21.報告 SIDE咆哮、マイト辺境伯
”咆哮”の面々は砦に戻り次第すぐにマイト辺境伯へと報告を行った。
「つまりなんだ、森の奥には謎の上位存在がいて、手を出すなということか。
謎の魔力の変動もそいつのせいだと、まぁ、これだけの年数経っても何も起きてはいなかった訳だから、そいつが原因となって魔物共が溢れてくることは無いと考えてもいいがこの”仙桃”とやらがまずい。
こちらで鑑定もしたが僅かな若返りとは言ったが5年から10年程若返るらしい。
上位存在共からすれば僅かだが人からすればとんでもない代物だ。
手を出すなと言っときながらこんなものを渡して来るなんてふざけてやがる。
はぁ、とりあえず調査依頼は完了だな、報酬は後でギルドに振り込んでおく、他の辺境伯共が来た時に呼び出すかもしれんから暫くは部屋に居てくれ、買い物程度なら好きにして構わん。」
そう言われ執務室を後にした。
「はぁ、面倒な事になったな。」
「そうね、こんなことになるなんて思ってもなかったわ。」
「下手したら戦争なんかが起こるんじゃないか?」
「さぁね、可能性がないとは言わないけど、余程の馬鹿か欲に塗れた奴ぐらいじゃない?」
「まぁ、そうだな。戦争なんてそうそう起こらないよな。」
この世界戦争はほとんど起きていない、と言うよりも昔起きた戦争の記録により為政者達からは戦争を起こすのはかなり禁忌に近い扱いを受けている。
と言うのもこの世界どれだけ兵士を集めても強力な個人によって壊滅させられることもざらである。
昔の記録では戦争の途中にたまたま通りかかった今で言う特級レベルのものが「邪魔」の一言で戦争を有利に進めていた大国の兵士や騎士を皆殺しにし戦況が変わり大国が消えたり、魔物が乱入してきた、小国の出身の特級が戦争に参加し大国を討ち滅ぼしたり、と兵力を集め準備をしてもそんな”運”によって戦況が変わってしまうのであればあまりにも無意味である。
ならば特級を雇えばいいかもしれないが本来特級なんてものは権利も武力も通用しない自分勝手の極のような存在だ、適当に竜を数匹殺して売れば金に困ることもない、そんな個人の気分によって戦況を左右されていては戦争なんて起こせないのだ。
SIDEマイト辺境伯
報告を聞いた辺境伯はため息を付き椅子に深く座り思考を巡らせる。
(謎の上位存在に若返りの効果がある仙桃か、めんどうな、そもそもそいつは我々の事を知っていたとの事だ、ならばこの桃が人にとってとんでもない代物だと予想できるはずだろうに、一体なぜだ、特級が5人いても勝てない存在がいた時点で説得力としては十分なはず、わざわざこんなもの渡さなくとも疑うつもりもない、と言うかおそらく”咆哮”を威圧した時の重圧はこちらにも届いていた、と言うかこちらまでわざわざ届けたのだろう、その時点で疑う余地もない、なぜだ全く分からん。
ギルやグランにも連絡せねばならんし、こんなもんは王都にも連絡せねば後でバレた時がうるさい。
三国の国王に宰相、外務大臣、軍務大臣、財務大臣あたりは呼ばれるだろうか、変に欲を出さないで欲しいものだが、それぞれの財務大臣共が心配だな、これは馬鹿な値段で売れる。それに怪我も病も呪いも全て治せる、今後の国交も有利に進められるとしたら外務大臣共もうるさそうだな、軍務大臣共は特級がどれ程ものか理解しているからこちら側に着くはずだが、国王と宰相は分からんな、どの国の国王も良く国を纏めているし、宰相の評判も良い、だがこれ程のものを前にしてまともでいられるだろうか。
我々のような鍛えており、レベルも高いものは寿命も随分と伸びるが、文官よりのものはあまり鍛えていないからな、若返りなんてものは欲しいに決まってる。
くそが、これだから上位存在は嫌いなんだ、今回のやつ然り、龍だなんだとふざけやがって、はぁ、ひとまずギルとグランに手紙を出さねば、後で薬師に胃薬を出してもらおう。)
そう思い手紙を書き始める。
フリーク森林に面する辺境伯、中央のものには野蛮だとか蛮族共などと言われるが高レベルの魔物素材、質のいい魔石、それらの取り扱いは慎重にならねばならない、そんなものを常日頃から取り扱っている辺境伯は胃痛とは長年の付き合いのようだが今回は過去最大級の胃痛となりそうだ。




