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戦隊ピンクに復帰したけど、やっぱり引退したい  作者: 安田景壹
第二章 あれはあの日の流れ星

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あれはあの日の流れ星 6

 バーニンレッド――灯火春彦は、ビルの物影に隠れ、岩石怪人の視界から離れていた。

 春彦が檻に捕まらなかったのは偶然に過ぎない。たまたま、足を止めてしまったのだ。だが、代わりにブルーとピンクが捕まってしまった。

 何とかしなければならない。幸い、まだこちらの居所は岩石怪人には知られていない。


「逃げたと思われてないだろうな……」


 ネガティブな考えが浮かぶ。いや、こんなふうに考えちゃ駄目だ。二人が捕まった以上、今、この場で助けられるのは自分しかいない。

 空を見上げる。檻は浮かんでいないように見える。つまり今、怪人は能力を使っていないのだろう。

 ――ひとつ、仮設があった。


『いいぞ。どんどん逃げろ』


 岩石怪人はそんな事を言っていた。ほかにも、『もっと逃げて! プリィズン!』とか。もしかすると、春彦が捕まらなかったのは……。

 周囲を確認し、春彦はチェンジャーの通信機能を使う。


「……バンバン、聞こえる?」

『聞こえるよ、ハルヒコ。アキツグとミサトが捕まってしまったようだね』


 本部にいるバン・バーニヤンが応答した。


「そうなんだ。檻の仕組みは何となく心当たりがあるんだけど、檻自体を壊す方法を知りたい」

『なるほど。檻の仕組みの心当たりって?』


 春彦は自身の推理を話した。


『――確かに。それは十分あり得る話だ』


 バン・バーニヤンは続けて言った。


『ただし、その条件なら、あの岩石怪人の能力はかなり強固なものだろう。おそらく外からでも檻を壊す事はできないはずだ』

「そんな!」

『何か策が必要だ。あいつが檻から人を出さざるを得ないような策を……』


 春彦はじっと考え込んだ。急がなければ。ブルーとピンクの二人もそうだが、もう一つのギャンギャンスタンプの反応も気になる。たぶん、グリーンとブラックが向かっているのだろうが……。


「バンバン。そういえばフェニックスに新機能つけるって言っていたよね」


 マシンフェニックスは五体あるバーニンマシンの一体で、レッドの専用機でもある。


『特性サポート機能の事かい? 実装済みだけど』


 バン・バーニヤンの答えに、春彦は頷いた。


「ちょっと試してみたい事があるんだ。今から言う事、できるかな?」



「お仲間の赤いの、逃げてしまったようだなあ!」


 岩石怪人は意気揚々と私たちの前で宣言した。

 周囲には無数の檻があり、その中には逃げ遅れた人々が捕まっている。

 私が何か言う前に、ブルーが地面に槍を突き立てて言った。


「ふん。ギャンギャングの常識で考えないでほしいな。うちのレッドが逃げるわけないだろ」

「そうなのか? 逃げてない証拠を提示してほしいねプリィズン」

「すぐにわかるさ。証拠なんかなくたってな」


 喫茶店の時とは打って変わって、ブルー――泉君はずいぶん灯火君の事を信じているようだった。


「はっ。減らず口を言う地球人はつまらないねえ。……ああ、しかしちょっと疲れた。何百年か振りに能力を使ったからなあ……」


 言いながら、岩石怪人はすぐそばのベンチにどかっと座り、


「……グー……スー……グゥ……」


 寝た。

 上半身に力が入らなくなったのか、岩石のような身体はすぐにベンチの上で横向きになった。


「いや、嘘でしょ……」


 三つの戦隊を経験したが、捕まえているとはいえ敵の前で眠り出す怪人は初めてだった。


「……まあ、実際逃げてないとは思うけどさ。本当に大丈夫? 灯火君」


 岩石怪人が寝始めたのをいい事に、私はそっとブルーに耳打ちする。


「心配ですか。あいつには土壇場で逃げ出すほどの根性はありませんよ。あとで怒られるのを怖がるタイプですから」


 まるで親戚の子どもについて話すかのように、バーニンブルーは言った。


「……信用しているってわけね」

「自分に自信がないのがあいつの悪いところです。ちょっとした事でも、(つまず)くと後ろ向きになってしまう。大事なところでは頑張れる奴なのに……」


 泉君は遠くを見るように言った。

 なるほど。灯火君については当たりが強い印象だったが、案外芯の部分では認めているのか。

 だが……


「それ、言った?」

「え?」

「本人にさ。お前は大事なところで頑張れる奴だ、って」

「まさか。言いませんよ。恥ずかしい」


 ……まあ、ありがちな話だ。


「……泉君」


 私は変身を解除した。こういうのはマスク越しより、顔を見せて言ったほうがいい。


「姫木さん?」

「認めているなら、ちゃんとその事を伝えてやりな。案外そういうのって、本人には必要な言葉なんだよ。ちゃんと自分を見てくれる人間がいる事を知るのが、一番頑張る活力になるでしょ」


 泉君は、しばし声もなく、しかし何かわかったような佇まいで顔をあげた。


「そうかもしれません。さすが先輩ですね、姫木さん」

「別に。そんな大層なもんじゃない」


 言って、私は無意識に煙草を銜えた。


「あーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」

「うわっ」


 岩石怪人がでかい声を出して跳び起きたせいで、思わず銜えていた煙草を取り落とした。


「忘れていた! ピースフルを下げるんだったな。えーっと、それから……」


 ばっと立ち上がった岩石怪人が、奇妙なオーラを纏う。青く、暗い妖気めいたオーラ。

 あれに近しいものを知っている。つい最近知ったものだ。泉君が明らかに動揺していた。


「スタンプの反応は二つ。まさか……」

「ほぉおおお! これだ!」


 岩石怪人の掌が発光し、


 ――バァァアアン!!


 聞き覚えのある音ともに、岩石怪人の掌から光が四方八方に放出される。私たちが捕らえられた檻にも、光が着弾する。

 いや、着弾ではない。

 これは……押印だ。

 掌サイズのギャンギャンスタンプの紋章が、鉄格子の上で邪悪に輝いている。


「あいつ……自分でスタンプを押せるのか」


 飛び交う光が歪な高音を立てながら、次々と人々が捕らえられた檻にぶつかっていく。異常事態だ。そこら中から混乱した人々の悲鳴が聞こえる。

 私たちの檻に押されたスタンプが瞬く間にその色を濃くしていく。


「ピースフルが下がっている……」


 泉君が呟いた。

 人々の平和を感じる気持ち――ピースフルが下がると、ギャンギャンスタンプのインクは濃くなる。紋章にインクが満ち満ちて、完全に刻まれた時、その地域の支配が完了する。


「やばい……」


 岩石怪人の支配が、急速に進み始めていた。

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