第5話:悟夢の悲しき過去。
こちらの章〔悟夢の悲しき過去。〕にもグロテスクな表現や、虐待などの描写場面があります。控えてはあるものの、ダメな方は見ないほうをおすすめします。この章でも読者の方々に体調不良などがありましても、私(筆者)は、責任を負いかねます。体調や好き嫌いをご確認のうえ、小説にお入りください。
俺はもとはと言えば。
あの母親のせいだと思う。
今や警察につかまっていねーけどよ。
いや。実に滑稽だな。
親父の関心はいつも仕事や俺の成績しかいかねぇんだ。
あのババァと離婚した今でさえ。
もとはと言えば。
あのくそババァのせいだ。
俺の誰にも言いたくない過去は。
奴からの虐待から始まったんだからな。
あの女はいつも俺が悪いと叱った。
罵った。
怒鳴り付けた。
幼かった俺は、必死に誤った。
きちんといい子にしててもそれが認めてもらえるはずもなく。
俺はきっちんにつれていかれると、手を火あぶりにされた。
あのババァ、一度は俺の指まで切断しようとしやがった。
今でも覚えてる。
自分の手から湧きだしてくる赤い血液。
生暖かくて、少し、鉄臭かった。
ポタポタとしたたる血が、気持ち悪くて。
俺は気絶したんだ。
○●○●○
悟夢当時6歳。
小学校初の夏休みのことだった。
いつものようにおとなしくしていた。
親父にSOSをだしてもちっとも気付かない。
やつの興味はいつも仕事と俺の成績。
今でもそれはかわらない――…。
何よりもババァのほうはもっとひどかった。
やつは虐待以外にも窃盗をしていたらしい。
夏休みに警察に逮捕され、虐待もバレて、親父と奴は離婚をする。
奴は俺を名前で呼んだことはない。
いつも、“それ”や“あれ”だ。
離婚理由は簡単だった。世間からの目しか気にしない親父は、奴の逮捕について、自分の印象が悪くなるから離婚しよう。と。
その頃ババァは俺。いや、俺たちに向かって言った。
「いいよ!あんたなんてこっちからお断わりだぁ!ただし、それもあんたの方で始末してよね!」
俺が最後に聞いた母親の声。
いつも俺を見下し、おとしめ、嘲笑っていたババァの声。
結局俺は世間体しか気にしてはいない親父に引き取られてったんだ。
それからしばらくしたのちに俺は傘を壊し、びしょぬれで帰っていった日があった。
怒られるかと思った。
でも、帰ってくるとそこには電話をして、書き物をし、俺に背を向ける親父の姿しかなかった。
「おかえり」とも、
「何で濡れてるんだ?」とも聞かないただただ無視されるだけの存在。
それが俺だった。
今も俺の手には切断されかけた傷跡が指輪のようにプックリとあとが残っていて見るのさえいやになる。
ポツリ。
雫で我に返った俺は空を見上げた。
ポツリ。
真っ暗でどんよりと曇っている。
ポツポツポツ・・・。
俺はビルに駆け込んだ。
サァ――。
雨が沢山振る。
今はただ。
過去と麻緒梨を思い、ぼーっとするだけだ。




