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転生ヤンキー、異世界で天下一(てっぺん)をとる! ボンタン狩り編  作者: 知恵利一


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9/9

エピローグ

ボンタン狩りから三日後。

善二たちは、次なる大陸へ向かう準備を始める。

しかし、旅立ちの前に明かされるのは、チェリーの正体。

そして、この世界を創った“神”にまつわる真実だった。

戦いを終えた先に待っていたのは、終わりではなく、新たな旅の始まり。

エピローグです。

 ◆三日後の朝――。

 宿屋の前に、善二たちの姿があった。

 善二の顔色はだいぶ戻り、歩けるほどに回復している。

 「完全に動けるようになったしよ……これからどうする?」

 善二の問いに、ピックルが紙束を広げる。

 「色々調べたけど、この大陸の四天王はあの鴉丸狂人だったみたい。ケルベロスを追って上代龍平が来たのは偶然ね。で、なんであいつがボンタン狩りに参加したかは……不明」

 「なるほど。狂人もハンパなく強かったからな。あいつが四天王の一角だったのか。――てことは、次の大陸を目指すってことで間違いねぇな」

 美柑は腕を組み、真剣な面持ちで頷いた。

 「次の大陸の名は――【ラバーズランド】、そこはスケバンが国を仕切ってる。つまり……次の四天王は女よ」

 「女……? おい俺、女とはやりたくねぇんだけど」

 「甘く見てると殺られるわよ。四天王=番核持ち。ヤンキースキルの格も違う」

 善二は肩を回しながら歩き出す。

 「そんじゃまっ、とりあえず向かうとしますか。考えんのはあとだ――」言葉尻に善二は突然立ち止まり、周囲を見渡した。

 「……あれ? チェリーは? 誰かあいつ見てねぇか?」

 一同が揃って首を横に振る。

 「まったくもう! あのバカ犬! 気がつくといっつも消えてるんだから!」ピックルの額に青筋が浮かぶ。

 「そういえば……チェリーの姿、見てないわね。テンテンは?」

 美柑の問いに、テンテンは人差し指と親指を顎に添え、少し考え込むような仕草を見せた。

 「……少し、よろしいでしょうか」

 その声音はいつになく慎重だった。

 「善二さん。チェリーさんとは、どのような経緯でお仲間になったのですか?」

 問われ、善二はチェリーとの出会い――前世での出来事、転生後の再会、そして共に行動するようになった経緯を、簡潔に語った。

 話を聞き終えたテンテンは、静かに目を伏せる。

 「……やはり、腑に落ちません」

 「――え?」

 「チェリーさんの前世は犬です。ですが、この世界に転生してくる存在は、例外なく人間であり、ヤンキー、あるいはスケバンです」

 その言葉に、場の空気が一瞬止まる。

 「そ、そう言われると……確かに」善二は言葉を詰まらせた。

 「私も、何の疑問も持たずに受け入れてたわ」ピックルも小さく頷く。

 「いや、でもよ……」

 善二は苦し紛れに言葉を探す。

 「犬だって、やんちゃな奴はいるだろ? それがヤンキー判定されて――」

 「それはありません」テンテンはきっぱりと言い切った。

 「善二さんがチェリーさんを庇おうとする気持ちは理解できます。ですが、その理屈が通るなら、他の犬や猫、あらゆる動物も転生していなければなりません」

 「……」

 「しかし、そのような前例は一切確認されていません」

 善二は反論できず、口を閉ざした。

 「チェリーさん……彼は危険な――」そこまで言いかけた瞬間。

 《テンテンは鋭いね》

 静かな声が、背後から響いた。

 一同が振り返ると、そこには――銀色の体毛をまとった、巨大な狼の姿があった。

 「ち、チェリー!? お前、今までどこに――」

 《落ち着いて聞いてほしい》

 チェリーは善二の言葉を遮り、静かに続ける。

 《みんなは、この世界について、どこまで知ってる?》

 そう言って、チェリーはテンテンへ視線を向けた。

 「……私もすべてを知っているわけではありません。ですが、この世界は“神”によって創られた――そう理解しています」

 《じゃあ、その神がどんな存在かは?》

 矢継ぎ早の問いに、テンテンは一瞬言葉を失う。だが頭の回転が速い彼女は何かを察した。

 「……まさか……神もヤンキーなのでしょうか?」

 《正解!》チェリーは楽しそうに声を弾ませた。

 《さすがテンテン。理解が早いね》

 「神様も……ヤンキー?」美柑は目を丸くする。

 「……いや、でも」

 善二が腕を組み、低く呟いた。

 「そう考えると、妙に納得できる」

 「どういう意味?」

 「普通の異世界なら、騎士とか魔法使いとか僧侶がいてもいいはずだ。でも、俺たちはまだ一度も見てねぇ。それに、この世界……やたらヤンキー用語が多いし、ボンタン狩りなんてイベントも不自然すぎる」

