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エーテルスカー

許可証が彼の目の前にあった。


如月蓮次郎はそれを数秒間見つめた。


特別探査許可証


カテゴリー:学術


アクセスレベル:制限あり


有効期間:24時間


彼は微笑んだ。


「まだ使えるな」


この書類を手に入れるのは驚くほど簡単だった。


王立エーテル学院がどんな学生でも危険区域に立ち入ることを許可していたからではない。


むしろ正反対だ。


エーテルスカーは厳重に管理されていた。


しかし、『ヴィーナス・プロトコル』には、ほとんどのプレイヤーが知らない小さなサイドイベントがあった。


ゲーム開始から数週間後、秘術学の教授が古代の汚染区域から採取したサンプルを記録するボランティアを募集していた。


学生が特定の申請書を提出し、フォームの正しい選択肢を選び、学科の署名を得ると…


一時的な許可証が発行された。


ゲーム内では、それはごく平凡なサイドクエストを解放する。



マサトは何年も前にそれを完了していた。


今となってはその知識がはるかに役に立った。


「サイドクエストがあってよかった。」


一つ重要な違いがあった。


許可証はスカーの奥深くへの立ち入りを許可していなかった。


ましてや、あの謎の機械を見つけた遺跡への立ち入りなど論外だった。


しかし、それは問題ではなかった。


まずは最初のチェックポイントを突破しなければならない。


残りは…


何とかなるだろう。


次の問題は装備だった。


レンジロウは学内倉庫に入り、許可証を提示した。


短い髭を生やしたがっしりとした体格の係員が書類を読み上げた。


それからレンジロウを見た。


そして再び書類に目を戻した。


「一年生か?」


「はい。」


「野外調査か?」


「はい。」


「一人で?」


レンジロウは黙っていた。


男は片方の眉を上げた。


「やはりそうか。」


彼は一枚の紙を取り出した。


「許可証は基本装備のみを認めています。重火器は禁止です。」


「重火器は必要ありません。」


「対物ライフルを持ちたくなるまでは、みんなそう言うんですよ。」


レンジロウは思わず笑みをこぼした。


店員はカウンターに品物を並べ始めた。


頑丈なバックパック。


水筒。


呼吸フィルター2個。


手袋。


ロープ。


救急箱。


携帯用懐中電灯。


小型防護マスク。


レーション。


そして武器が運ばれてきた。


「標準装備の拳銃です。」


店員は拳銃をテーブルに置いた。


レンジロウはそれを調べた。


「予備のマガジン2個。」


次に小型ライフルが現れた。


レンジロウはわずかに眉を上げた。


「これは基本装備に含まれますか?」


「敵対的な野生動物がいる。」


「このルールはいいですね。」


男は彼を見た。


「ダメだ。」


男はライフル銃の横にマガジンを3つ置いた。


「弾薬は制限されている。すべて記録される。」


「分かりました。」


レンジロウはもっとたくさん持っていきたかった。


もっともっと。


しかし、あまり多くを要求すると疑われることを知っていた。


拳銃。


ライフル銃。


弾薬は制限されている。


フィールドナイフ。


サバイバル装備。


以上だ。


重装甲は禁止。


爆発物は禁止。


高度な魔法武器は禁止。


そしてエーテルフレームは絶対に禁止だ。


レンジロウは慎重に荷物を詰めた。


係員は彼が荷物を詰める様子を見ていた。


「使い方は分かっているだろう。」


「訓練済みです。」


「教官たちがそう言っていた。」


レンジロウは立ち止まった。


「俺のことを話していたのか?」


「Eランクの生徒が上級生より射撃が上手くなると、噂になるものだ。」


それは問題になりかねない。


「許可証は明日で期限切れだ」と男は続けた。「全て返却しなければならない。」


「返却します。」


警備員はライフルを指差した。


「お前もだ。」


レンジロウはかすかに微笑んだ。


「そのつもりだ。」


彼は日が暮れるまで待った。


完全に姿を隠さなければならないからではない。


彼の許可証は本物だった。


しかし、外縁区域への接近許可を得ることと…


実際に計画を実行することの間には、大きな隔たりがあった。


午後10時43分、レンジロウはエーテルスカーの端にたどり着いた。


彼はこの瞬間を一日中何度も想像していた。


今、そこに立っている…


彼は何の興奮も感じなかった。


彼は警戒心を抱いた。


目の前には古びた金属製のフェンスが伸びていた。


錆びた看板がフェンスに取り付けられたままだった。


汚染区域


許可なく立ち入り禁止


レンジロウは周囲を見回した。


何もない。


警備員もいない。


学生もいない。


研究者もいない。


ただ風だけが吹いていた。


これは彼の記憶と一致していた。


スカーはあまりにも危険なため、特定の入り口に常駐警備員を配置するのは無意味だった。


主要ルートは監視されていた。


ここは監視されていなかった。


一体誰が、自ら進んでここを通ろうとするだろうか?


