第二章-8
本当に『一応』かよ。
まぁ、いいか。起きた後でサボれないこと知って後悔しろ。
入学式の翌日。
今日は始業式。
式が始まるまでそれぞれの教室で待機。
先生もいないので皆好き勝手に談笑している。
「愛美ちゃん。最近どうですか?」
食事会で仲良くなった紀郁ちゃんのお陰でクラス内で浮かなくて本当によかった。
ちなみにチェルシー(本人の希望で呼び捨て)は隣のクラス。
最近というのは研修のことだろう。
「仕事の手伝いをさせてくれないどころか、手ほどきすらない状態です」
「そ、そっかぁ。やっぱり課が違うと教えるのは難しいのかな」
「いえ、単純に性格の問題だと思います。紀郁ちゃんのほうはどうですか?」
「私のほうは戦闘方面のマナの基礎技術を教わっています」
彼女は第三世代の中でも特に医療魔法に秀でている。
所属しているアフロディーテは完全な後方支援部隊だが、ここで仕事をしていく中で戦うスキルを身に付けて損にはならない。
「紀郁ちゃんはいいですね」
「そうですか?」
「そうですよ。こっちの先輩は何も教えてくれませんから…」
どうせ先輩は何かと理由をつけて蚊帳の外に置こうとする。
よくよく考えれば単に教えるやる気がないだけなんじゃ。
「元気出してください。雨宮先輩もそのうち教えてくれますよ」
「そうだといいんですが…」
望みは薄いと思います。
それよりも今は警護対象の龍泉寺さんが一人ということ。
クラスの雰囲気についていけず、話すきっかけを失ってあわあわとなっていた。
これは話しかけたほうが…けど、仕事に関わったと見なされるかもしれない。
…よく、考えればあっちが放置してるのに、勝手な言い分を押し付けられて従う義務はないはず。そうと決まれば早速行きましょう。
「初めまして坂上愛美と言います一年間よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いいたします。わたくし、龍泉寺アリサと申します」
少し古風な言い回しですね。純和風のお嬢様と思えば違和感はありません。
「わ、わたし早乙女紀郁と言います。よ、よろしくお願いします」
紀郁ちゃんは人見知りのせいか肩に力が入ってますが、いい感じに話しやすい空気を作ってれる。この調子で仲良くなれば仕事に関与できる。
教室にいても暇だったし、少し覗いてみたが…あの馬鹿。人の忠告無視しやがって…まぁ、友人作るのは良いことだし見逃すか。
「おー、立派に君の悪いところを受け継いでれるね。さっそく新人研修の成果が出てるじゃない」
同じく暇だった楓は牛乳パック片手に観察中。
「研修した覚えもねえよ。だいたいそれ悪口だろ!それに何だよ悪いところって」
「人の話聞かない、忠告無視、勝手に行動する、自由気まま、覗き、ロリコン、牛乳おいしい」
「おいコラ勝手に性癖押し付けんな!後、最後ただの感想だろ!」
メール見た割には面倒そうに見えないな。
いや待て、メール読んでさすがにこの態度はおかしい。
「楓、昨日送ったメール読んだか?」
「メール?あぁ…そういえば、そんなもの届いてたような」
さては昨日、完全に寝ぼけてたな。
今更確認しても遅い。
「…。え?冗談でしょ、これ」
「冗談でそんなメールは送らねえよ」
「ちょうどいいや。紀郁ちゃんにやらせよう」
「おいおい、面倒を後輩に押し付けるなよ」
「そっちこそ、後輩を蚊帳の外に置きすぎなんじゃない?」
言われなくてもわかってるよ。
けど、やっぱり躊躇してしまうんだ。
「ちゃんと参加させてあげなよ」
「させるよ。安全になったらな」
「過保護だね。けど、そういうのよくないと思う。この先、君が守っていくわけじゃないんだからさ」
「…お前の言う通りだよ楓」
割り切れたらどれだけ楽だろう。
考えてもしかたない。それが俺だ。




