1-15 S岳掃討作戦-鬼神との戦い-
玄武は大亀の姿をしているが、その足は長く、獣のように四足で立って歩く事が可能だ。
そして走る事もできる。
「――!」
玄武がその四肢に力を込め、体躯を僅かに沈めた後、爆発するかのように両面宿儺に向かって飛び出した。
30mの巨体の全体重を乗せたぶちかましだ。それもスピードの乗った。
だが、両面宿儺はそれを全力の鉄剣の一振りだけで止めた。
両面宿儺のその一撃は城を軽く両断する威力があったが、『武』の名を与えられるほどの堅牢さを誇る玄武の甲羅を割るには至らなかった。
両者がぶつかり、大質量同士の衝突で山が激しく揺れる。
足を止められた玄武はすかさず尾の蛇を両面宿儺へと向ける。
また、玄武との衝突で両面宿儺が硬直した一瞬を狙って北条、高野、ルーインがそれぞれ攻勢を仕掛けてきた。
「行くでゴザル!」
「ぬぅん!」
「主よ! アイラァァァァァァァァァァブッ!」
閃光の如く輝く太刀筋が弧を描き、その軌跡から生み出された衝撃波は数十倍もの巨大な三日月の刃となって突き進む。
隆起した筋肉から生み出されるミサイルの如き鉄拳が空を抉り、天空から流星のように流れ墜ちていく。
巨大な破邪の光輪が高速回転し、黒い雨を切り裂きながら急カーブを描いて両面宿儺の横手から撃ちこまれる。
だが、両面宿儺はそれぞれのタイミングのズレを見切り、即座に反応。俊敏な動きで包囲網の間隙から跳躍して抜け出した。着地点にあった山小屋の宿泊施設が両面宿儺の足で砂の城のように踏み潰される。
「むう。こりゃバラバラに攻撃しておってはいかんの」
渋い顔をする高野の視線の先で、両面宿儺がその四本の腕を天へ向かって持ち上げた。
「何か遠距離攻撃が来るでゴザルな」
総一以外の四人は経験からそう察し、すぐさま行動に移る。
四本の腕がそのまま真下へと叩きつけられる。両面宿儺を中心とした衝撃波が地を這うように同心円状に全方位に広がっていった。
暴力の波が景色を歪ませる。まるで見えない津波のように地表にある全てのものを破壊しながら押し流していく。
高野はそれを鋼を上回る剛体で耐え凌ぎ、ルーインは空に飛びあがって回避。北条は刀一本でぶち破った。
アズサは無防備に立ったままの総一を引っ掴んでルーインと同じく空へと飛びあがろうとしたが、それより先に二人の前に巨体が立ち塞がる。玄武だった。
二人は玄武の咄嗟の判断によって、その背に守られた。
「鬼神は!?」
その間も両面宿儺は動いていた。人間を刈り取るために。
真っ先に狙われたのは空に浮かぶルーインだ。両面宿儺は己に向かって来る4体の中で最も組しやすいと判断した彼へと向かった。
「ハッ! いいぜ、来いよオラアアアアア!」
ルーインは大天使ウリエルの力で己を武装する。光る粒子がルーインの神父服の上を衣のように包み、その両手には竜巻のように激しく渦巻く光が現れる。そして――突撃。
一方、両面宿儺は軽快且つ俊敏な踏み込みと共に剣を一閃。
20mを越す直剣が稲妻のように走る。間違いなく剣匠の一撃だった。
だがルーインは鋭いそれを見切り、直前で身を沈めてかわす。
そして続けてやってくる衝撃波。それは単なる剣の余波に過ぎないが、叩きつけられるそれを片腕を盾代わりにガードする。光の粒子が削られ、少しずつ剥がれ落ちていく。
しかし両面宿儺の攻撃はそれで終わりではなかった。瞬間、過ぎ去った剣が同等の速度で再び引き戻される。恐るべき膂力だった。
