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歩けばそこは古の

無限袋から昔懐かしの装備を引きずりだし身に纏う。

一品一品に思い入れがあり、一つ一つ身につける度、気味悪くにやけてしまう。

ああ、コイツはこんな感触なんだ。

ああ、コイツのおかげで何度か助かったけ・・・重たっ。

ひとまず腰に、武器といえば武器で防具といえば防具で、兵器といえばその正体は・・・な、仮称刀槌を佩く。

現状確認、空気があり水があり、食料はそこら辺にいた小動物を捕まえて調理した。

スキル的にはそれなりのものを持っていたけど中の人が違うからどうにもならないかなーとか思っていたのだが、驚いたことに。

まさに体が覚えている、というレベルで。

血を抜き皮を剥ぎ筋を切って、サクっと下ごしらえが出来てしまった。

中の人のスキルでは、こうは行かない。

地味に全スキル自分限界を目指した外の人、恐るべし。


「ごちそうさまでした、ゲフー」

貴様を喰らって自分は生きる、と誓いを新たに小動物の残骸を土に埋め。

ひとまずのんびり歩いてみようか、と、自分は適当な方向に歩き出した。

山育ちだから山の方向よりは地平線ーとか水平線ーって感じの方向に行きたいねー、等と独り言を言いつつ。




ひとまず寝床でも探さねば、と、欠伸をしながら考える。

適当に歩けば何がしか現れないかなぁ、と、淡い期待を込めての徒歩旅であったが、全くの空振り。

延々と続く草原に、夕日は既に落ち。

何気に轍のようなものの続く道らしきものがあったので、それを延々と歩き続けてきたわけであるが。


「未知の道にぃ 一人~♪ って感じだねぇ」

そのまんまじゃねぇか、と、仲間がいたら突っ込んでくれただろうか。

そんな他愛ないことを考えつつ。

空には星、月、地には薄闇。

聞こえてくるは虫の音、狼の遠吠え、蹄の音。

ん、蹄?


くるりと蹄の音の方向、後ろを振り向き耳を澄ます。

そして肌で周囲を見るように気配視覚の瞼を開く。

刀槌を右手に、臨戦態勢完成。

<永久化>してるものの開放は、どうしたものかな。

結界系だけで、いいか・・・生きるの優先、いのちをだいじに。

ってか、空飛んで様子見でもいい気がするけど・・・もう見つかってるっぽいのでこの理由の分からない現状初の話が通じるエンカウントでありますようにと期待を込めて、待つ。

遠目で分かりづらいが、気配視覚は見逃さず。

一騎の、騎馬。

装備は軽装、何がしかの伝令兵、といった感である。

接触まで、あと数秒。

普通に通り過ぎる可能性も考え、道の横に避けて待つ。

はたして。


「旅の方か、こんな場所に徒歩で一人か?」

急ぎっぽかった馬の足をわざわざ止めてこちらに話しかけてくる軽装騎馬兵(不確定名)。

日本語ではない言語、外の人は言っている、コレは共通語だ、と。

いよっし、話が通じる出会いゲット。

このままなし崩し的に貴様のハラワタを喰らって・・・去れ魔王。


「はい、仲間とはぐれまして。 轍のある道があったので、気長に歩けば村でもあるか、と歩いていました」

ひとまず端的に説明を試みる。

腰は低く、腰は低く・・・顔が無表情にならないように、少しだけにこやかに。

そう心のなかで唱えつつ、軽装さんの返答を待つ。


「それは大変だな。 ここからだと、次の村まで早足で行っても半日はかかるぞ?」

本気で心配そうに言ってくれている軽装さんに好感度アップな自分がいる。

半日かー、時速五キロで12時間として・・・飛んで1時間掛からないね無問題。


「うわぁ、半日ですか。 でも野営準備も面倒になってきたので徹夜でのんびり散歩と思って歩きます」

わざわざお急ぎの足を止めてまで教えていただいてありがとうございます、と、深々頭を下げてみる。


「ああ、まぁ、旅の方がそれならそれでいいのだが。 よかったら、後ろに乗って行くかね?」

とても呆れられた声色でございました、まる

ってか、この人こんな得体のしれない一人旅の男を乗っけて行ってくれるつもりだった、だと・・・?

