↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
34/67

34話 竜の結末


⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆






妾たち竜というのはこの世界で最強であり

食物連鎖に属していない。天敵がおらぬ。


つまり死ぬ時は寿命じゃ。

そして竜というのは自分の死期を悟る。

もう長くないと自分で理解するのじゃ。


そこにいる竜、コハクの親父は死期を悟り

約20年前妾に後を託して息絶えた。

妾が竜を倒したというのはなんてことはない……

真実は竜は寿命で死んだだけなのじゃ。


妾はコハクの親父の死を通して

何かしら後世の役に立てたいと思い、

竜同士にだけ伝わる、とある伝説を試した。


――竜の肉を食ろうた竜は竜人と成る――


そう、妾は竜の肉を喰らい竜人となった。

妾達を討伐対象とする人間達とわかりあうためじゃ。


冒険者というのはとても良い。

一から成り上がるのにとても便利な仕事であった。

名を売った妾は人間の世界の中でも

大きな影響力を持ち、竜を討伐ではなく、

共に生きる対象とするべく

人間に認知させることを

目的として過ごしたのじゃ。


だが……アマゾネスの連中は上手くできたが

ナーロッパの連中には結局

竜は最強の魔物という認知を

変えることは出来んかった。


そして、妾は人間とのこの、

くだらん戦いを終わらせるためにここに来た。

ここで、最強の人間スイと竜は

相打ちとなり共に死ぬというシナリオ。


世界中に竜はもう居ないという結末を

冒険者共に伝えさせるために

ドラゴン退治ツアーという企画を起こし

冒険者を連れてきたのじゃ。


つまり、死期を悟った妾はここで死に、

妾の死肉を娘に食わせることで

娘を竜人に進化させ、

自由に生きさせるのが目的。


妾の死体を半分ずつ、

竜と人間とに分けて

相打ちになったと見せかける。

お前たちはその結果を世界に伝える。

だから妾たちの真実を

見せないように先にお前たちを一度

入口で意識を失わせ、ドラゴンとスイの死という

結果だけを見せようとしていたのじゃ。


人間との共存――


妾の願いはまだ夢半ばであったが

あとは竜人となる娘のコハクに託すことにする。

しかし、娘には好きに生きさせてやりたい。

どう生きるのか、これから何を感じ、

何を成したいとするかは、

強制などせぬし、できぬ。

だが、可能性と選択肢だけは

娘に残してやりたいという

妾の親心が今回の真相じゃ。





⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆






竜人スイから語られた真相は

竜という孤独な頂点に立つ者の

強くも優しく、そして悲しい噺でした。



「……ぅう!スイ様……」


涙を止めれないツムギはその場で泣き崩れてしまい

みんなから支えられている。


真相を知ったツムギ一行は

この竜と竜人にかけてやれる言葉は持っておらず


「そうか、ではコハクの方は

スイが来た時点で

目的を察していたのですね……」


「そうだな。母が泣きながら父を食う姿を

妾は見ておる。それと同じことを娘にさせることが

どれほど辛く悲しく、そして誇らしいことか……

きっと人間には理解など出来ぬであろう」


「……」


みんなかける言葉が見当たらない。

死期が来てしまった。

だからスイはここへ来た。

竜と人間の共存、そして娘のために――


「……理解など、できませんわ!!」


「ぎゃはは。娘、気持ちだけ貰っておく。

妾たちのような存在はな……生き様ではない。

死に様なのじゃ……滑稽と笑えば良い。

だが、妾の死に様の邪魔はせんでくれ……」


「……それでもダメですわ!!」


「ムギ様……」


「主様……」


真相を知り、なお、

天下一のわがまま姫様は

納得などしてくれません。


「スイ様!わたくしにチャンスをください!」


「なんの真似じゃ?」


「わたくしに、考えがございます!」


「ぎゃはは。寿命じゃ。……死なせてくれよ」


「これを見てから……ご判断をしてくださいませ!」


「……?」


「コハク様……竜人とは竜が進化したお姿なのですね

……ではあなた様に名前を授けましょう。

ただし、あなたにはもう素敵なお名前がございます。

その琥珀色の瞳になぞらえて

立派なご両親から付けられた

コハクというお名前が……

ですのであなた様に授ける名前は

【ドラゴニュート】でございます」


「何を……?」


「スイよ……我が主の奇跡を信じてください」


カッ!!――


コハクは光り輝き、

その大きな体はみるみるうちに

人間のサイズへと変わり、

そこには可愛らしい褐色の肌を持つ

女の子が立っていた。


「こ、これは……!」


「まさか!コハクが竜人化したじゃと!?」


「ええ。あなたは竜人へ進化致しましたわ

これで母の肉を喰らう必要はもうございません」


「おお……これが竜人化……」


「ヤマトの娘……?お前一体……何者じゃ……?」


「ふふふ♪

ただの動物が好きな異国の娘でございます」


すでにツムギ一行はみんな、

我が愛する主様に全てをお任せしております……


「さぁ、もう一度、次はスイ様。

あなた様の番でございます……


アマゾネス部族の皆様は竜のことを

こう呼んでおられました。

【龍神様】と。

きっとそれが答え――

神は寿命で召されることなどありませんから。


スイ様。あなた様はこれから

【ヒスイ】とお名乗りくださいませ」


翠から翡翠へ


緑色の宝石の名前。


それは強く優しく、

孤独に頂点を生きてきた

一人の竜に与えられた

奇跡を呼ぶ名前。



カッ――!!



見事に


竜人スイは


【龍神】へと進化したのでございます――


「こ、これは……」


「ヒスイ……あなた様はこれから

龍神様として生きていくのでございます」


「まさか……死期を感じなくなった……?

こ、これは……なんという奇跡か……」


コハクは竜人へと進化し、


そしてさらに


スイは龍神へと進化を成しました。


その進化は死期をも克服してしまったのでございます


「さぁ、もう何にも縛られる必要はございません

あなた達にこの名前と、自由を授けましょう――」







ツムギの授名は竜をも進化させ


この世界の生命体の頂点をも


塗り替えてしまう


奇跡を起こしてしまうのでございました……














評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。