メモ
ピンク?
私は彼より早く出勤し、早く帰宅する。
朝食の洗い物と洗濯は彼の仕事。掃除と朝昼夕食を作るのは私。
昼過ぎに出勤する彼が、きまぐれに夕食を作っていてくれることもある。
大助かりなんだけど、作ったことを教えてくれないのだ。
この前なんて、せっかく作ってくれてた餃子に気づかず、さらに酢豚を作ってしまった。
同じ中華で良かったんだけど、給料日前で、もったいないことこの上ない。
ラインやメールするとか、留守電に入れておくとか。
テーブルに、一言メモを置くだけでもいい。
どうしてそれができないんだろう。
その他にも、冷凍食品を買い足してくれてたり、食材が微妙に増えてたり。
おかげで、帰宅したらすぐ冷蔵庫を全室チェックする必要がある。
たったそれだけのことなんだけど、疲れて帰ってきて、あるかわからないなにかを探すのは辛い。
ああ、今日もまた冷蔵庫をチェックしなくっちゃ。
誰もいない家に帰って電気をつけると、ダイニングテーブルの上に見慣れない紙があった。
駅前のケーキ屋さんのチラシだ。
チラシを出しっぱなしだなんて、片付け魔の彼にしては珍しい。
とりあえず何か飲もうと冷蔵庫を開けると、大きなケーキの箱が入っていた。
今日って何の日だったっけ?
壁のカレンダーに目をやった。
母の日は終わったし、父の日はまだだし。
わからない。
そっと箱の中を覗いてみると、白いケーキの上にクッキーのプレートが乗っていた。
一周年 おめでとう
結婚記念日だ。
最近ばたばたしていたから、すっかり忘れてた。
せめて私は豪華な夕食を作ることにしよう。
深夜に帰る彼を待って一緒に食べよう。
帰宅した彼と食卓を囲み、ケーキもすっかり食べた後、私は聞いた。
「どうしてメモを書かないの?」
「そのほうが見つけたときに嬉しいだろ」
なるほど。
探す手間がかかるし、探しても見つからなかったらがっかりするんだけど、今日は言うまい。
「宝探しなら地図があったほうが楽しいわよ」
メモを書いてね、と言ったつもりだったんだけど。
翌日から、私は連日、暗号じみたメモと格闘することになった。
これならメモがなかった頃のほうが良かったかもしれない。
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050311修正101202修正2019
K.様のサイト「伍拾音式。」(50のお題)の「メモ」で書いたのが最初です。
ポケベル世代には簡単な暗号でした。