レンジロウは手を挙げた。


「提示します。」


彼は小型のリーダーでIDをスキャンした。


黄色いランプが点灯した。


認証済み


側面のロックが開いた。


レンジロウは中に入った。


ドアが彼の後ろで閉まった。


彼は微動だにせず立っていた。


向こう側にはエーテリアがあった。


光。


建物。


文明。


彼の目の前には…


暗闇。


彼はランプを取り出した。


カチッ。


一条の光が夜を切り裂いた。


道があった。


彼はその道を辿った。


彼が探していた入り口は、およそ1キロメートル先にあった。

1キロメートル。


レンジロウは枯れ木の陰でそれを見つけた。


地面に不規則な開口部が続いていた。


洞窟のようだった。


実際、ゲームで記憶していた通り、それは古代の自然の洞窟網の一部で、最終的にはスカーの下層部へと繋がっていた。


画面上では、ただの入り口に過ぎなかった。


今となっては、まるで彼を丸呑みにしようと待ち構えている何かの口のように見えた。


レンジロウはライフルを確認した。


次に懐中電灯を確認した。


バックパックを背負った。


「よし。」


暗闇を見つめた。


「ここまで来た。」


中に入った。


最初の数分間は何も起こらなかった。


石。


湿り気。


静寂。


自分のブーツの音。


レンジロウはゆっくりと前進した。


懐中電灯は使わず、常にまっすぐ前を照らしていた。


そのビームは床、壁、天井をスキャンした。


彼は動きを探していた。


痕跡を。


乱れを。


何か不審なものを。


彼の肉体は17歳だった。


しかし、その洞窟を調査していた人物は、何十年もかけて、一見何もないように見える場所こそ、最も注意を払うべき場所だと学んでいた。


その時、匂いが漂ってきた。


恋次郎は立ち止まった。


「ああ…」


彼はすぐにその匂いを認識した。


腐敗臭。


淀んだ湿気。


腐敗した有機物。


そして、正体不明の化学物質。


息を吸うたびに、匂いは強くなった。


恋次郎は眉をひそめた。


「あれはゲームにはなかったな。」


ゲームにはあの匂いはなかった。


彼は今まで考えたこともなかった。


エーテルスカーは、視覚的にも常に不快なものだった。


しかし、画面ではそれを伝えることはできない。


彼は続けた。


悪臭はさらにひどくなった。


恋次郎は口でゆっくりと呼吸した。


しかし、あまり効果はなかった。


彼は前世の記憶を呼び起こした。


仮設キャンプ。


廃墟。


排水溝。


誰も長居したがらない建物。


彼はひどい悪臭に遭遇してきた。


だからといって、それが好きだというわけではない。


「軍隊経験…」


彼は鼻を軽く覆った。


「二度と使いたくないスキルもある。」


彼は呼吸フィルターを一つ取り出した。


それを装着した。


かなり良くなった。


完璧ではない。


だが、耐えられる。


彼は歩き続けた。


洞窟は下り始めた。


地面が変わった。


最初は岩。


次に泥。


そして…


キーッという音。


恋次郎はブーツを見た。


彼は暗い液体の中に足を踏み入れた。


彼はゆっくりとランプを上げた。


そして、その場所を見た。


――…


何があるか予想していたにもかかわらず、理解するのに数秒かかった。


洞窟は広大な空間へと続いていた。


まるで地下の谷のようだった。


天井は非常に高く、光はほとんど届かなかった。


暗い根が至る所に伸びていた。


中には木のような形をしたものもあった。


古い金属構造物に絡みついているものもあった。


建物の残骸があった。


パイプ。


プラットフォーム。


緑がかった層に覆われた機械の部品。


そして、それらすべてを貫くように…


川が流れていた。


しかし、それは清らかな水の流れではなかった。


泥、瓦礫、腐敗物が混じった、濃い暗い液体の濁流だった。


時折、水面に泡が浮かんだ。


ポコッ。


一つが破裂した。


レンジロウはマスクの下で顔をしかめた。


―ああ。


今、彼はその場所を思い出した。


ビデオゲームでは、デザイナーたちが不快な場所にするために、わざわざ手間をかけすぎていると思っていた。


しかし、それは間違いだった。


彼らは十分に努力していなかったのだ。


悪臭はフィルターを部分的に透過していた。


腐敗臭。


淀んだ水。


錆びた金属。


甘く、吐き気を催すような何か。


蓮次郎はゆっくりと呼吸した。


集中。


一歩。


そしてもう一歩。


彼は臭いのことを考えないようにした。


水の中に何が入っているのかを考えないようにした。


水面下で動いているように見えるもののことを考えないようにした。


目的。


ルート。


距離。


