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第一章 17

17

――――そして、時間は今に追い付く。

私の視界には、自ら巻き上げた砂塵が覆っている。とにもかくにも、谷に落ちないように離れる。勿論、マリアにも意識は向けているが、恐らくもう打ち止めだ。

最後の攻撃は、マリアを確実に昏倒させるためのものだ。全身全霊の私の攻撃なら……というよりは全力の『代理人』の攻撃をもろに食らえば、確実に四肢の一つは弾け飛ぶ。だから、妹相手にはどれだけ隙があろうと全力での攻撃は行わなかった。しかし、生半可の攻撃ではダメージが全く通らない。神葬の力をコントロール出来れば可能なのかも知れないが、私にはまだ無理だ。だから、大気を神葬とした。

私の神葬は、使用した武器を神葬へと昇華させるものだが、それでも物によっては威力に差が出た。細かい基準でもあるのかは記憶を精査しないことには分からないが、一つ分かりやすいのが、大きさだ。

私がどの大きさの物に神葬を使うかが威力の基準の一つになっているようだった。そうならば、威力のコントロールは幾分容易だ。限りなく小さいものを、遮二無二全力で使えばいい。

最初は砂を試そうと思ったが、マリアの攻撃を防ぐ際に威力を見て諦めた。そして、最後の衝突まで何を使うか決めかねていた。

決めたのは……というか、閃いたのはマリアの剣を受け流す直前だ。あの突貫の瞬間。

妹から本気の殺気が漏れた。ほんの一瞬だったが、背筋に冷たいものが確かに奔った。妹自身から漏れたものではなさそうだ。そもそも、彼女に殺気なんてものは存在しないだろう。恐らく、殺気を感じたのは、彼女の持つ剣だ。流石に剣から発せられる殺気はどうにもならない。

マリアに殺す気はない。だから、どれだけ力を込めようとも殺さないだろう。しかし、剣は別だ。その気がなくても触れれば切れるし、血が流れる。それだけ死ぬには事足りる。

この時、マリアが剣を使ったのは、思い返せば、 僥倖以外の何物でもない。

『見えた』のはその時。剣の殺気に当てられ、身が竦んだ、その瞬間。

マリアが取り得る選択肢が怒濤のごとく、脳内に押し寄せた。一つ一つの詳細を知ることは出来ないが、それは二十・三十なんて数じゃない。樹形図が描かれるかのように、全てのパターンが網羅されていく。

無限に枝分かれした樹形図が延々と描かれ続ける。しかし、不意にそれは停止する。

と同時に、ある一つを除いた全ての道筋は、一切合財消え失せた。少しの痕跡も残さずに、跡形もなく。

消えた道筋は、決して思い出せない。だが、目の前の道筋は、鮮明に且つ明瞭にタイミングまでもがはっきりと分かった。

マリアの取る行動と、私が取るべき行動とが、手に取るように見える。後は、その通りに体を流すだけだ。

―――― そして、予測通りの展開になった。

マリアが真っ直ぐに振り下ろした剣を、その剣の右側に平行になるように右足を踏み込んだ。体を微妙に右にずらすと、右掌をその剣の側面に当てて、受け流す。

その時点で、マリアは驚愕を露にしていた。当然だ。見えているはずのない攻撃を華麗に躱したのだから。

そして、その勢いそのままに、上半身を左に捻転。右拳は中腰に溜めた。

マリアは後方に飛び退けようとするが、こちらの方が僅かに早い。

見た目は寸止めのようにマリアに触れることはなかった。だが、読み通り。むしろ、後方に跳んだことで、私は拳を止める必要がなくなり、全エネルギーを解放できた。

ただでさえ音を置き去りにする速度。そんなもので、大気を殴り付け、『使用』した。

結果は……分かりきっている。

最終的には――――私が立っていた。私が勝った。

そしてマリアは負けた。

それだけのはすだったのに。

これで、一つの『戦争』が終わるはずだった。

なのに…… マリアの傍には『そいつ』がいた。


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