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第13怪 宵闇の宴(文化祭回だよ)

 近頃話題になっているオカルト、「“『世界滅ぼすぞ』おじさん滅ぼすぞ”おじさん」を知っているだろうか。


 海に面した宵ヶ浜市に住む学生の間でささやかれる、都市伝説的存在である。

 なんでも「『世界滅ぼすぞ』おじさん」が現れる前後に、姿を見せるらしい。

 同じ都市伝説的存在の、トゲナシトゲアリトゲトゲを意識したかのような、意味不明な名前だが、突き詰めればただのおじさんであることに違いはない。

 宵ヶ浜の都市伝説は、大体がただの不審者情報であり、今回も相違(そうい)ない。


 ただの不審者っぽい「『世界滅ぼすぞ』おじさん」もちょっと意味が分からなかったのだが、「『世界滅ぼすぞ』おじさん」のライバルキャラとして都市伝説としてささやかれていて、僕には、完全に理解不能な存在であった。


 多分「世界滅ぼすぞおじさん」のお父さんかその辺だろう。


 実際、会いに行ってみたら、本当にお父さんだった。


 彼に詳しく話を聞いたところ、マンション経営で儲けているらしい。さらに、息子である「『世界滅ぼすぞ』おじさん」もマンションを何個か所有している無職であるらしい。

 うらやましい話だ。


 暇を持て余した「『世界滅ぼすぞ』おじさん」は、都市伝説的存在を目指して「『世界滅ぼすぞ』おじさん」活動を始めたらしい。


 暇すぎない?


 一応、周りに迷惑をかけないように配慮しているらしく、普段「『世界滅ぼすぞ』おじさん」の話を聞かされている人たちは、おじさんが雇った役者であるらしい。


 水川(みずかわ)瑠璃子(るりこ)のような、自分から「世界滅ぼすぞおじさん」に話しかける奇特な人物以外に、まるで被害が聞こえてこないのは、そういう理由であった。

 そして、「“『世界滅ぼすぞ』おじさん滅ぼすぞ”おじさん」は、雇われた役者の人たちの案内を行っているため、「世界滅ぼすぞおじさん」が現れる前後に姿を見せるのだった。


 衝撃の真実である。


 父である「“『世界滅ぼすぞ』おじさん滅ぼすぞ”おじさん」は、胡散臭いオカルト研究会|(名義上は文芸部だが)にも腰が低くて、僕はビビったのだが、このことは友人の相模(さがみ)金剛(こんごう)には内緒にしている。


 ****


 文芸部の会報は『宵闇の宴』という。


 本来は宵ヶ浜北高校文芸部の会報なのだが、文芸部はいまやオカルト研究会にジャックされたため、海に面した宵ヶ浜市に住む学生の間でささやかれる、都市伝説的存在をまとめた調査報告書と化している。

 宵ヶ浜の都市伝説は、大体がただの不審者情報なのだが、謎解き要素を含めた旅行エッセイのような文章を面白おかしく書いている。(自画自賛)

 表紙は多恵が書いたので、劇画調の美形少年である。少年といいつつ、これはこの前のコスプレイベントで出会った男装の麗人をもとにしているようだ。


 また、今回発行された『宵闇の宴』には、当然のように薔薇(BL)ととれる内容のマンガが載っている。

 そのため、今回発行された『宵闇の宴』は、一部の愛好家から非常に高い評価を受けているとか、いないとか。

 一応、部活動の会報なので、直接的な表現ではない。


 文芸部は三人しかいないこともあり、文化祭当日は誰かが一人で店番をしている。

 気を使ってくれたのか、朝の込まない時間帯は多恵が店番をしており、いってよし、と言われて、僕と瑠璃子は二人で文化祭を回っている。

 二時間後に交代して、瑠璃子が店番をする。


 僕は瑠璃子と手をつなぎながら、校内を回る。

 男子水泳部の水着喫茶、――当然ながら水着男子しかいない――を冷やかして、嫉妬の目でにらまれたり、漫画研究会で友人の相模(さがみ)金剛(こんごう)にしか見えない住職が怪異を素手でボコボコにするマンガを見つけて二人で笑ったり、お化け屋敷を回ったりした。

 体育館では、ジャーマンスープレックスババアの曲をカバーしているバンドがいた。たまたま文化祭に来ていたババア本人が、喜びのあまり乱入するというハプニングに遭遇した。

 ロックである。


 瑠璃子が店番担当の時間も、僕がクラスの化石展示の店番になっていて別々になった以外は、大体一緒にいた。


 瑠璃子の当番が終わり、最後の二時間は僕がオカルト研究会の店番である。といっても、多恵のファンを含む薔薇愛好家の面々は、この四時間で大方『宵闇の宴』を買ったため、来客はほとんどない。

 たまに来る一般来訪者から五百円を受け取って、『宵闇の宴』を渡す程度である。


 文化祭も残り十五分となり、文芸部部室に訪れる客足も途絶えて久しい。

 瑠璃子が椅子を近づけて座り、もたれかかってくる。


「ね、暇だしチューでもする?」

「しないよ。店番が終わるまでは。人が来たら嫌だし」

「え? 真面目だなぁ」


 瑠璃子が見せつければいいじゃん、と言いながら頬を膨らませているので、指で突っついて時間をつぶした。


 時間ぎりぎりになって男子水泳部所属のクラスメートが買いに来たので、キスしなくてよかった、と思った。

 なお、キスをしていなかったところで、バカップルのイチャイチャぶりと甘ったるい雰囲気はとどまるところを知らないため、男子水泳部員が血涙を流したとは、後で本人から聞いた。

 僕らは完全にバカップルとして学年中に認識されているらしい。


 このあと、悲壮な顔をした男子生徒が、俺だってほっぺたつんつんしたい、と叫びながら文化祭を走り回るという都市伝説が生まれたことは想像に難くない。


 文化祭が終了時刻になり、片付けのために多恵も部室に戻ってきた。残りの作業は余った会報を部屋の隅に移動する程度でほとんどない。

 文芸部の例年の売り上げと、同人誌即売会での経験から、多恵がほぼぴったりの冊数で印刷していたので、会報は残り十冊である。

 家族に渡す用に勇児が三冊、瑠璃子が一冊、多恵が一冊買い、部室の本棚の隅に残りを詰めて、段ボールを折りたたんで縛ったら、作業は終了である。


 各々クラスに戻り、簡単なホームルームを行ったら、文化祭は解散となった。

 一応、生徒会主催の後夜祭はあるが、任意参加である。


 オカルト研究会の面々は後夜祭に参加せず、ファストフード店で簡単な反省会をして解散した。


 瑠璃子を家まで送り、キスをして別れると、勇児の高校最初の文化祭は終了である。

 家に寄るのは瑠璃子の目が怖かったので遠慮した。

 いつものことであるが。


 帰り道で、「『世界滅ぼすぞ』おじさん」を見かけ、声もかけられたが華麗にスルーである。

 無事おうちに帰るまでが文化祭である。


 続く


お読みいただきありがとうございます。

「世界滅ぼすぞおじさん滅ぼすぞおじさん滅ぼすぞおじさん」はいません。


今回の怪異

世界滅ぼすぞおじさん滅ぼすぞおじさん:リッチな男性。息子もリッチ。


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