二撃目。戻って来た剣が袈裟懸けに振り下ろされる。
「ツッ!」
衝撃波をガードしたばかりで突撃の勢いを削がれていたルーインは、完全に避け切れないと判断して左の拳を空に叩き込む。
「ゥ――ラァ!」
拳の竜巻が解き放たれる。
それは螺旋を描く光の奔流。戦闘機をすり潰し、撃墜する風の大砲が両面宿儺の剣へと直撃する。
その隙に更に両面宿儺へと前進するルーインは、己の渾身の技を力ずくで捻じ伏せて未だ迫ってくる剣の影を認め、その顔に険を露にする。
「チィ!」
ルーインの見立て以上に両面宿儺の剣はあまりにも重く、速く、そして鋭かった。
恐ろしい唸り声をあげてすぐ間近に打ち込まれてくる鬼神の剣術。
だがルーインとて超一流の退魔術士だ。左の拳で稼いだ僅かな時間で、即座に次の手を打つ。
大柄なルーインの背に浮かぶ大天使ウリエルが一際強く輝く。
まず砂鉄の膜が生み出された。それは両面宿儺の剣と接触した瞬間に取り付き、刃を部分的に潰した。
続けてぶ厚い大地の壁を生み出す。それは100tを超える、なだらかな半球体の形状をした巨大な盾だ。いや、盾というよりもむしろ体育館のドームに近い。
命がかかったこの状況で瞬時に性質の異なる二つの魔法を、それも内一つは強力な魔法を安定して使ってみせたルーインは偉大な退魔術士の一人として数えられるだろう。
ルーインはそれで左方より来る剣を受けるでなく、角度とタイミングを調整してハンマーのように斜め上から叩き付けた。
両面宿儺の剣は砂鉄により切れ味の封じられたなまくらとなっており、ぶ厚いルーインの盾を突破するのは極めて困難だと言える。剣は丸みを帯びた盾の表面のせいで滑り、そのまま軌道を逸らす。それがあるべき光景だ。
だが、2A級の両面宿儺は違う。
その剛力と剣技はルーインの盾を一撃でぶち破った。
とはいえ、両面宿儺の鬼面にもわずかに苦渋が見える。ルーインの盾の突破には鬼神とて少なくない力が必要だった。
巨大で厚みのある剣がルーインの左半身へと吸い込まれていく。もはや彼の身を守る術は何もない。ルーインはそれを知覚しながら、それでもなお前に進み続ける事だけに全ての力を振り絞った。
そしてその前進でようやく両面宿儺を己の殺傷圏内に捉える。
剣が届くよりわずかに早く、ルーインの残された右の拳が振りぬかれた。
「Amen!!」
両面宿儺の真正面からアッパーとして放たれた右拳の聖なる大砲は、見事鬼神の顎に直撃した。
わずかにその巨体がのけぞり、一歩後退するも両面宿儺はそこで踏みとどまった。
そしてなまくらと化した剣はルーインの胴体を打ち抜いた。
「グゥ!?」
光の粒子の衣と大天使ウリエルの加護が両面宿儺の剣を受け止めるも、その衝撃はルーインの左腕を折り、肋骨にヒビをいれてその内臓にまでダメージを与えた。
ルーインは隕石のように空中から山肌へと墜落する。
全身を襲う激痛に、喉から絶叫が飛び出しそうになるが、寸での所で食い止める。
歯を食いしばり、悲鳴を飲み込み、逆に獰猛な笑みを浮かべた。
明るい金髪が砂埃にまみれる中で折れた左腕の具合を確かめながら、ルーインは呼吸を落ち着けながら更なる戦意を燃やす。
「ゲフッ……アー……ハァー……危っぶねー。ラファエル様やガブリエル様だったら死んでたな。ああ、主よ感謝するぜぇ……」
大天使降臨術では呼び出した大天使の力と加護を得る。
