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第23話『不運と踊っちまう系のエリート』

 ショッピングモールでの一件から一週間ほど。

 俺に対する周囲の振る舞いは一転し、やたらと人気になっていた。


 特に体育の魔法戦の実戦訓練ではそれが顕著だ。

 何人も俺に挑んでくるので適当にあしらってはいるが、全体的にレベルが高いので10人も相手するとヘトヘトだ。


「だー、また負けた! これで11人抜きかよ!」


「今のどうやったんだ? 一瞬、九頭龍の姿が消えたような……」


「今のは体術に一瞬だけ幻覚魔法を織り交ぜただけだ。タイミングが難しいけど、慣れたら便利だから覚えてて損はないよ」


 俺は本当に基礎の魔法しか使わず、それを上手く活用した小技だけで戦っている。

 ここの生徒は魔法のレベルは高いのに、ジョージや羽多野のような一部を除くと応用の幅が狭い。しかし応用力さえつければ実力が跳ね上がる生徒ばかりなので、こうしてテクニックを教えているのだ。


「そんな使い道もあったのか……なるほどな」


「魔法の腕は俺より良いから、あとは小技を充実させりゃ俺より強くなれるよ。確実に」


「っしゃ! ちょっと練習してくる!」


「じゃあ今度はオレが相手だ! この前教えられた新技、ちゃんとできてるか見てくれよ!」


「おっしゃ、どんとこい!」


 俺が前に思いついた「悪いイメージを塗りつぶす好印象で、良い意味で目立つ」という作戦は成功している。

 どうせあの事件で実力が高いことはバレてるんだから、このぐらいやっても違和感は無い。俺はすっかりみんなの師匠みたいなポジションになっていた。


「それにしても九頭龍、お前どこでこんな技術身につけたんだよ? こんなのウチじゃ全然教えられねえぞ?」


「この学園は放任主義らしいし、その辺は自分で身につけろってことじゃないか? 俺は……鬼みたいな師匠がいたから……」


「九頭龍が鬼って言うレベルかよ……こえー」


 実際、俺の師匠――ノブさんは鬼教官だった。

 大魔法など二の次で、とにかく下級魔法を広く浅く覚えさせられ、徹底的に実戦的な小技を叩き込まれた。

 おかげで魔法の才能が皆無だった俺でも、こうして人に教えられるぐらいにはなっている。


「ま、師匠の教えは俺がマイルドにして伝授してやるから心配すんな! たまにジュースの1本でも奢ってくれりゃそれで十分だからよ!」


 この中で優秀な未来の後輩くんが出てくれれば上等。現役の特A級騎士が指南してるんだから大成してくれよ?

 そんな将来への期待を含めて、俺は同級生にサムズアップした。







「でも昼メシのメンツは変わらないんだよなぁ」


「なんだよ、オレ達じゃ悪かったかぁ? 人気者さんよ」


「……ま、気が楽だしな」


 気心知れた2人に、例のメアリー不良撃滅事件の場所。

 周囲の評価が変わっても、昼食を食べるメンバーと場所は同じだった。なんとなく落ち着くし。


「あんまり目立つと、また中執に目ぇつけられんじゃねえのか?」


「まだなんか目付けられる案件あんの? もはやコレいじめじゃね?」


「……いや、今度は単純な腕試しだろう」


「腕試し? 中執が?」


「あー、アレな。強いってウワサの奴がいると中執の奴にケンカ売られるっていう」


「もう中執の方がヤンキーだよそれ! 何、そんなにヤバイ集団なの!?」


 生徒会みたいなもんとか言ってたから、ただのエリート集団かと思ってたのに!

 メアリーはともかく、田中はそんなタイプに見えないが……あ、一言二言しか喋ってないからわからんわ。


「……いるんだよ。中執にも戦闘狂が何人か」


「ちょっと名が知れるとタイマン張ってくるんだよなぁ……オレもボッコボコにされたわ」


「なにそれ怖っ!? ジョージがボッコボコにされるってヤバくないか!?」


「オレのことワンパンで沈めたお前に言われてもなぁ……ま、洗礼みたいなもんだ。気ぃ緩めてっとケンカふっかけてくるから注意しとけ」


 あれ? 俺が着任したのって国内トップクラスのエリート魔導学園だよね? 不運ハードラックダンスっちまう系の不良学園じゃないよね?

 それともエリートって自分より上の奴潰そうとする習性でもあるの? なにそれこわい。


「来るとしたら誰だろうな?」


「……そりゃ10位じゃないか? お前のこと潰したのも奴だろ」


「だよなぁ。でも5位って可能性もあるな。あいつ熱血だし、こういうの好きそうだろ」


「……大穴で2位と6位もあり得るか。逆に4位は興味無さそうだな。アレって女子にしかケンカ売らないだろ」


「あいつあんまり好きじゃないんだよなぁ……同じ女子なら2位とか7位の方がいいわ。あと8位」


「待て待て! そんな重要そうな情報を一気に言うな! しかも順位じゃなくて名前で言えよ! 俺がわかんねえだろ!」


「そこは自分で調べろよ」


「……安浦なら教えてくれるだろ?」


 こ、こいつら……自分たちが俺の人気のおこぼれに与れなくて、ついに嫌がらせに走りやがったな……!


「九頭龍が負けますように! そんでオレらと同じネタキャラ扱いまで落ちますように!」


「……チヤホヤしてもらえんのも今の内だ」


「お前らホントいい性格してんな畜生!」


 だが残念だったな! 性格やら何やらはともかく、順位と得意魔法ぐらいなら俺の全校生徒データで見放題なんだよ! 勝ったな!


「ま、ともかく今回オレらにお前を助ける気はない。自分の力で乗り越えてみやがれ!」


「助けなんて借りなくても俺1人で十分だしー! ヤンキー紛いの中執なんか負けねーし!」


 ホントに負けないんだけどね。

 でも実際に中執が俺に対戦ふっかけてきたらどうしようか? さすがに学園トップの実力者に勝つのは目立ちすぎる。

 でもあの事件のせいで俺が相当強いってバレてるからなぁ……その辺の対応はまた追い追い考えるとしよう。



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