 「……あんた、意外と考えて生きてるのね」美柑の、鋭利に研がれたナイフのようなツッコミが飛ぶ。

 「おいコラ! 俺をどんだけ脳筋扱いしてんだ!」

 「はいはい、そこまで!」

 ピックルが割って入る。

 「今は痴話喧嘩してる場合じゃないでしょ!」

 二人は気まずそうに目を逸らした。

 《……続けてもいいかな?》

 チェリーが、少し遠慮がちに言った。

 《今みんなが感じている疑問――なぜ犬であるボクが、この世界に転生できたのか》

 全員が息を呑む。

 《結論から言うよ。ボクは――神様のウォッチャーなんだ》

 ――沈黙。

 「……え?」

 「……は?」

 「か、神様の……ウォッチャー!?」ピックルがようやく声を絞り出した。

 《そう。そして神様の命令で、善二たちの世界へ一時的に犬の姿で転生していたんだ》

 「……なんで、そんなことを?」善二は完全に混乱していた。

 《この世界の神はね、自分の座を次の世代に譲ろうとしているんだ》

 「意味が分からなすぎるだろ!」

 《詳しいことは、本人に直接聞いてほしいな」

 チェリーは肩をすくめる。

 《ボクはそれまでの案内役を任されているだけだから》

 「……条件はあったのか?」

 善二が真剣な眼差しで尋ねる。

 「それとも、誰でもよかったのか?」

 《条件はあるよ》チェリーは、まっすぐ善二を見た。

 《強さはもちろん。正義感があって、思いやりがあり、仲間から自然と認められる“器”を持つこと》

 《……そして善二。キミは、その条件に合致した》

 その瞬間――善二の中で、怒りが一気に噴き上がった。

 「ふざけんな……! 俺は好きで死んだわけじゃねぇ! 神の都合で勝手に連れてこられたってのかよ!」

 《……だから、詳しい理由は本人に聞いてほしいんだ》

 チェリーは困ったように笑った。

 《それに、善二も候補の一人にすぎない》

 チェリーは淡々と、だが重みのある口調で続けた。

 《神様がいる中央魔大陸へ向かう道は、生半可な実力では辿り着けない。幾多の試練を潜り抜け、最後まで生き残った真の強者だけが認められ、ようやく謁見の場が与えられるんだ》

