第5話:麻緒梨の悲しき過去。
今回〔麻緒梨の悲しき過去〕には少々グロテスクなシーンがあります。体調不良や血を想像するだけでもいやと言う方は読まないほうがいいと思います。この小説を呼んだせいで体調不良をおこしたという読者さんがいらっしゃいましても、私(筆者)は責任を負いかねます。体調や血などのグロテスクな描写場面などが大丈夫かどうか確認してからこの章を見ることを私(筆者)は読者の皆様におすすめします。
また、内容を少し修正させていただきました。すみませんでした。
結局、あたしは何がしたいのか自分でもよくわからずにいた。
愛を与えるよりも、愛を求めるほうが、あたしにとって簡単だったから――…。
恋愛依存症……。
恋愛依存症……。
エコーのようにあたしの脳裏に繰り返される私の病名。
過去の出来事が原因なら。
心当たりがたくさんありすぎて困るくらい。
今もほら。
弟や妹たちが騒がしいくらい。
あたしは今、ここにいる住んでいる女性をお母さんと呼ことができない。
それは彼女だけじゃない。
あそこのソファーにごろりと横たわってる男性もお父さんとは呼べない。
また、あたしよりすこし年上の男性もお兄さんとは呼べない。
呼べるのはかろうじての、3歳のやんちゃ坊主。
宏‐ヒロ‐のことを弟。
そして、まだ1歳の‐ゆず‐のことを妹。と言えるくらい。
この家庭にいつもあたしの影はない。
朝ご飯だってバイト代で最小限に控えておやつは長持ちするガムをたまーに買うくらい。
お昼も軽食ですませて、バイトに労力費やして。
バイトが終わるといい男探して。
たまに晩ご飯おごってもらったりで。
そんなんで帰りはいつも遅くなるけど。
仮の姿でしかない家族はあたしの心配なんてしない。
だってあたしはこの家族の本当の子供ではないのだから――…。
あたしのほんとの家族は。
あたしだけを残して。
逝っちゃったもん……。
お爺ちゃんやお婆ちゃん。お父さんやお母さん。
楽しい旅行になるはずだった。
本当はあんなはずじゃなかった――…。
○●○●○
麻緒梨当時5歳。
とっても親馬鹿な両親で、あたしが小学生になるのをとっても楽しみにしてた。
親の欲目か、よく二人はあたしを可愛いといって頭をくしゃくしゃに撫でたり、頬摺りをした。
あの日も。
そうだったよね――…。
小学校入学祝いに家族みんなで旅行行こうって。
お爺ちゃんやお婆ちゃんまで無理矢理巻き込んで。
みんなとっても楽しそうにしてた。
あたしも楽しみだった。
この時はピクニック♪ぐらいにしか考えてなくて。
まだまだあたしも甘えたい盛りだった。
あたしはピカピカのランドセルが嬉しくて。
自分の荷物をランドセルに入れてくんだ!って聞かなくて。
車のなかでもずっとランドセルを抱っこして、ランドセルの皮の匂いを嗅いでくさい!って言ってたっけ。
でもいきなり車は揺れ初めて、そこからさきの記憶はない。
こんなにも鮮明に覚えてるのに。
鮮明な記憶は私に優しくなんかない。
目が覚めたらまだ視界がぼやけてて。
目蓋が重くて。
私は知らない場所に寝かされていた。
頭は重くて。
体中包帯だらけ。
ぬるま湯でさえ一人で飲めなくて、ナースさんがいつも誰か一人。
あたしに付きっきりだった。
近くにはあんなにピカピカだったランドセルが薄汚れて傷だらけになり、背負う部分は裂けて、とても背負える状態じゃなかった。
ランドセルの中にはいつもお気に入りで一緒にいるうさちゃんが少し綿が見えてる状態で中に入ってた。
取り出してみるとうさちゃんは茶色かった。
しけっていて。
生々しく茶色い。
おまけに茶色が手に付いて茶色はとても鉄臭かった。
そう。
茶色は……。
血だった。
あたしはうさちゃんを投げ捨てると自由に話すことのできない口でめいいっぱいお母さんやお父さんやお婆ちゃん。お爺ちゃんを呼んだ。
ヒステリーが納まるとあたしはベッドの上でうずくまっていた。
そして親戚の家をたらい回しにされ、今いるのがここってわけ――…。
あたしに残ったのは、生々しく鮮明ないやな記憶と写真。
あたしもまだ小さくて。
両親もまだ若い。
観覧車の前で三人そろって満面の笑みでピースをしていて。
私はお父さんに肩車をされながら片手にピース。
片手にアイスを握っていて。
お母さんはあたしの背中を片手で押さえて片手でピース。
お父さんはあたしの足を片手で押さえ、片手でピース。
.。・*・。.
|みんな。 |
|幸せそう。|
’°・*・゜’
あたしに残ったのは、その一枚の写真だけなんだ――…。




