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君に、声を  作者: 桜 寧音
二章 高校生(五月〜)
31/73

3ー3 校外学習

課外学習後。

 課外学習が終わって次の日。普通の授業に戻ってワイワイと昨日の課外学習についてどこどこに行った、楽しかったという内容の雑談がほとんどを占めていた。僕としても久しぶりに会えた人もいたから楽しかったけど、雄大と会っちゃったりして心理的には大分疲れた。

 そんな昼休み。飲み物が欲しくなって食堂に向かおうとすると後ろから声を掛けられた。


「間宮君、飲み物買いに行くの?」


「水越さん。そうそう、飲み物切らしちゃって」


「じゃあ私も一緒に行っていい?」


「いいよ」


 いつもなら水筒に麦茶を入れて持って来ているんだけど、今日はちょっと暑くて水分補給が早かった。水越さんも水分補給がしたいらしくてついてくることを断ったりはしない。

 男女二人で歩いているからか、廊下を歩いていると結構好奇な目線が向けられる。なんでだろうなあ、思春期の高校生だからかすぐに恋愛とかに結び付けるんだから。ただのクラスメイトとか、男女の友情ってものもあると思うんだけど。


 それに例え恋人同士だったとしても、それを揶揄するような目線を向けるのはいかがなものかと。恋人だったらそのまま祝福してくれてもいいのに。

 特に会話もないまま一階の食堂に向かう。食堂の近くに自動販売機が数個置いてある。昼休みは食堂で食べる人や僕たちのように飲み物を買いに来ている人も多い。食堂のご飯も気にはなるんだよなあ。朝にコンビニに寄らなくて済むし。

 お茶を買うと、水越さんは悩んでから野菜ジュースを買っていた。


「お茶なんだ?」


「お茶だね。コーヒーは苦くてあまり好きじゃないし、果物系も気分じゃなかったから」


「男子って炭酸とか好きじゃない?そういうの買うかと思ってたんだけど」


「炭酸もそんなに得意じゃないかな。飲み物なら基本お茶かココアかな」


 この辺りは子役からの習慣かな。出される飲み物はお茶かお水、それにココアか牛乳だったからそれが好みになっちゃった部分はある。差し入れとか水分補給用の飲み物ってほぼほぼ固定だからそれが好みになるというか、味を覚えちゃっていつも手を出すようになった。

 これ子役あるあるで、雄大とかも今やほとんどお茶かお水になってるとか。


「間宮君、ちょっと人のいないところで話さない?」


「いいよ」


 なんだろうか。雄大に関することでも聞かれるのかもしれない。

 雄大とは幼馴染って言っちゃったからな。水越さんは雄大のファンだから小さい頃のことくらいは聞かれそうだ。現場のことさえボカせばなんとでも言い繕えると思う。

 中庭にあるベンチに腰掛けて話す。校舎の影になっていて日陰だから暑くないし、人目にもつきにくい場所だ。


「それで、話って?」


「ああ、うん。確認したいんだけど、間宮君って『間宮沙希』だったりするのかな」


 ……そう来たか〜!当日に何も言われなかったから気付かれていないと思ってたけど、あの時は他の人もたくさんいたから口を噤んでくれたんだろうか。

 結構確信しているような断定口調だった。なら話しちゃってもいいかな。

 社長からもバレちゃったらしょうがないって言われてるし。


「えっと、どこでわかったかな?」


「本当にそうなんだ……。昨日雄大君と仲が良いことにそんなことってあるかなって思って。昨日帰ってから『劇場版源龍伝』を見て、雄大君と一緒にいた子が間宮君そっくりだったから……。顔立ちもあまり変わってなかったし」


 中学一年生の頃に撮影した、子役の頃で考えると末期の作品だ。二年前じゃあまり変わらないか。

 ドラマでも人気のあった作品で、映画にもなった『源龍伝』という作品で僕と雄大は映画だけのゲストで出た。コンビキャラとして二人で出たから映画の中でもほとんど雄大と一緒に映ってたから気付くかぁ。


