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近道。




 ・・・あー。 腹減った。


 塾帰り、空腹余ってパンでも買おうと、チャリに跨りコンビ二に寄り道。 


 適当なパンを選んで、お茶も買おうとぺットボトルの冷蔵庫の前に行くと、見覚えのある人が飲み物を選んでいた。


 「・・・お久しぶりです。 優衣のお姉さんですよね??」


 「あ。 優衣の元カレの・・・晃くんだよね?? お家、この辺なの??」


 優衣と付き合っている時、優衣のお姉さんは律と付き合っていて、ずっと律の家に行っていた為、あまり顔を合わす事もなかったから、お互いまともに会話をするのは今日が初めてだったりする。


 「塾がこの近くなんですよ。 家はもうちょい行ったとこです。 優衣のお姉さんは、何でこんなとこにいるんですか??」


 ここのコンビ二は、優衣のマンションから少し離れている。 何で優衣のお姉さんは、わざわざ遠くのコンビ二に来ているのだろう。


 「『優衣のお姉さん』て。 間違いじゃないんだけど、ワタシにも一応名前があるので。 あ、優奈って言います。 どうも。 ワタシ、この近くでバイトしてるんだ」


 優奈さんの名前は知っていたけれど、馴れ馴れしく呼んでいいものか迷って敢ての『優衣のお姉さん』呼びだったのが、優奈さんは気に入らないらしい。


 そんな優奈さんが『今日、お給料日だったから奢ってあげるよ』とオレの手からパンを抜き取った。


 「自分で買います。 お茶とかも一緒に買いたいんで」


 優奈さんに持たれたパンを奪い返そうとするも、


 「いいよいいよ。 ワタシの飲み物と一緒に払っちゃうから。 どれが飲みたいの??」


 優奈さんは、パンを返す事なくオレに『お茶を選べ』と促した。

 

 「イヤ、でも」


 「いいって、いいって」


 「・・・ホントにいいんですか??」


 「だから、いいって言ってるじゃん。 たかがパンとお茶じゃん」


 何度か『オレが』『ワタシが』を繰り返した後、優奈さんの優しさに甘える事に。


 「スイマセン。 ありがとうございます」


 「どういたしまして。 じゃあ、ちょっとレジ行ってくるね」


 優奈さんがパンとお茶などの精算をしている間、テキトーな雑誌を立ち読みしながら待つ事に。


 パラパラ無意味に捲っていると、大概最後の方のページは星占いになっていて。


 占いには興味がないので、持っていた雑誌を閉じ別の雑誌に手を伸ばそうとした時、


 「晃くんって何座??」


 会計を済ませた優奈さんが、オレの脇から雑誌を覗き込んだ。

 

 「・・・てんびん座ですが??」


 「あ。 一緒だ。 今月のてんびん座、恋愛運がいいらしい。 身近な所にラブチャンスって書いてあるよ」


 優奈さんが、てんびん座の記事を指差した。


 真剣に記事を熟読する優奈さんは、きっと占い好きなのだろう。 ・・・なんかちょっと可愛い。


 「晃くんさ、優衣と別れてから律くん家に遊びに行ってないでしょ?? 遠慮してるの??」


 雑誌をガン見していた優衣さんが、オレの方に視線を変えた。


 「・・・遠慮ってゆーか・・・気まずいっしょ」


 「優衣に未練あるんだ??」


 優奈さんは、見た目おとなしそうに見えて、結構ハッキリ物事を言う人だった。

 

 「言っておきますが、別れたい発信はオレからですからね。 ・・・まぁ、優衣の事、ホントに好きだったから、未練が全くないって言ったらそうでもないんですけどね。 でも、付き合ってるうちに、優衣の気持ちに気付いたあたりから、ちょっとずつ冷めてったから。

 ・・・優奈さんはどうなんですか?? まだ律の事好きなんですか??」


 「・・・ワタシもさ、律くんと付き合ってる時に、律くんの気持ちに勘付いてたから、別れる前に何となく覚悟みたいなのは出来てたんだ。 ・・・でも、まだちょっと失恋引きずってる節は否めないよね」


