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第一章 11

11

「ハアァッッっっっ」

気合いと共に振り下ろされた長剣を、辛くも受け止める。全身を衝撃が突き抜け、体から体力を奪っていく。 先ほどは、威勢よく啖呵を切ったのだが、そこらかも防戦一方だ。膂力は私に分があるが、瞬発力やその他の運動能力に格段の差がある。

周囲に建物らしい建物は既に残っていない。私が吹き飛ばされて破壊したか、私の外した斬撃が破壊したかで、遮蔽物になるかすらも怪しいものばかりだ。私は更地になりかけているその場所で、マリアの剣を一切見ない。ただ妹の眼差しから決して逃げずに、一身に受ける、あれから言葉を交わしていない。問答無用、という事だろう。これまで散々打ち合って

私は受けた剣をどうにか跳ね上げると、勢いそのまま脚を振り回す。大振りの蹴りをマリアが受ける訳もなく、難なく後方に飛びのく。

すぐさま私は体勢を整えると、剣を肩に担ぐように構えると、未だに滞空しているマリアに向けて距離を詰める。

だがマリアは冷静だった。私が目一杯に引き絞っり放った斬撃を、宙にいながら、その横腹に蹴りをぶつける事で軌道を逸らした。私の剣はそのまま地面を数メートル切り裂いて止まる。

お互い、その程度では止まらない。


「フンッッッッッ!!!」

マリアは大上段から。


「ハッッッッッッ!!!」

私は最下段から。

お互いを両断する為だけに、最短最速の軌道に乗せて放たれる。


私たちの――――


刃は―――――


交錯する――――


キィィィィィィィィィィ―――――ンンンン!!!!!!!


高周波の音が球形に波及する。遅れて、伝播された衝撃が砂塵を巻き上げながら、辛うじて残っていた建物の残骸を嬲り、打ち壊す。

そして――――私の剣も同時に、粉々に砕け散った。私は膝から崩れ落ちる。

マリアは、切っ先をこちらに向け、睨み付ける。

「諦めて」

剣は折られた。私の神葬であるはずのそれは、粉々に砕け散った。

私に残されたのは、無駄に高い身体能力だけ。それも、妹へアドバンテージがあるわけではない。


……私は、マリアに勝てない……いや、止められずに、救えもしない。妹は私をここで止めると、きっと他の代理人を戦闘不能にしに行くはず。妹が戦闘を望んでいる訳でなくとも、代理人は現れて、戦闘になる。そして、どちらかが勝ち、どちらかが負ける。マリアが勝てば、相手が死ぬことはないが、その逆、マリアが負けて生きて帰ってこれる可能性なんてほとんど無い。

向かう先は聖人の域でも、歩む道は修羅の道。

自らを何処までも傷つけ、他者を何処までも想う。そうしてマリアは修羅の道を進むはずだ。自らの血で汚れた道を、どこかで負けるか、終点に着くまで、決して止まらずに、這ってでもその先を目指す。妹はそういう人間だ。

そんなどこまでも出来た妹が、今、唇を噛み千切る勢いで歯を食いしばって、苦しさで震える体を押さえ付け、懇願するような眼差しで、私に刃を向けている。

私は……どうすれば良い?

答えはとっくに決まっている。それが出来かどうかじゃない。やらなくちゃいけないんだ。孤独に歩む妹を救うのは、姉である私の役目だ。剣が折れようが、私の心までは折れていない!!!


すうっ、と。


私は突き付けられている剣に、無造作に手を伸ばす。開いた五本の指で刃を握る。

マリアが驚愕の声を上げて、咄嗟に剣を引き、私の手のひらが短く数センチ裂けたが、握力だけで止める。


「我は戦神メンチュ」

小さな声で、はっきりと口にし、握った剣に更に力を込める。

「如何な軍勢をも蹴散らし」

頭の中に自動再生される言葉を紡ぎ出していると、力が漲ってくるのが分かり、次の瞬間には剣は粉々に砕いた。

「如何に強固な城壁をも穿ち」

突然の出来事に竦むマリアを他所に、悠然と立ち上がる。

「如何な戦争に於いても勝利を確約せしめる」

瞬時に我に返ったマリアは、私の詠唱に気付き、止めようと蹴りを放ち、私は吹き飛ばされて、瓦礫の山に受け止められ、粉塵が舞う。

「――――万物を我に相応しき器とし、我が武をもって其れを成し遂げん!!!」

視界が、晴れた。

不可視の何かが弾けた様に広がる。

私は自然と足元に転がる拳大ほどの瓦礫を拾う。すると、それは淡く輝きだすと、次第に輝きを増していく。何がどうなるか、具体的には分からなかったが、感覚に任せると投擲する。

マリアから見たら、拾った石を投げつけているだけのように見えただろうし、現にそうしただけだ。


ゴバッッッッッッッッッっっっっっっっっっっツツツ!!!!!!!!!!!!!!


突如、全ての感覚は耳を聾する爆音によって塗り替えられた


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