ここで呼び出せる大天使とは即ち、ミカエル、ラファエル、ガブリエル、ウリエルの四大天使だ。それぞれ力に特色があるが、この内ウリエルは大地及び天体を司り、重戦士タイプの頑強さと重量の加護を与えてくれる。ルーインは厳しい修行の果てにウリエルの降臨術を習得していた。
その恩恵による防御力は非常に高く、ルーインのこぼした言葉の通り、仮にルーインがラファエルやガブリエルを習得し降臨させていたのであれば今の一撃で胴体は真っ二つにされていたであろう。
出血し腫れあがってきた左腕を右腕で手早く整え、無理矢理骨の位置を正す。
脳天を貫く激痛が走るが、狂神父ルーインは一瞬顔を顰めただけで、「骨が外へ飛び出していなかったのは幸いだった」と言わんばかりに一つ息を吐いた。
それから治癒術で痛みを和らげ、患部を固定し応急処置をする。
素早く処置を終わらせ当たり前のように早速戦線復帰すべく戦場を見れば、両面宿儺はルーイン以外の二人と一体からの苛烈な攻勢を浴びているところだった。
ルーインが吹き飛ばされたあそこから両面宿儺は更にルーインへ反撃する事は可能だった。だが、それはあくまでルーインだけを相手にしていた場合だ。現状、北条や高野、玄武がいるとあっては両面宿儺はルーインへの攻撃をあの時点で一旦諦めざるを得なかった。
その判断が正しいと言わんばかりに、両面宿儺はルーインの反撃で体勢を崩した途端に北条と高野に手傷を負わされていた。北条からは甲冑の一部を割られる一太刀を、高野からは四つ腕の内の一本の腕に痺れが走るほどの打撃をもらってしまっていた。
だがこれでも両面宿儺は二人の必殺の一撃を凌いだ方なのだ。下手すれば腕が千切れ、甲冑ごと胸を斬られていたかもしれなかった。
両面宿儺は血を払うかのように素早く剣を一振りし、己の鬼気とも言うべきオーラを剣に乱暴に纏わせ、砂鉄を払う。
その間もルーインと反対側を向いている両面宿儺のもう一方の顔は次に迫り来る脅威を睨みつけていた。
その視線の先には大亀の玄武がいる。彼の水神は陰の気の雨の中、プールの十倍はあろうかという量の水球を頭上に作り上げていた。
更に玄武の上に一生懸命飛び乗った総一が水球に手を突っ込み、術で金気を混ぜ込む。水球に無数の金属粒が浮かんだ。詳しい原理などは知らないまま父に教わった、アブレシブジェットカッターのタンクのできあがりだ。ダイヤモンドをカットしたり、消防活動で建物の壁を切断する事で有名なものだ。
「できた。いいよ、玄武」
総一はおっかなびっくり「えいっ」と声を出して玄武の頭の上から飛び降りる。十階建てのアパートごとき高さでも、方術を使って瞬間的に体を頑強にした総一は重力に引かれるまま、大きな音を立てて地面に着地した。まあ空中でバランスを取り損ねてちょっと前のめりになってしまい、カエルのように両手両足をついての着地になってしまったが。方術のおかげで落下の衝撃は耐え切れていたので、すぐさま総一は戦闘に巻き込まれないよう玄武から離れていった。
その間にも、玄武と総一が作り上げた凶悪な水球から超高速の水弾がレーザーのように次々と射出される。一発一発が人間の胴体ほどの大きさで、それが弾幕となって両面宿儺を牽制しつつ、その行動可能な箇所を潰している。
逃がさないとばかりに両面宿儺の予想され得る回避方向に弾幕を叩き込んだり、或いは北条や高野の隙を狙った両面宿儺が剣や矢を打ち込もうとするその攻撃を妨害したりとサポート役に回っていた。