 オレの質問に、切ない顔をしながら笑って答える優奈さん。


 何でか胸がぎゅっとなる。 同じ様な体験をしたからだろうか。


 「・・・大丈夫ですか?? 優奈さん、結構まじで律の事好きだったでしょ。 ・・・オレ、ちょっと気になってた事が1コあるんですよね。 病院に優衣のお見舞いに来た時、優奈さん、優衣に泣きながら律との事謝ってたじゃないですか。 あれって・・・『うん。 わざとだよ』


 言い終わる前に優奈さんが返事を被せた。

 

 「晃くんとワタシ、似てるかも。 晃くんも他人の心の裏側読むの得意でしょ。 ・・・そうだよ。 多分律くんは、あの事故で優衣に罪悪感を持つだろう。 優衣も律くんの同情を引こうとするだろう。 だから、2人をくっつけない様に先手を打とうを思った。 優衣に律くんを取られたくなかったの。 ・・・最低な姉だよね。 妹が大変な時にさ」


 優奈さんが、苦渋に眉間を寄せながら瞳を伏せた。


 「・・・最低なんかじゃないですよ」


 だって、懸命に人を好きになっただけ。


 目の前の優奈さんがあまりにも弱々しく見えて、思わず優奈さんの肩を掴んで抱き寄せた。


 優奈さんが、オレの肩に顔を埋める。

 

 「・・・・付き合っちゃおうか、ウチら。 『身近な所のラブチャンス』って事で」


 「・・・え」


 優奈さんの思いも寄らぬ提案に固まってしまった。


 「嘘嘘。 冗談だよ」


 優奈さんが笑いながら、くっついていた身体をオレから剥がした。 のが、何かもの凄く淋しくて。


 「・・・今の、本気にしちゃダメですか??」


 正直、優奈さんを好きなのかどうなのか分からない。 でも、自分より年上のはずの優奈さんは、どこか危なっかしくて、ほっとけない。 


 目が、離せない。


 「・・・え」


 今度は優奈さんが固まる。


 「・・・オレじゃあ、律の代わりは務まりませんか??」


 優奈さんの目を直視しながら訴えかけると、


 「・・・『優奈さん』って呼ぶの、やめてくれたら付き合ってもいいよ。 律くん思い出すから。 晃くんには呼び捨ててほしい。 あと、敬語もやだ。 晃くんは晃くんでいて。 律くんの代役なんかしなくていい」


 優奈さんが真顔でオレを見つめ返してきた。


 「・・・じゃあ、優奈もオレの事呼び捨ててよ。 優衣思い出すから」


 「了解です」


 笑顔で答える優奈が可愛くて。


 再び抱き寄せる。

 

 「・・・うちらさぁ、優衣と律くんにかませ犬やらされたわけじゃん。 言うなれば、被害者じゃん。 なのに、2人に気遣って友達の家に遊びに行けなくなるって、何か癪に障らない??」


 『晃はそうは思わない??』と、優奈がオレの胸の中で顔を上げ、オレを見上げた。


 「・・・そう言われると、腹立つかも。 優衣に気を遣わずに普通に律と遊びたいけど、出来ないし」


 「・・・ねぇ。 お菓子買い足さない?? 大量にお菓子持って、今から律くんの部屋に突撃しようよ。 で、腹癒せに散々食い散らかして帰ってやろうよ!!」


 不敵に笑う優奈。


 「それ、いいね。 すごくいいよ。 さっき優奈にパンとお茶買ってもらったから、お菓子はオレが買うわ」


 優奈の提案に乗っかり、お菓子コーナーに直行。 お菓子を買い漁る。

 

 わざとボロボロとすぐ崩れそうなお菓子をたくさん買い、それをチャリのカゴに押し込み、いざ律の家へ。


 「オレ、まだ高校生だから、マイカーがチャリなんだけど、良かったら後ろ乗らない??」


 チャリの荷台に優奈をお誘いすると、


 「喜んで。 なんか、高校生に戻った気分」


 優奈は嬉しそうに荷台に座り、オレの腰に腕をまわした。


 「しっかり捕まってて!! いざ、出発!!」


 「はーい!!」


 勢い良く地面を蹴り飛ばし、優奈と一緒に腹癒せと言う名の仲直りをしに行こう。






 今日からオレらは、恋をする。

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