76話 語り部
妖精の国のお城では、魔王討伐の宴が催され
ツムギ一行は妖精たちとの会合に
一喜一憂しておりました。
ナデシコとの再会で泣き崩れてしまった
ツムギでしたが、やっと落ち着きを取り戻し
この一晩限りの夢の宴を楽しんでおります。
というのも、妖精の涙の効果が切れるのが一晩。
本来死んでから行く別世界でございます。
ツムギ一行は翌朝には現世へ帰ることになるのです。
「お母様……お母様……」
ナデシコから片時も離れないツムギ。
「アヤメ。あなたもこちらへ来なさい」
「……はい! ナデシコ様」
「よく、ツムギを育て、護ってくれましたね。
わたしにとってはあなたも可愛い娘のようなもの」
「ナデシコ様。わたしはツムギ様に仕えることが
できたこと自体がこの上なき誉れでございます」
「ヒミコとはどうですか?」
「……はい。ヒミコ様とはほとんどもう
お会いすることはありません。ヒミコ様が
わたしをお許しくださることはないでしょう……
しかし、わたし自身が選んだ道。
後悔はありません……」
「そうですか……ありがとうアヤメ。
では、今日、この日だけは、私の前でだけは
甘え、泣くことを許しましょう……」
「……!」
「アヤぽん……?」
「……うう! ナデシコ様! うぅ……!」
アヤメもツムギと共にナデシコに抱かれ
抑えきれない涙を今日だけは流すのでした。
「お母様……見てください。
わたくしの可愛い従者たちでございますわ」
「ええ。なんて素敵な従者たち……。
母は甘えん坊のツムギの心配をしていましたが
いらぬ心配だったようですね……」
「ええ〜? 心配はしてほしいですわ〜?」
「うふふ。
もうあなたも立派にあの子達の主なのでしょう?」
「わたくしの方がみんなに
お世話になりっぱなしでございますわ〜……」
「うふふ。何も問題ありません。
ツムギはツムギの思うままに生きて良いのです」
「はい……お母様」
宴もすすみナデシコからみんなへ
言伝があるとのことで集められました。
「ツムギを護ってくださり感謝いたします。
皆様にはどうしてもお願いしたいことがあります」
ツムギ一行はナデシコの前に揃いました。
「ツムギの持つ【授名】の力はかつて
この世界の創造神が持っていたものと同じ力です」
「……創造神……!?」
「……!?」
ざわざわ……
「ええ。この世界を創った創造神とは
天之御中主神と呼ばれる万物を創り上げた神。
しかし、それらは創っただけでは、ただ、
そこにあるだけでした。そこへ現れたのが
もう1人の創造神。そのもう1人の創造神は
あらゆるモノに名前をつけました。
それらは星と呼ばれ、大地となり海となり、
あらゆる生物に魂を吹き込み存在を確立させました。
この世界の創造神は二人いたのです。
そのもう1人の【命名神】と呼ばれた神の名は
【天照大神】。
今は天界を司る神として
天空要塞高天原を抜けた先にて
あなたたちを見守っています」
「命名神様のお力……」
「天界の神様……」
「ツムギの授名には無限の可能性があります。
力とは使いようです。使い方次第では
良いことにも悪いことにも
どちらへも向かってしまうものなのです」
「我が主様は神の力を……ポッ」
「どうか、ツムギのことをお願い致します。
この妖精の国は所詮は死後の世界……
過去であり、歴史であります。
しかし、今の世界を護り変えることができるのは
今を生きる、あなたたちなのです」
「ナデシコ様……かしこまりました……!」
「そして、ツムギ。残念なことに今、
現世ではアマハラとイザナミが
戦争を始めてしまっています」
「戦争……」
「この二家の戦争はヤマト国内だけの
問題では収まらず、世界中を巻き込む戦争に
発展する危険があります」
「なんと……」
「すぐにヤマト国へ帰還し
戦争をやめさせるのです」
「はい……! お母様……わかりました……!」
ヤマト国においてついにアマハラとイザナミの戦争が
始まってしまった様子……。
ツムギ一行はこれにて
世界中の旅を終えヤマト国へ帰ることになります。
「チヨ……妖精の涙を……」
「姫に渡せばいいアルか?」
「ええ。もうチャイ国に渡す必要はないでしょう」
「もう、現女王はナデシコだからな」
千代白雲こと、チヨちゃんはどうやら
この妖精の国の先代女王らしい。
チャイ国が妖精を神と崇め祀っていたのは
このチヨちゃんの影響だったようです。
「妖精の涙をツムギ、あなたに預けます。
決して誰かに渡してはいけませんよ?」
「妖精の国はたしかヤマト家の管轄だったのでは?」
「ヤマト家には八咫の鏡があります。
あれは何かあった時にこの妖精の国と
やり取りをすることができますが、
ここ100年やり取りをしたことはありません。
気にする必要は無いでしょう」
「わかりました……妖精の涙は
わたくしが大事に管理しますわ……」
「頼みましたよツムギ。
わたしの可愛いツムギ……
どうかアマハラを……
ヤマト国の未来を
お願いします……」
おとぎの国と呼ばれるこの
死後の異世界、妖精の国。
一夜限りの不思議な異世界の冒険にて
ツムギ一行は思い出の偉人や
憧れの英雄たちと出会う事ができ、
そしてまた現世へと帰ります。
これからこの
森羅万象姫のお伽噺は
最終章
ヤマト国編へと突入。
語り部をここまで務めさせて頂きました
このわたし、ご紹介いただいたようなので
改めてお読みくださっている皆様に
ご挨拶させていただきますね。
天界より
このお伽噺の語り部を
担当させていただいております
わたしは
命名神こと
【天照大神】と申します。
物語は最終章へ。
どうぞ皆様
あともう少し
このツムギのお伽噺に
お付き合いいただけますよう
どうぞ
よろしくお願いいたします――
読んでいただきありがとうございます!
もし少しでも面白いな、
続きが気になるなと
思っていただけましたら
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