水弾は大岩を易々と貫通し、家屋もぶち抜く威力を誇るのだが、両面宿儺は俊敏に駆け回り、時にはその剣で水弾をいくつも両断している。敵ながら恐るべき剣の腕だった。また仮に被弾したとしてもそれは両面宿儺の表面に流れる不可視の気流によって大部分が削がれ、衝撃によるダメージを与えはすれど貫くまでには至らない。
「まったく、前にも後ろにも顔があると死角は頭上しかないわけじゃが……少々面倒じゃわい」
両面宿儺が北条と水弾に気を取られ、注意が逸れた一瞬の隙を突いて高野は50mを超える両面宿儺の更に上空に跳躍する。そして数珠を握り締めながら両手を組み合わせて力を篭め、その巨躯の筋肉がはち切れんばかりに膨れ上がった。
組み合わせた両手の拳を天へと持ち上げ、全力で振り下ろす。
まるで爆発したような音と衝撃が波紋のように広がり、彗星の如き聖気の塊が真下へと急速度で叩き落とされる。
「ガァッ!」
それに機敏に反応した両面宿儺は剣を持たない二本の腕をすかさず頭上で交差させる。
ズシリと重い手応えと共に、両面宿儺の足が1mほど山に埋まる。
防いだ腕は、まるで灼かれたかのように白い煙を出し、わずかだが確かな痛手を与えていた。
そしてその間も両面宿儺は腹の突き出た武者姿の人間、北条から目を離さず、もう二本の剣で常に牽制し続けていた。彼の鬼神が決して必殺を打たせまいと細心の注意を払っているのはただ一人、北条のみだった。
その成果あって、北条は一人で両面宿儺の猛攻の半分ほどを相手どるはめになっており、中々己の必殺の間合いに捉える事ができない。
この中で彼だけが完全に封殺されていた。
だが一方で北条が鬼神の注意を半分受け持ってくれているおかげで他の高野、ルーイン、玄武が果敢に攻め続けられ、そこまでしてようやく戦況はほぼ一進一退を繰り返していた。
そして後方で口を真一文字に引き結んでただただ見守る姿が一つ。
「……なんて、戦いなの」
目の前で繰り広げられる激しい戦闘。
それは巨大な鬼神が黒い雨の降りしきる山頂周辺を所狭しと暴れ、その周りを三人が超スピードで動き回り、また巨大な大亀が食らい付こうとする光景だった。
それにより、主に両面宿儺と玄武が暴れ回るせいで一般人なら立っていられないほどの揺れが間断なく山頂を襲い続けている。更に全員が全員、繰り出す攻防の一手一手が空気を震わせ、大音を響かせ、山を揺るがす威力の暴力がひっきりなしに飛び交っていた。
そこはまさに天変地異の真っ只中だった。
今また、アズサの目の前で水球を切らした玄武が回りこみながら、その巨体で横から突撃し、甲冑の脇に首を伸ばして噛み付いた所だった。
それにより両面宿儺の甲冑に小さな亀裂が入る。両面宿儺はその全体重をかけた勢いに押されて数歩後退したが、踏みとどまった後にすかさず玄武の首を切り落とそうと剣を振り下ろす。
だがその前に玄武は首を引っ込めて俊敏に後退していた。
その着地の振動で片膝をつきながら戦況を見守っているアズサの体が再び激しく揺れた。
「玄武、頑張って!」
「ほれウェルゲン! 気合いれんか!」
「ジジイもな!」
「むぅ。さっきから斬る隙がなくてつまらないでゴザルなぁ」
戦っている。
皆が、戦っているのだ。
武士が、神父が、老僧が。そして何よりも彼女より遥かに小さい陰陽師の男の子ですら。
彼女だけが何もしていない。何も動けない。
何もできていない。
「わ、私も……!」
乗り出すように勢いをつけて体を起こし、震える息を押し殺して聳え立つ両面宿儺を睨みつけた。
アズサはエリートだ。