 エンディングクレジットに堂々と名前は載ってるし、僕の当時の知名度を考えたら気付かれても仕方がないか。昨日軽率に話しかけてきた雄大が悪い。学生服だったんだからちょっとくらい配慮してくれれば水越さんにバレなかったかもしれないのに。

 こういう時は口止めもしておかないと。


「一応そのこと黙っておいてね。もう辞めちゃったから俳優じゃないんだし」


「それはそうだよね。表向きは勉学のために引退って聞いたけど……。もしかして本当は足のせい?」


「そう。走れないし、片腕もまともに動かせないから。身体が動かせないのは俳優として致命的だったから。走れない俳優なんて使い物にならないから」


「アクションとかできないのって俳優としては厳しいよね……」


 水越さんも納得してくれるけど、本当に俳優は動けないと役が一気に狭まる。それも若い俳優が走れないとか、動けて身体を鍛えられる若手がそんな状態で仕事がもらえるわけがない。脚本・監督泣かせにも程があるだろう。


「もう芸能界には戻らないの?あれだけ演技が上手かったんだから何かしらできそうだけど……」


「うーん。これも言って良いかな。今って僕、声優やってるんだよね。まだまだキャリアが浅い新人だけど」


「えっ⁉︎あっ、だから美恵が間宮君にあんな執着してたんだ⁉︎あの子アニメとかゲームとか好きだもんね……。だから二人でよく話してたんだ」


「そうそう。声でバレちゃったみたいで」


「あの子もやるわね……」


 声優ってことを告白してもそこまで問題はなさそうだった。というか僕のことをバラしてもどれだけの人が信じるかもわからない。僕が声優をしているなんてわかる人はアニメとかに詳しい人だけだ。というか、『パステルレイン』を知っている人くらいだろう。それ以外にアニメで代表作がないんだから。


 そもそも声優って職業を知っている高校生がどれだけいるのかって話なんだよね。一般人が見るアニメ映画なんて主演からメインどころまでほとんどを名の知れた俳優さんで固めている。声優なんて全然いないから調べようともしないだろう。

 多分声優やってるよって言っても「へー」で終わりそうだけど。

 冬瀬さんが気付いたのは本当に凄いと思う。水越さんが驚くのも無理はない。絶対ダメ音感ってやつだろうか。


「美恵って全部知ってるの?」


「声優とは知ってるけど、昔のことは聞かれてないよ。知らないんじゃないかな」


「そうなの?美恵にも言わない方がいい?」


「そうだね。声優ってことは知っちゃったって言っても良いけど、子役のことは秘密にしてくれると嬉しいかな。声優の方でも経歴詐称してるし」


「あ、そうなんだ?」


「中学二年生の時に事務所の社長に拾われたってことにしてるから。声優としての経歴しか知らなかったら知らないはず」


「じゃあ話さないよ」


 芸能人って夢を与える仕事みたいなところがあるから、夢を壊すようなことを言われるのは今後の仕事に響く。経歴だけは偽ってるからある意味やましいことだけど、それだってバレなければ大丈夫だろう。

 そこから話さないでほしいことを纏めて水越さんに伝える。全部話してから教室に一緒に帰ると、水越さんに冬瀬さんが突っかかっていた。


「美咲っていつから間宮君とそんなに仲良かったの⁉︎本当にいつ⁉︎」


「カラオケで歌ってた曲あるでしょ?アレ私も好きでさー。話が合った」


「ズルイ!」


「あんたって特撮は全然だからね。その辺りはドラマとか見てる私の方が話のウマが合うかなー」


 なんだかあの光景見たことあるなあ。

 ああ、そうか。

 『パステルレイン』のキララちゃんと優菜ちゃんのやり取りか。優菜ちゃんが綾人君と話していたのを咎める姿を最近見た気がする。それとそっくりだった。


次も日曜日に投稿します。

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