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9、拝啓リヒト様。

拝啓リヒト様


公立の幼稚園

公立の小学校

公立の中学校

公立の高校


などの公的教育機関の設立


宿泊や飲食などのサービス業の専門学校の充実


総合病院の拡大・専門分野の病院の設立

雇用年金制度を作る


女性の管理職登用

冠婚葬祭や戸籍制度の充実

橋や道(歩行者専用レーンを作るなどの)インフラの整備


憲法の改正


前王妃様の減刑


あと別紙が一枚



これは結構な難易度の挑戦状だ。


やってくれるではないか?ハル。

私を本気にさせた礼は必ずさせて貰うよ。

覚悟しておくと良い。


自分の執務室でハルから叩きつけられた挑戦状を握りしめて呟くリヒトの姿が見られた。


この日を境にリヒトは人が変わった様に休日、深夜を問わず仕事をこなす様になった。





その頃ハル改め久乃はギルドの受付嬢に教えられた床屋にいた。先日船の上で髪の毛を自分で切ったから毛先がガタガタでそれを揃えて貰っていたのだ。


そしてマンチェスターを出国した時に船で切り落とした長かった時の髪の毛をカツラにしてもらった。・・・・持っていれば何かの役に立つかも知れないと思ったからだ。髪の毛ってすぐには伸びないしね。


「お客様こんな感じでいかが?」と床屋のお姉さんが、久乃の後頭部を合わせ鏡で見せながら声をかけて来た。うん、中々良い。


「ありがとうお姉さん。これで良いです」と答えカツラのお代と合わせて代金を払った。

カツラは2~3日ほどが掛かると言われ、代金支払い済の書付けを渡された。


そしていつまでも山羊亭にいられない。真剣に住む所を探さないと。一応先ほどの床屋の場所を聞いた時に不動産情報も聞いておいたがどうしよう?行ってみる?悩んでも仕方ない。


ーーーーしかし私は本当に住処が良く変わるのね。


結局は不動産屋でギルドからほどほどに近いアパートメントを紹介して貰った。こじんまりしているが市場や病院にも近かったのだ。


まあ1人だしこんなもんか?そう思いつつ人の良さそうな年配のオーナーと契約を交わした。


部屋のカギを貰い市場に行って生活に必要な物を買った。家具は備え付けだったのでこれには助かった。

今回で結構お金を使ってしまったのでこれから稼がないと。取り合えず明日から活動開始だ。



翌朝、早速久乃はギルドのカウンターにいた。


そして受付嬢のアリスにギルド員の証明のドッグタグを貰った。このアリスは初めてこのギルドに来た時に応対してくれた女性だ。


「久乃、これで依頼が受けられるわよ。早速掲示板を見て見たら?」と掲示板を指さした。


ズラズラ~と並んでいる依頼状。よく見るとAやらSと判子が押されている。どっちかといえば騎士団に相談するほどでは無いが日常生活に支障が出るから何とかしたい。と言った感じの依頼が多い。


ふむふむこれか?これだと私はA以下の依頼を受けられるのね。


やはり要人警護が多い。か。


変わったのは無いかしら?家庭教師?犬の散歩?害獣駆除?


うーむ。


悩んだ末カウンターにいたアリス嬢に相談した。


「うーん、とりあえずはA級貰ったんですよね?それならやはりある程度は強いと見なされるので要人警護の日帰りはどうですか?久乃はギルド初心者で始めたばかりでしょ?いきなり数日間はキツイと思う」と親身になってアドバイスをくれた。


依頼書が貼ってある掲示板をどれどれと見てみると、目に付いたのが『公爵家のご令息(5歳)の地域のお祭りへの参加』の付き添い兼護衛か。


「子供の警護はやはり女性を警護に求める親御さんが多いの。久乃やってみたら?」と勧めてくれたので思い切って依頼を受ける様手続きをした。


「明日の午後から結果が分かるからね。たぶん大丈夫だと思うけど」とアリスが言ったのでこの日はギルドを後にし、街へ食料品を買いに出かけた。なるべく自活して生活費を節約しておきたいし。


市場を回ってだいたい目ぼしい物は手に入れた。ふと生鮮食品の方を見るとたくさんの魚が見えた。波瑠おばあちゃんが魚が好きだったので、久乃はよく調理させられていたのだ。今でも捌くのは出来ると思う。


ここは海が近いだけあって海産物が本当に多い。試しに魚を捌いてもらってその場で食べたが新鮮で美味しかった。ただこの辺りは魚の生食は文化がないのでかなり白い目で見られたけど。もちろん醤油なんて無いので塩で食べた。


ーーーーああ、ご飯ほしいなぁ。お漬物も恋しい。


波瑠おばあちゃん、料理あまり上手じゃ無かったけど、お漬物漬けるのだけは美味かったんだよね。特に梅干しはそこらの市販品より美味しかった。あぁ、食べたいなぁ。波瑠おばあちゃんの梅干し。


・・・・不覚にも涙が出て来た。


買い物した袋を下に降ろすと、袖でグッと涙を拭く。拭き終わると目の前にハンカチが差し出されていた。


「目を擦ったら腫れるよ。良かったら使いなよ」とそう言ってハンカチを差し出してくれたのは、茶髪でハリーに負けないくらいの体格を持つ若い男だった。大きなブラウンの瞳を久乃に向けて不思議そうに見ている。


「ありがとうございます」とハンカチを受け取り涙を拭いた。私、そんなに目立つ泣き方だったかな?


「ちょっと待ってて貰えませんか?」とその男に話すと、市場の中を走って雑貨屋へ入りよく似たハンカチを買い求めた。


「すいませんお待たせしました。・・・・同じのが無くてよく似た物を探したんですが」とさっきの雑貨屋さんで買ったハンカチを差し出した。


「わざわざ良かったのに。でもせっかく買って来てくれたからありがたく戴くね。まあ何があったか知らないけど元気出しなよ」とその男は大事そうにハンカチを受け取った。


「では私はこの先に用事があるので失礼します。ハンカチを貸して頂き本当にありがとうございました」とその男に深々とおじきをすると、買い物した荷物を両手で抱えて久乃は自分のアパートメントに帰った。

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