関口昭彦からの手紙
お前が俺に記事を持ってきて「この特集を書きたい!」と言ってきた時は驚いたぜ?
もうこの雑誌も休刊が近いと編集部の会議で決まっちまってたから他のやつはもうやる気も無かったのに。
でもまあ一応、編集長だからな、お前の持ってきた新聞の画像を読んでまた驚いたよ。
「太田明子」
この名前を忘れるわけねぇよ。
誠の前では適当に書いたと言ったが、あれは嘘だ。俺はこの都市伝説をできる限り追った。なんでそんなに一生懸命だったか…それは今の自分にも分からねえ。ただ、不思議なもんであの記事が雑誌に載って売り出されるまで俺は狂ったように調べ挙げた。
幽霊記者が出たと言えばその学校にアポなしで話を聞きに行ったり。それなりに歴史のある都内の学校に夜な夜な忍び込んでそこに学級新聞があれば朝まで幽霊記者を待ってたり。
ああ、わかってる。正気じゃなかった。
でもそうせずにはいられなかった。
でも記事が出たあとは嘘のようにその熱はなくなっていった。そして冷静になった俺は自分の部屋の中に置かれた膨大な資料を見て怖くなったよ。だからその日のうちに捨てた。だが、あの記事が評判になって俺は社内での評価も上がって今は編集長にまでなることができたんだがな。
お前はあの時の俺と同じ目をしていたと思う。経済誌に行きたかったといつも言っていたお前が自分からオカルトに興味を持つなんておかしいと思ったんだ。
なのにお前はもう現地取材まで終えて、資料まで取り寄せてやがった。
俺は断れなかった。
そして俺に太田誠と話がしたいからなんとか取り次いでもらえないかと言ってきやがったな。
もちろん俺とあいつが友達だなんて知るはずもない。ただ、編集長っていう肩書でアポを取れないかってことだったんだよな。
ただ、太田を巻き込んじまったのは申し訳ねぇと思ってる。
いや、もう巻き込まれてたのかもしれない。
誠があの資料を、あの新聞を見ちまった時にあいつももうこっち側に来てたのかもしれない。
だから「俺は記事にしない」と言った。
そう言ってしまった。
俺にはもう時間がない。
だから残された時間を…
俺の思いをお前に託したいと思う。
矢島…お前は太田から資料を見せてもらえ。あのなかにあるはずなんだ…俺があの時、一つだけ捨てられなくて押し入れに入れていたはずのあのファイルが…確かに入れたはずなのにどんなに探してもなかったあのファイルがきっと太田が言ってた資料のなかにあるはずなんだ。だからあいつに連絡を取って見せてもらえ。そして記事を書け。太田の携帯電話の番号も教えておく。
お前たちならまだ間に合うかもしれない。
ああ、もうそこまで来てる…。
太田誠 090-▲▲▲▲-●●●●