いけない、こんないい人には自分に関わった挙句に変な方向から死亡フラグとか立ちかねない状況をプレゼントしてはいけない。


「お気持ちだけいただきます、ありがとうございました。 そういえば、お急ぎのご様子でしたが、行かれなくても平気でしょうか?」

ぬるりと矛先を変えてみるぜ・・・さぁ、どう来る・・・。


「うむ、そうだった。 見ての通り急ぎであった。 共に行かぬのなら私はこれにて失礼する。 このあたりはさほど魔物なども湧かぬが、道中気をつけて」

早口に言い切ると、軽装さんは颯爽と馬の脇腹に蹴りくれて走り去っていった。

そういえば、こういう場面見ると毎回思うが、拍車とかつけた靴で馬蹴りつけるって、当人・・・当馬からしたらどんな気持ちなんだろうね。

別にあんなん無くても合図くらいで走ってくれないかね、訓練してれば・・・。

と、話がそれた。

さて、こうして情報は手に入り、人もいる事がわかり、言語はゲームの共通語と来たもんだ。

えーっと、シンプルに行くなら、ゲームの中とかいう流れでしょうかこれ。

次点で、やけにリアルでしつこい夢。

もしくは・・・酷似した、別の、世界とか・・・?

実は中の人の記憶そのものが作り物と言う線もアリ・・・か・・・?

数秒考えたが、答えなど出るわけも無し。

そもそも、どれが正解でも、結局は食って寝て生きて行く方向しかない。

ん、自殺してみる?

いやいや、人間誰しも必ず1回死ねるんだから、別に慌てなくてもいいもんじゃよ。

早くそのワイルドカード切ったところで、自分自身が無くなるのが早いか遅いかの違いだけじゃないか。

さて、それではとりあえず。


「のんびり、歩こうか・・・いきなり飛んであの人より早く着いてたら何を言われるか分かったもんじゃないしのぅ」

自分は静かに暮らしたい。

ひとまず人間の生活圏についたら酒屋でもやってのんびり暮らそう。

そして金を貯めて・・・旅して、みようか・・・。

万が一友人達も同様の状態だとしたら・・・探さにゃ、ならんしなぁ。

あ。

そういや、袋の中に、金あるんじゃ・・・。

金ー、金ー、と、念じて無限袋を逆さに振ってみる。

ペチン、と、地面に銀貨が三枚落っこちた。

以上。

赤貧でした。




夜の散歩も楽しいもので。

ひとまず貧しさに頭が醒めたので、道すがら外の人技能の薬草知識などを動員して文字通りの道草を食いつつのんびりと歩を進める。

無限袋の弱点、生物入れると即死するという点から生薬関連をぶち込むのは躊躇われるため、両手に草の束を握りしめて夜道を徘徊する一人旅の男が完成。

気付けにと袋の中の大量備蓄酒を飲み始めたりしたものだから、既にすごいへべれけに進化。


「おおっと、いけない草を発見ー。 ゲットだゼェ→」

具体的に言うと大麻。

コカの葉っぱもあるよ!

ケシの実を忘れてはいけないな、BOY?

ひゃっふー、ひょっとしてここが天国?


「ってなんで麻薬畑やねんー!」

即時廃棄。

恐るべし知らない土地の道端雑草。

いっきに酔いが醒めたわどうしてくれる・・・。

そんな感じで夜の散歩を満喫していたため、愉快に時間が経過。

既に空の端が薄明かりを帯びてきている。

結構麻薬刈りで時間を食ってしまったか・・・こんな事ならもう少し早く飛んでおくべきだったか。

仕方なし。

飛んでるの見つかって目立ちたくもないので。

このまま歩け、歩け、歩けー、と歌いつつ両手の薬草をブンブン振って道の真中を暴歩する。

時給は12ガメルくらい。

襲い来る眠気に対抗するため半ばヤケで適当な歌を歌い、思い出したように道草を摘んで歩き。

そこを発見したのは、太陽も空の半ばに登ろうか、といった時間のことだった。




苔むした石作りの住居・・・の、残骸。

記憶にある姿からはまるで似つかぬアフターがそこにある。

道から外れた小高い丘の、見覚えあるその頂きに。

自身が日常大工でコツコツ建てた石造りの家が、あった。


うわぁゲーム内、確定・・・か?

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