表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忽雨  作者: ゆきのひ
三章 変化
24/26

24話 約束

長い通学路、朝日は残酷なほど明るかった。


一緒にコンビニでメロンパンを二つ買った。

「むぐっメロンパンは食べたことあった?」

「ぱくっ...ない。甘い」

「甘いね~」


「メロンは?」

と晶に聞かれて、晴は首を傾げる。


「今、食べてる...?」──「俺は食べたことない」


同時に言って、二人で顔を見合わせる。

それからどちらともなく笑い出した。

メロンパンの中身がメロンでないことを、十八年生きてきて初めて知った朝だった。


「メロン入ってると思ってたの?」

「思ってた」

「ふふっ、本物ちょっと気になるよね」


晶の目を見て頷く。

「いつか一緒に食べてみよう」

───いつかが来る前に、死ぬかもしれないけれど。

未来への賭けとして、自己満足の願掛けとして、約束を沢山増やそうと晴は思った。


晶は笑って頷いた、守れないかもしれないと思いながら。


───


校門が見えた。生徒たちの喧騒か聞こえる。

晴の顔から、すっと表情が消えた。

優等生の仮面。背筋が伸び、目から光が引いた。


晶が手を握った。手をゆるく握り返す。


晶はにこにこの笑顔でみんなに挨拶する。

「おはよう今日はいい朝だね〜」

朝から隣の僕と首を絞め合ったとは誰も思わないだろう。

今日の晶は気分が良いみたいだ。

昨日のことがあったから?それとも朝のこと?どちらが晶を明るくさせているのか分からなかった。

一緒に過ごしていても、晶の深層は掴めない。


───


特に何事もなく6限が終わった


今日は、晶のいじめっ子に対してのかわし方が上手だった。

最初に会話した日のような、妙な安定感がある。少し怖いくらいに。

諦めにも似たその態度は、初めはかっこいいと思っていたが、今はそれが何故だか苦しく感じる。僕とは別の仮面を、僕と同じように被っているような息苦しさがある気がする。

本当の感情が剥き出しになった姿を見たからだろうか。今は、何を思っているのだろう。出会った時からずっと、晶は何かを秘めているように思う。どうして今朝、首を絞めたのだろう。僕は、晶のことを何も知れていない。もっと、知りたい。些細なことも、重くて苦しいことも、全部全部知りたい。全部知って、全部教えて、知らない事なんて無くなれば、本当に溶け逢ってひとつになれる気がするから。その為にも、もう少しだけ一緒に生きて欲しい。


この思いが届くようにと、机の下で晶の手を強く握りしめた。届くはずないのに。

急に握られて晶は驚いたが、すぐに嬉しそうに握り返してくれた。

届いていないなと、当たり前のことを思いながら笑い返した。

僕は晶に出会って頭が悪くなったんだろう、いい意味で。


───


「ホームルームを始めるぞぉお!!来週全校集会で成績優秀者の表彰がある!」

担任が意気揚々と言うと、教室が騒がしくなる。

「でた公開処刑w」「満点じゃないのにねー」「今回はどんな風にお祝いしてあげよっかーw」

クラス中が気持ち悪い熱気に包まれる、逃げられない。

またゴミを投げつけられるのか、ゴミで済むのだろうか。なにより、全校生徒からの気持ち悪い目線が1番嫌だ。逃げられない。鼓動がうるさい、熱い。逃げたい。


───「逃げたい?出なくていいんじゃない」

晶が囁く。その声で心臓が涼しくなって、落ち着きを取り戻した。


晴は首を振った。約束(願掛け)をするために。

「晶、表彰見ててくれる?」

「...もちろん」

「それなら、頑張れる」

「頑張らなくていいのに...」

晶は寂しそうな顔でそう言った。


「晶のために」(本当は自分のためだ)

「それ言われると何も言えないんだけど」

「知ってる」

「いじわる」

「晶にだけだよ」

「っどこでそんなこと覚えてきたの」

「晶」

「....」

「顔赤い、かわいい」

「晴の方が可愛いけどね」

「...」


二人のイチャつきに皆はもう慣れ始めていたが、昨日までよりも明らかに近い距離に、いつの間にか教室は静まり返っていた。あの熱血教師すらも。


「...何か、あったのかぁ?」

「せんせー、セクハラですよ〜」

晶がそう言って、自分の唇に人差し指をあてて笑う。


クラス全員が、何かあったんだなと悟った。


一部の女子は悲鳴を上げ、また別の一部の女子は歓声を上げた。男子は、微妙な表情をしていた。


が、そんな事二人は気にしていない。

ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