それだけだ。


彼は地図を取り出した。


地図にはその地域が正確に示されていなかったが、正人はルートを覚えていた。


彼は何度もそこに来ていた。


ゲームの中で。


彼は左に曲がった。


「高架台は…」


彼はランプを動かした。


そこだ。


古い鉄製の歩道橋が川の一つに架かっていた。


恋次郎は微笑んだ。


「よし。」


彼の知識は今もなお役に立っている。


彼は前進した。


その時、何か音が聞こえた。


バシッ。


彼は立ち止まった。


ライフルを即座に構えた。


静寂。


恋次郎は川の方を向いた。


何もない。


彼は待った。


5秒。


10秒。


バシッ。


今度は彼は橋の後ろに回った。


彼は振り返った。


何もない。


光の筋が遺跡を照らした。


パイプ。


石。


金属片。


何もない。


恋次郎は武器を下ろさなかった。


心臓の鼓動が速くなった。


冗談じゃないぞ。


彼はそれを思い出した。


ビデオゲームでは、敵が現れた。


音楽が流れた。


体力ゲージが表示された。


インジケーターが表示された。


ここでは違う。


ここでは、何の警告もなく、背後に何かが潜んでいる可能性がある。


恋次郎はゆっくりと壁に向かって後ずさりした。


角度を小さくする。


耳を澄ませる。


見る。


待つ。


すると、川の向こう側で何かが動いた。


恋次郎は狙いを定めた。


暗闇の中に、小さな黄色い点が二つ現れた。


目だ。


そしてさらに二つ。


そしてまた。


恋次郎はゆっくりと息を吐いた。


「そうだ。」


彼は思い出した。


傷跡のスカベンジャー。


ゲームでは、彼らは弱い敵だった。


厄介なだけだった。


それ以上でも以下でもない。


あるキャラクター。

上級プレイヤーなら、一瞬たりとも立ち止まることなく奴らを始末できるだろう。


レンジロウはライフルを見つめた。


それから、まだ訓練されていない自分の腕を見つめた。


そして、暗闇の中に次々と現れる目を見た。


1。


2。


3。


4。


5。


彼の笑顔が消えた。


「大きな違いがある。」


彼はライフルの安全装置を外した。


カチッ。


「俺はもう上級プレイヤーじゃない。」


目が動き始めた。


レンジロウは息を呑んだ。


指は引き金にかかっていた。


まだ発砲はしない。


弾薬が限られている。


騒音。


周囲には正体不明の敵がうろついている。


無駄な戦いは愚かな戦いだ。


彼はゆっくりと後退した。


スカベンジャーたちは遠くから彼を追っていた。


恋次郎は懐中電灯で別のルートを探した。


そこだ。


高台にある構造物。


側面から回り込める。


彼は動き始めた。


ゆっくりと。


走らずに。


パニックを見せるな。


視線は依然として彼を追っていた。


恋次郎はライフルを軽く握った。


ここはほんの入り口に過ぎない。


真に危険な場所は遥か先に広がっている。


そして金星……


金星は深淵に横たわっている。


この探検に出発することを決意して以来、初めて恋次郎は自分がしていることの重大さを真に理解した。


彼はゲームの上級エリアに足を踏み入れたのだ……


最弱のキャラクターの体で。


彼はマスクの下でかすかに微笑んだ。


「さて、マサト……」


暗闇の中から、スカベンジャーの一人が唸り声を上げた。


恋次郎は前進を続けた。


「お前はあの忌々しい0.2%が欲しかったんだろ?」


彼は肩に当てたライフルを調整した。


「さあ、今度は自分で勝ち取らなきゃならないぞ。」


そして彼はエーテルスカーの廃墟の中にゆっくりと姿を消した。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


レンジロウはついにエーテルスカーに足を踏み入れました。プレイヤーとしてよく知っていた場所ですが、今やその闇を感じ、音を聞き、腐敗の悪臭を嗅ぐことで、以前とは全く違う感覚を覚えます。


限られた資源と弾薬で金星を目指すレンジロウは、ヴィーナスプロトコルの記憶だけでなく、前世で培った軍事経験もすべて頼りにしなければなりません。


もしこの物語を楽しんでいただけたなら、評価、コメント、お気に入り登録をしていただけると大変嬉しいです。レンジロウとヴィーナスプロトコルの世界についてのご感想もぜひお聞かせください。


お付き合いいただき、ありがとうございました。次の章でお会いしましょう!

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― 新着の感想 ―
 イイ感じだと思います。次回、戦闘開始ですね。
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