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歌舞伎町の女

 彼女は本を読まなかった。僕が本を読んでいると「それ楽しいの?」と聞いた。

 彼女は高校を卒業すると進学も就職もせずワーホリで海外に出た。二十六歳の時、日本に帰ると歌舞伎町で働き始めた。そして彼女が三十歳を超えた頃、大学生だった僕と同棲を始めた。出会いは夜の街。バイトを終え、歌舞伎町のコンビニで雨宿りをしている僕に彼女から声をかけてきた。

「家に泊めてよ」

 ボタンの飛んだブラウスによれよれの白のスカートをはいて、ピンヒールの彼女は立っていた。雨の歌舞伎町で、ふらふらの彼女はずぶ濡れだった。頬に青いあざ。切れた唇からは赤い血がうっすらと流れていた。

 僕はタクシーに乗って新大久保のボロアパートに彼女を連れて帰った。アパートに帰ると二人でシャワーを浴びた。初夏だというのに、その日の雨は少し冷たかった。青い唇の彼女はシャワーを浴びながら少し震えていた。シャワーから上がるとベッドで彼女は僕をやさしく愛撫した。それが当然のように彼女は僕を受け入れた。彼女は声もださず、ただ天井を見て涙を流していた。

 次の日の朝、目が覚めると彼女は既に起きていた。アパートの小さな窓のそばで「マルボロ」を吸っていた。くしゃくしゃになった「マルボロ」のソフトボックスを彼女は大事そうに持っていた。僕と目が合うとにらむように僕を見た。

「しばらく泊めて」

 僕は返事をしなかった。正直、どうしていいかわからなかった。

「家はないの?」

「帰るところはない」

 僕は何も言わずTシャツとジーンズをはくと部屋の外に出た。彼女はセクシーで魅力的だった。しばらく考えたが答えは出なかった。

 部屋に帰るとブラジャーとパンティーだけの彼女が言った。

「毎日、してあげる」

 僕は小さく頷いた。昨日から雨は降り止まない。

 小さな部屋には扇風機の音だけが響いていた。

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