閑話 side 母 ヘレナ・アヤノ 母の確実な復讐計画
オリバー君のお母さまのお話です。
この家に嫁いで約20年になる、色々あった。夫に見初められ結婚し、名前はヘレナ・アヤノになった。
私の実家はアヤノ家の遠い親戚筋で小さいながらも武家貴族である。おかげでアヤノ家に自然と溶け込めた。アヤノ家は武家と言えど一流だ、執事やメイドも一流で屋敷内は質素とはいえ武家とは思えないほど華やかだった。
華やかだったのだ、私の愛しい息子が不条理にも地位をはく奪され国外に逃亡するまでは。
息子の偽りの葬儀後、最低限の仕事はしつつも半月は息子の部屋を掃除しながら泣いて過ごしていた。娘のルイには悪いことをした、大好きな兄が出奔してつらかっただろうに、支えてあげられなかった。
もう十分に泣いた、私にできる事をやらないと、ルイは執事長を使って兄を調査している。普段は聡明で思慮深い子なのにハジメの事になると冷静さを失うようね。執事長と言えど家族以外の人間にハジメが生きていることを言うなんて、執事長が裏切るなんて無いと信じましょう。執事長は優秀な人、雇った人間に必要以上の情報は”渡していなかった”。後はルイが暴走しないようにそっとサポートしなきゃ。
夫は、向こうから相談してくるまで放っておきましょう。荒事に関してあの人に勝てる人なんていないから、時々話を聞いてあげればいい。普段は熊どころか羆みたいな人だけど私の前だけではクマさんになる、ちょっとカワイイの。
我が家の家訓の一つにできる事をやれとある。私にできる事をやりましょう、と言っても私のやることは国の為にも家の為にもならない、言わば私怨なのですけどね。夫は「ギフト」のあいつを、ルイは息子に助け船を、じゃあ私は、あの小娘、オリビア・ロッシを地獄に叩き落とす。
夫はある伝手でコウタと言う名のゴミが催眠に近い権能でオリビアを陥れたと聞いて許す気でいるみたい。でも最高位貴族の奥様から聞いたらあいつの権能は”相手の心の隙を突く権能”との事、ダメね、いくら権力があるからって愛人ばかり作って本妻を蔑ろにするからこうやって情報が漏れるのよ。
相手の心の隙を突く権能という事は心に隙があったという事、私の調査によるとオリビアは最初はコウタを邪険に扱っていた、当たり前の話だ。でも甘い、その日の夜にでも親に相談するべきだった。あの子の親なら即対応した。それを怠ったせいで今がある。許せない。
とりあえず、私は奥様ネットワークにそれとなくこの情報を流すわ、オリビア・ロッシは隙だらけの女、隙さえあればすぐに倫理観が緩む女と囀るの。それと若く有望な貴族や豪商があの女と結婚すると我が家を敵にまわすとも仄めかすわ。一生未婚で自領に引っ込むか、性格に難がある年の離れた品の無い男の嫁か愛人になればいい。そしてそんな人の母親はきっと性悪ね、義母にいじめ続けられるといいわ。
そうと決まったら忙しくなるわ、息子の喪が明けてから慎ましいお茶会をするの、たくさん招待状を出さなきゃ。
名前はあえて付けないって言ったけど流石に主人公の家族に名前が無いのは不便ですね。主人公がオリバーとドイツ系の名前にしたので母親もドイツ系のクラシックな名前のヘレナにしました。オリバー君の名前がドイツ系なのは偶然なんですけどね。
アヤノ家の人間は激昂しやすいが、冷静である傾向がありますがヘレナは違うようです。ずっと燻り続けるタイプです。そしてとても情が深いです。体形も細身で茶髪のロングヘアーをヘアゴムでまとめた質素な出で立ちでちょっと目つきが鋭い美人さんです。あれ?誰かに似てますね。しかもオリバー君が無意識に選んだ偽装の為の髪色も茶髪、オリバー君はちょっとマザコンです。
執事長は優秀な人、雇った人間に必要以上の情報は”渡していなかった”・・・奥様は屋敷内を完全に掌握しております。




