11、初任務終了
沿道に祭りを楽しむたくさんの人々が集まっていた。ここ2〜3年余り作付けが良く無かったらしく今回は豊作だったようで農家の皆さんだろうか?その表情が明るい。串焼きを買い求めて歩く親子連れ、顔を見合わせ微笑み合う恋人たち。その中を伯爵家の皆さんを乗せた馬車が土埃が立たぬようゆっくりと進んで行く。私たち警護の者も目立たぬ様に後から馬車で追っている。
伯爵家が乗る馬車の前には、同じく警護の2名の手練れの者が馬で先行していた。
あれから警備員達と引き合わされじっくりと打ち合わせを行い、今回の警護内容を教えられた。
どうして警護が手薄になるのかと言うと、伯爵家ご夫婦が祭りの際に領地で行われるイベントの審査員に呼ばれたからだ。何でも領地から選ばれた人たちが歌を披露するイベントが行われ、その間は市場の事務所が待機場として充てがわれる。そこに御子息のルーシェ様と私とあと1名の警備員が付くらしい。
このあと1名の警備員はマックさんと言って30代前半ぐらいのマッチョな方だ。「お嬢さん宜しく頼むよ。」と差し出された手が大きくとても暖かかった。
イベントの事務所でこのイベントの主催者である村の村長からお茶を振る舞われた伯爵夫妻は、イベントの開始に合わせてそのスタッフから審査員席へ着席する様に声を掛けられた。「じゃあ行ってくるわね」と夫人が微笑みながらルーシェ様を抱きしめながら頬にキスをするとルーシェ様も「お父様、お母様早く帰って来てね。」とシュンとしながらお願いしていた。
「じゃあルーシェ様、私と一緒に旦那様方のお帰りを待ちましょう。」とルーシェ様に目線を下げてお話しすると「・・・うん。」と頷いた。
とりあえず持ってきたスケッチブックでお絵描きしながら色々とお話しした。
「お母様のお腹に赤ちゃんがいるの。僕、次の春が来たらお兄ちゃんになるんだ」と言った時のルーシェ様の目がとても可愛らしかった。
結局は1時間半程の時間がたった時に伯爵夫妻が戻って来られた。
「ありがとう久乃さん」と少し疲れた様子で奥様がおっしゃった。「旦那様、奥様お疲れ様でした。」と話すと「本当に疲れたわ。早く屋敷に戻りたいわ。」とこぼされてました。
その後は襲撃なども無く順調に屋敷へ戻り、元の服装に着替えると警備は解散となり、その後無事にギルドに戻った。初めての依頼を無事に終えられた事にホッとした。本当にトラブルが無くて良かった。
次の日の昼、ギルドに顔を出すと「久乃、依頼お疲れ様~。」とアリスが労ってくれた。「うん、ありがとう。初任務無事に終わってよかったヨ!」と親指を立てサムズアップした。
簡単に今回の内容を話し終えるとアリスに「次は考えてるの?」と聞かれた。
「ううん、まだ考えてない。これから依頼を確認しようと思ってた所」と言いながら掲示板に向かった。
「うーん、どれどれ?」と眺めていたがよく分からない。「おい久乃!」と後ろから声がかかった。振り返ってみるとギルド長だ。
「こんにちはギルド長。」とにっこり笑って返事をすると「お前、次の依頼ってもう入れちまったか?」と聞いてきた。
「いえ?まだですよ?」と答えると「あぁ良かった。実は報酬の良いS級とA級の合同任務があるんだけど受けてみないか?うちのS級がパートナーを探してるんだ。
他のA級が今皆出払ってて居ないんだ。久乃良かったら受けてみないか?」とギルド長が頼んで来た。
ここにも結構なギャラが落ちるのかな?そんな事を一瞬考えたが次のギルド長のセリフで心が決まった。
「久乃、もしこの依頼受けてくれたらこの前の防具代をチャラにしてやる。」
「やります!!」
「おい!!はえーな」
「はい、宜しくお願いします!」
「明日の朝9時過ぎにうちのS級が来るよ。その時に顔合わせするからお前も来い」とギルド長は久乃の肩をポンっと叩くと奥へと入って行った。
とりあえず明日の予定が決まったのでアリスに一声かけてギルドを出た。
明日出会うS級ってどんな人なんだろう?一緒に仕事し易い人だと良いんだけど。