そのこれまでの歩みは努力の上に努力を積み重ね、研鑽を欠かさず、ひたすら上を目指してきた。
自分を高める事になら時間も惜しまずつぎ込み続け、その結果が、齢18でのルーンナイト入りという快挙。
組織の中ではまだまだ下っ端で経験不足である事を痛感する事が多いが、それでもなお前を見据えて現状に満足する事なく自らを磨き上げ続けてきた。
弱音を吐かず、来る日も来る日も苦しい修練を続けてきた。
その自分の才気を信じ、周りに示し続けて。
それがアズサだ。
そんな彼女が今、己の魂を奮い立たせ、誇りを胸に目の前の戦場へと駆けて行く。
その地を駆ける姿は残像を残さんばかりのスピードで、一流の戦士に相応しい姿だった。
そんな彼女を誰も注意を払っていない。
誰もアズサを見ていない。
それだけの価値がないと言わんばかりに認識すらされていない。
だがそれを幸いとばかりに、アズサはバスタードソードを握りなおし、己が渾身の力を篭め、駆けながら機を窺う。
ここの戦場はアズサにとって一瞬一瞬が死に繋がりかねない、途方も無い力が乱れ咲く空間だった。
鼓膜を破りかねない轟音が絶え間なく響き、光と破壊の嵐渦巻く無慈悲な戦いが繰り広げられている。
流れ弾の一発が当たればそれだけで即死しかねない。そんな恐怖を前にしてもアズサは目の前の攻防の隙を突いて力強く遥か巨大な鬼神へと肉迫する。
「――ッ!」
自慢の一閃。
受ければ例えフェリーでも叩き折る必殺の剣だ。
この一撃で屠ってきた魔物の中にはB級も含まれる。それはアズサをルーンナイトたらしめる剣豪の技。
だがそれも今、この場においてはあまりにもちっぽけな力だった。
「そ、んな……」
決死の覚悟で接近し、振りぬいた剣は重い音を立てただけで、両面宿儺の脛に呆気なく弾き返された。
手と腕に全力を篭めた渾身の一撃の反動が襲い掛かり、視界は忘我に白く染まる。
そこに両面宿儺の魔手が伸びた。
「あぶない!」
北条らと交戦するさ中、両面宿儺にとっては片手間程度の扱いで目障りな邪魔者を追い払おうとした瞬間だった。
その手から圧縮された空気の塊がアズサへ放たれようとした時、その腕に横から飛び出してきた巨大な蛇が食らい付いた。
「グッ!」
更に玄武は果敢に飛び込んできた。超至近距離で虚空から生み出した水の矢を次々と撃ち込み、己の突進で両面宿儺の巨体を跳ね飛ばそうとする。
一方で北条から数多の乱れ打たれる太刀を一つ一つ剣で捌いていた両面宿儺はそちらに意識を大きく割かれ、この玄武の突進を満足に止める事ができなかった。
重く、強い衝撃が両面宿儺の下半身を襲い、四本の足がたまらず大地から浮き上がる。
体勢を崩したその瞬間を狙ったルーインの聖光溢れる砲門が虚空に開かれ、六条の極大の閃光が両面宿儺へと突き刺さる。
更にやや距離を取った高野がその怪力で放り投げてくる大岩が音を置き去りにしてミサイルのように次々と飛来する。
その隙に小さな影がアズサへと走り寄ってきた。
「大丈夫? お姉さん」
玄武に守られた事を知り、アズサは鈍い動作ですぐ近くで己の顔を心配そうに覗きこんでくる幼い男の子に顔を向ける。
今、この中で最も助けられたくなかった子へ。
そのアズサの顔はいたく傷つき、今にも泣きそうな表情だった。
そしてそんな顔を向けられた総一はわけが分からずただ戸惑った。
「………………ありがとう、ね」
顔を俯かせながら、暗く絞り出すような声でアズサは言った。
その手の置かれた地面には強い、強い爪痕ができていた。




