怪盗の休日
きいろ?
「どうして君は盗むの?」
まっすぐ瞳を捉えられたままの問いかけに、答えることができなかった。
人は私を怪盗と呼ぶ。
少し前に、ロンドンの寄宿舎に入学した。同級生の金持ち坊ちゃんからお宝の情報を仕入れている。警戒心のない同級生たちは、私を家に招待し、お宝の狙いをつけやすくしてくれる。手がかりを残したことはない。つけ髭にモノクロ、仰々しい衣装を着て紳士のようにふるまえば、怪盗が学生だとは思われなかった。
誤算だったのは、同室の相手がコイツだったことだ。
コイツは勘が鋭く、夜、部屋を抜け出すのも難しい。一度、戻ってきたところを問いつめられたので、複数の彼女に会っていると答えると、それからはなにも言わなくなった。
今晩も、外出準備をする私を汚らわしそうに眺めているが、口は開かない。さて、と窓に手をかけたところで、彼は言った。
「どうして君は盗むの?」
それは先週、貴族街ですれ違った怪盗の姿の私にコイツが問うた言葉だった。
私が怪盗だとばれている? いや、そんなことはないはずだ。
「確かに女性のハートは盗んでいるけど。それを何故って聞かれると答えに困るなぁ」
貴族的な笑みを返すと、彼は黙って、見覚えのあるネックレスを取り出した。先週の獲物だ。おかしい。貧民街に置いてきたはずなのに。
「持ち主に頼まれて探し出したんだ。思い出の大事なネックレスだそうだよ」
「思い出で生きていけるなんて、いい身分だな。明日もわからない人達が大勢いるのに」
食べ物もない。薬代もない。街の影で暮らす人達は過去を思い返す余裕もない。
いきなり貴族に引き取られた俺には、本当に同じ国かと疑うほど別世界なのに。
「そうか。君は……」彼は珍しく微笑んだ。
「とにかく、今日の外出は止めたほうがいい。警部さんが罠を仕掛けて待っているからね。たまには彼女に会わなくてもいいだろう?」
060617
酒井美詠子著の漫画「少年はその時群青の風を見たか?」の設定が好きです。
ルパンにもホームズにも倫敦にも歴史にも詳しくないので、自分では書けない。
舞台を未来か現代かにして、なんとか書けないか、と当時こねくりまわしていたようです。
今なら「異世界で怪盗団を結成しました!」とかでしょうか?
盗むことに理由がないと自分が納得できないので、怪盗モノなかなか難しいです。
キャッツアイにはまだ納得できてたから、「自分のものを取り返す」ならいいのかもしれません。
「異世界に自分の家ごと転移しちゃって、持ち物すっかり奪われたから、最初は一人で取り返していたら、いつの間にか仲間が集まってて、気づいたら怪盗団になってた」みたいな。
真面目に書くと微妙そうなんで、コメディ風にすれば面白くなるかな?
「盗む」にどうしても忌避感があるんで、「盗むと事態が好転する」をセットにして。
オチとしては、国とか星とか異世界とか、ありえないレベルのものを盗んで終わりたいですね。
あ、ちょっと面白そう(笑)。




