□チーズ□
チーズ@閃く……かもさんより頂いたお題。
あーるじゅうごー。
ある日の夕方のこと。
「今日の夕食はチーズフォンデュなんだけど……」
キッチンから溶けたチーズの入った小さな鍋を持って来たシーナお姉ちゃんが、眉を顰めて言葉を途中で止める。
その視線の先には、クロー様と右手に包帯を巻いたノエルお姉ちゃんがいた。
「あの、クロー様。お手を煩わせるのは大変心苦しいのですが、今日少し右手を怪我してしまったので、食べさせて頂けると嬉しいのですが……」
「勿論良いよ、ノエル。ノエルは大事な家族なんだから」
「──っ、ぅぁ、ありがとうございます……っ! あ、あの、串だと少し怖いので、お箸でお願い出来ますか?」
「うん、分かった。──じゃあ、まずは何を食べる?」
「で、では、そのブロッコリーを」
「りょうーい」
ノエルお姉ちゃんにそう頼まれたクロー様は、お箸でブロッコリーを摘むと、鍋の中にあるチーズと絡め、トロトロのチーズが垂れないように、鍋ごとノエルお姉ちゃんの口元に運ぶ。
それを見たノエルお姉ちゃんは、一旦ゴクリと唾を飲み込んでから、「あ、あーん……」と口を開いた。
「ハイ、あーん♪」
クロー様はそう言いながら、ノエルお姉ちゃんの口の中にプロッコリーを入れる。
そして、ノエルお姉ちゃんがそれを咀嚼し、嚥下したのを見てから聞いた。
「どう? お味の方は?」
「お、美味しいです……」
「それは良かった。じゃあ、次は?」
「ウ、ウィンナーで」
「はいはーい」
クロー様は、先程と同様にウィンナーとチーズを絡めると、それを再びノエルお姉ちゃんに差し出す。
お姉ちゃんは、ウィンナーが長かったのか、少し苦しそうにしていたが、何とか食べ切ると、次の注文をした。
「つ、次は里芋をお願い出来ますか?」
「さ、里芋? ……いや、本当に用意されてあるし」
「あ、あの……よろしいですか?」
「あ、うん。まぁ、別にいいんだけど……」
クロー様はそう答えると、先程までと同様に里芋にチーズを絡めて、ノエルお姉ちゃんに食べさせようとした。
が、しかし──、
「──あ!」
ツルリ、と里芋が箸から滑り出し、ポチャン、とチーズの入った鍋の中に落下する。
そして、その際に跳ねたチーズが、ノエルお姉ちゃんの顔や体に掛かってしまった。
「あ! ゴメン、ノエル! すぐに拭くから!」
「あ、はい」
クロー様は、卓上にあった白い布巾を手に取ると、少々呆気に取られているノエルお姉ちゃんの顔に触れ、丁寧にチーズを拭き取って行く。
が、顔のチーズを拭き取り、体に付いたチーズも拭こうとした時、クロー様は何かに気付いたかの様に一瞬体を硬直させ、気不味そうに視線を逸らした。
そんなクロー様の様子を見たノエルお姉ちゃんが、首を傾げてクロー様に質問する。
「? どうかしましたか、クロー様?」
「いや……流石にソコを拭くのはどうかと思って」
「ソコ?」
クロー様の言葉を聞いたノエルお姉ちゃんは、視線を下に向ける。
そこには、高価な漆黒のドレスこそ汚れていないものの、大きく開いた胸元にチーズが付着していた。
それを見たノエルお姉ちゃんは、クロー様が何故視線を逸らしているのを理解したのか、顔を赤らめ……しかし、すぐに何かを思い付いたのか、ニッコリと笑みを浮かべてクロー様に言った。
「あの、クロー様?」
「な、何かな、ノエル?」
「──私、クロー様になる触られても平気ですよ?」
「え?」
ノエルお姉ちゃんの言葉を聞いたクロー様は、何を言われたのか理解出来なかったのか、ポカンとした表情をする。
ノエルお姉ちゃんは、そんなクロー様の手を掴むと、満面の笑みで言った。
「──ですので、存分に拭いて頂いて構いません」
「──って、えぇ!?」
ようやくなノエルお姉ちゃんの言葉の意味を理解したのか、クロー様が珍しく真っ赤になって慌て出す。
が、ノエルお姉ちゃんは、ゆっくりとクロー様の手を自らの胸元に導いて行き──、
「──────って、ちょっとぉぉ!?」
──その指先が、ノエルお姉ちゃんの白い肌に届く直前に、シーナお姉ちゃんが持っていたお鍋を放り出して、それを止めに行った。
のは、いいんだけど……。
「ちょっと、ノエ姉! 何してんのよ!?」
「フフン、羨ましいでしょう?」
「確かに羨ま……じゃなくって!」
「クロー様、それでは続きを──」
「だから! 抜け駆けは禁止──」
「──あのさ、二人共。ちょっといい?」
「「──はい? どうかしました?」」
「いや、今度はリオンがチーズを被ってるんだけど」
そう。
クロー様が言った通り、私は先程シーナお姉ちゃんの投げた鍋の中にあったチーズを、頭から被っていて。
「ニャ、ニャー……」
「あ、ご、ごめん、リオン! す、すぐにタオルを取ってくるから!」
「──さぁ、クロー様! 今の内に──」
「いや、僕はリオンをお風呂場に連れて行くから」
「クロー様ー、一緒に入ってー!」
「「えっ!!?」」
などと、私達が“かおす”な状況を創り出している間、アパとキューブお兄ちゃんが、ポツリと呟いていた。
「……コレって何なんだろう、アパ?」
「さぁ? サービス回って聞いてますけど」
○オマケ○
「あれ? シーナ、何で僕のチーズフォンデュの具材はいつも通り貝殻と卵の殻なの? 後、何で僕のだけ、ブルーチーズでもないのに黴の生えたチーズを溶かすの? しかも、何で更に腐った牛乳を追加するの? ねぇ、シーナ? シーナ! ──シーナぁっ!?」
お題と挿絵をどんどん募集中です。




