔵庫と、電話がおいてあった。電話は基本的には使わない。携帯電話もあるし、学生の僕にはまず必要ない。その証拠になることなんてほとんどない。
----プルルルルルップルルルルルッ----
突然備え付けの電話がなった。この電話はほとんど鳴ることはない。でてもいつもセールスの電話くらいなものだ。だから鳴っても出ることもほとんどない。でも今日は違った。何故か電話に出てしまった。まるで電話に吸い寄せられるように……。
<ヒュー!ガタンッゴトンッガタンッゴトンッ…………………プッ>
切れた。受話器の奥からは電車の走る音が聞こえた。だれかが線路の近くからかけてきたのだろうか?
----プルルルルルップルルルルルッ----
また電話が鳴った。さっきの人かな?と思った僕はまた電話をとった。
<ヒュー!ガタンッゴトンッガタンッゴトンッ………………ドゴッ!!!…プッ>
切れた。受話器の奥からはまた電車の走る音が聞こえた。けど今度はその後になにかがぶつかったような鈍い音がした。さすがに気味が悪くなった僕は電話のコードを抜いた。これで大丈夫なはずだ。
----ピピピピピピッピピピピピピッ----
身体が一瞬固まった。今度は携帯電話が鳴った。表示を見てみると友達からだった。僕は少し安心して電話に出た。
<ヒュー!ガタンッゴトンッ…はずでしょ…ドゴッ!!!…プッ>
受話器の奥から聞こえてきたのは友達の声ではなかった。また電車が走る音…。しかもよく聞き取れなかったがなにか言っている。しかし、さすがに気味が悪くなった僕は電話のコードを抜いた。これで大丈夫なはずだ。
----ピピピピピピッピピピピピピッ----
身体が一瞬固まった。
今度は携帯電話が鳴った。表示を見てみると友達からだった。僕は少し安心して電話に出た。
<ヒュー!ガタンッゴトンッ…はずでしょ…ドゴッ!!!…プッ>
受話器の奥から聞こえてきたのは友達の声ではなかった。また電車が走る音…。しかもよく聞き取れなかったがなにか言っている。
しかし、気味が悪い。一体この電話はなんなんだろう?。イタズラ電話にしても手が込みすぎている。しかもこんな時間に…。僕はもう電話が鳴らないように携帯電話の電源を切り、気分直しにテレビをつけた。
<ザー−−−−−−−−−−−−>
テレビには砂嵐が映っているだけ、時間も遅いし、もうテレビ番組は全部終わったのだろうか?。しかしよく聞くとなにかがテレビのスピーカーから聞こえる。
<ザー…、ヒュー!ガタンッゴトンッ…見えていたはずでしょ…ドゴンッッ!!!>
僕は思わずテレビの電源を切った。しかし、はっきり聞こえた。そして全て理解できた。
そうだ…。僕は見えていたんだ。電車が神社の境内を通り過ぎようとした瞬間…顔が判別できないくらいに潰された子供の姿を…。ただ僕は、気が付かないフリをしていただけ。見えていたんだ…。
翌朝、僕は子供の姿が見えた場所に花を添えにいった。これは後で知ったことなんだが、2日前にこの場所で七歳の少年が電車にひかれ死亡したそうだ。時間は昨日、僕が乗った時間の電車。顔は判別できないくらい潰されていたらしい…。
そしてその日から奇妙な電話はかかってこなくなった。
きっとあの少年は寂しかったんだろう。
そして見えていたのに見えていないフリをした僕に怒っていたのかもしれない…。
今日もまた、いつものように電車は神社の境内を静かに通りすぎて行った。
この話、実は一部実話が含まれています。神社の境内を通る電車はほんとにあります。なぜあんなところを通るのか不思議なのですが、ほんとに通っているのです




