ロックと言う男 男の意地
ロックさん深堀話、需要が無い?そんな事言わないで。
よくある、いやあんまりない話か。俺は何代目かは知らないがそこそこ続く鋳掛師と包丁やハサミ研ぎの家に生まれ、腕はそこそこよかった。
鋳掛師が何だってか?簡単に説明すると、穴が開いたりひびが入ったりした鉄や銅などの金属製の鍋や釜を、金属を溶かして修繕する職人さ、庶民は金属製の道具はそうそう買えないからな俺みたいな職人は結構重宝されてたんだぜ。
しかもなり手が少ない、そりゃそうだ。武器鍛冶とまではいかなくても包丁やナイフとかの刃物を作る方がかっこいいし、男はそっちに憧れるよな。鍋の針のような穴をふさぐ仕事は男の子は憧れないよな。
でもスキマ産業っていうのかな、需要は結構あった、庶民は金属製の道具なんてそんなに買えない、一回買ったら一生ものって事が多い、前の町ではそれなりに忙しくて毎日夜遅くまで働いたさ。それがあんな事になるなんてな。この世は地獄、初めてそう思ってしまったぜ。
当時の町である大きな工務店の親方に目をかけてもらってな、親方の末娘に婿養子になったのさ。
最初はよかった、金でもためて子供2~3人作っていい学校入れて平民でもなれる下級官吏、あわよくば中級官吏まで出世できればと思い教育資金を貯めるために必死に働いたさ。
平日は毎日22時過ぎに帰宅、柄にもなく記念日に花束とケーキを買って帰れば見知らぬ男の靴、その後はお察しさ、普通なら叩き出して嫁の言い訳を聞いて許すか許さないかは......人それぞれだわな。
けどあいつらは違った、間男は義父のお得意先の最下級と言えど準貴族様。あれよあれよと言う間に俺が嫁にDVをしてたとして身ぐるみはがされて「全財産を渡してこの町から出ていくなら許してやる」と貴族様直々に言われたよ。
義父は知ってたはずだ、一緒に住んでいるし、一緒の場所で働いていた。DVなんてしている暇なんかない、でも保身に走った、嫁もだ。
我が家に代々伝わる鋳掛の道具だけは業腹だがあのクソ貴族とクソ義父に地に頭をつけて返してもらった。あのときほど憎しみで人を殺せたらと世を憎んだ事は無かったね。
そして流れて今の町にいる、いくら腕があってもどこの馬の骨とも分からない男を雇ってくれるお人よしはいない、自分で商売をするにしてもこの町の市民権を買わなければならない、10年間税金を納めるかその2倍を払えば即購入可能という事だ、絶望したぜ。
けどな、安宿で俺が必死に守った鋳掛道具を見ていたら語りかけて来るんだよ。
「お前は、ここで終る男じゃない」
「俺たちを使ってくれ」
「俺たちはまだ働ける、腐るんじゃない、お前の代で終らせないでくれ、俺たちはまだ戦えるさ」
「意地を見せつけろあいつらに誇りをみせつけろ!!」
「お前はまだ死んではいない!」
気が付いたら冒険者ギルドにいた。
戦闘適正は第六感と隠密、クエスト適正は植物採取。何故ついたのだろうな?植物採取は分かる、婆さんの家が薬草問屋だった、ガキの頃は手伝って小遣い稼ぎをしたもんだ、婆さんは優秀な先生であり植物採取の名人だったようだな。
第六感と隠密、まぁあんなクソみたいな経験をすれば危険察知くらいは学ぶか、この町に来る間に野獣から命がけのかくれんぼで見についたのかもな。
今は、納税5年目、後5年だ。そのほかに開業資金も貯めている、唯一の後悔は親父が人生最高の買い物と言った風の魔獣の皮で作った鞴、炉の火力を高めるための送風機なんだが、それを返してくれなかった事だな、あれがあればほぼ自動で火力調節をしてくれる便利品だが仕方がない、安い手動品を買おう。
最近、オリバーとリリィと言う元貴族と出会った、最初はそれとなく避けていたが第六感が発動しないので安全と判断して何度かクエストも行ったし一晩中話をしたりもした。
あんな貴族もいるのか。リリィさんの話を聞いているとそれとなくオリバーはいい所の坊ちゃんらしい、ああいうやつが治める領地で仕事ができれば、きっと頑張れば報われる人生になるのだろうな。
さて暗い話ばかりじゃ気が滅入るぜ、最近はあの二人組と組んでより深い森に入り希少な植物を採取できるようになった、おかげで美味しい物が食えるし、たまには娼館で遊ぶ事もできる。
人生前向きこれが俺のモットーさ。
明日12時に新章をアップ予定です。
以前執筆した閑話 リリィ1 閑話リリィ 2はリリィが主人公に対する恋心の自覚から執着に変わるまでの大きな転換点なので題名を変えました。
閑話 side リリィ (オリバーへの初恋)
閑話 side リリィ 2 (オリバーへの執着)
この後に続く話に絶対必要な話なので入れました。作者は人生はつらい事の連続なのだから物語くらいハッピーエンドでいいじゃない派なのです。ロックには幸せになってほしい。
前にも書きましたが祖父が鋳掛師をやっていました、時代の波に逆らえず溶接工になりましたが、父にも教えたようで父も少し出来ました。叔母の家に祖父が修理した雪平鍋があるそうです。