 「……つまり、そこまで行けた奴しか会えねぇってことか」

 《そういうこと。それに善二、キミは願いを叶える龍を探しているよね?》

 「ああ」

 《その龍もまた、神様が召喚した神獣だ。神様に会わずして、龍に辿り着くことも、願いを叶えることもできない》

 「……なんだと」

 善二は舌打ちし、露骨に顔をしかめた。

 「結局、一回は神とやらに会わなきゃ話にならねぇってわけか。……面倒くせぇ」

 その様子を見て、チェリーは再び小さな犬の姿へと戻る。

 《じゃあ、話は決まりだね。行こうか》

 「はぁ?」善二は眉をひそめる。

 「お前、神のペットみたいなもんだろ。正直、今の話聞いて神も気に食わねぇし、そのペットも当然好きになれねぇ」

 《ちょっと待ってよ!》チェリーは即座に反論した。

 《ボクはペットじゃない! 案内役として任命されてるんだ。それに、善二の行動は逐一チェックしろって言われてる。嫌でも一緒に行くよ》

 「私は反対ね」

 ピックルが冷ややかな視線を向ける。

 「どう見ても、何か企んでる犬じゃない」

 「でしたら――」テンテンが一歩前に出た。

 「私が、チェリーさんを常に監視するという形ではいかがでしょうか?」

 「ちょっと!」

 美柑が即座に噛みつく。

 「それって、アタシも一緒に行く前提になってない?」

 「ここまで来たら旅は道連れです」

 テンテンは穏やかに、しかし揺るがぬ口調で言った。

 「この先は、今まで以上に手強い猛者たちが待ち受けています。一人では乗り越えられない局面も、必ず訪れるでしょう」

 「……はぁ」美柑は肩を落とす。

 「まぁ、いいわ。どうせ今はやることもないし、善二と一緒なら退屈はしなさそうだしね。それに……次の四天王が女ってのも、ちょっと気になるし」

 「あのな! 勝手に話を進めんな!」善二が声を荒げる。

 「これは俺の問題だ。もしお前らに何かあったら――」

 「あんた、アタシを舐めてんの?」美柑は鼻で笑った。

 「これでも番核持ちよ」

 「……ああ、そうだったな。悪い」善二は一瞬目を伏せ、正直に続ける。

 「でもな、俺の願いは前世に戻ることだ。そんな個人的な理由を承知で、この危険な旅についてくるって言うのか?」

 「もちろん」美柑は即答した。

 「神様とかいう、ふざけた存在の顔――一度は拝んでみたいからね」

 こうして、旅の仲間は揃った。

 この先、どんな怪物が現れ、どんな試練が立ちはだかり、どんな強者と出会うのか――そのすべてを、彼らはまだ知らない。

 だが確かなのは一つだけ。

 この旅が、善二の運命を大きく動かすということだった。

 夜明け前の空は、まだ薄紫に沈んでいた。

 宿屋を離れ、街道に立つ善二たちの背中を、冷たい風が押す。

 振り返れば、クレイジータウンはもう遠い。

 ボンタン狩り、四天王、狂人、龍平――命を削り、拳を交え、心をぶつけ合った日々は、すでに過去になりつつあった。

 善二は無意識に、胸元に手を当てる。

 そこに刻まれた消えない感覚。

 それは傷ではなく、失った時間の重みだった。

 「……寿命、どんぐらい削れたんだろうな」冗談めかして呟いた声に、誰も即座に答えなかった。

 「考えんな」美柑が肩越しに言う。

 「どうせ進むしかないんでしょ」

 「そうよ」ピックルが腕を組む。

 「戻れない道を選んだんだから」

 テンテンは一歩遅れて、静かに頷いた。

 「この先には、三大陸があり、その抜けた先に中央魔大陸へつながる橋があります。神へと至る道――選ばれし者しか辿り着けない場所」

 その言葉に、善二は小さく鼻で笑う。

 「選ばれし者、ねぇ……そんな大層なもんじゃねぇよ」

 そして前を向いた。

 「俺はただ――母ちゃんを悲しませないために、帰りたいだけだ」

 その背後で、チェリーが一瞬だけ立ち止まる。銀の瞳が、善二の背中を静かに見つめていた。

 《……それでも》

 誰にも聞こえない声で、彼は呟く。

 《キミは、すでに神の想定を超え始めている》

 空の彼方、雲のさらに向こう。

 そこには、まだ姿を見せぬ神と、願いを叶える龍が待っている。

 だが――そこへ辿り着くまでに、善二はあと何時間、何日、何年分の命を削るのか。

 それを知る者は、まだいない。

 ただ一つ確かなのは、この旅が、もはや後戻りできないということだけだった。

 善二は歩き出す。

 仲間たちも、その背中を追う。

 やがて道は、大陸へと続く闇の中へ溶けていった。


エピローグまで読んでいただき、本当にありがとうございました!

これにて、善二たちの最初の大きな戦い――クレイジータウン ボンタン編は一区切りとなります。

ボンタン狩り、狂人との死闘、龍平との因縁、そしてチェリーの正体。

善二の旅は、ただ天下一を目指すだけではなく、神や願龍へと繋がる大きな物語へ進み始めました。

次なる舞台は、スケバンが支配する大陸【ラバーズランド】。

善二たちがどんな強敵と出会い、何を選ぶのか。

ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございます。

少しでも面白いと思っていただけましたら、ブックマークや評価、感想などで応援していただけると嬉しいです!

今のところ続編を書く気はないです。

評価やブックマーク、コメントもないのでモチベ下がりまくりなのでw読まれてはいるのに何も意見がないのが一番のショックw

もちろん、それらをやるにはアカウント登録するという面倒な壁が立ちはたがりますが、私にはみなさんの力が必要なんです! どうか清き一票を!

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