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マハトロースの傑作!?卒園式を荒らすモノガーン

 春ッ!!それは出会いを告げる季節であると同時に、別れを告げる季節でもある。それは正義にとっても例外では無い。

 「あっと言う間だったわね。この前『幼稚園』に入ったかと思ったら、もう卒園・・・そして、来月には小学生か・・・」

 本日は『卒園式』。正義たちが幼稚園を離れる日である。母・裕子はその会場(幼稚園の体育館的なとこ)で式の時間を待っている間、息子の成長をひしひしと感じ、目がうるっと来ていた。親というものは、子供がすくすくと成長している事に喜びを感じるものなのだ。

 その一方で、時間になるまで教室で待機していた正義は、

 「(ようやく『卒園』か。死んだ時の年齢になるまで、まだまだ先は長いな。)」

 とか思っていた。

 高校生になるまで、あと九年。これを短いと思うか、長いと思うかは個人によって異なるが、とりあえず正義は後者の方。もう一回最初から勉強をし直す事を考えると、だるくてだるくて仕方ないのだ。

 彼がそんな気が遠くなるような将来の事を考え、机に伏してぐったりしていると、式典に相応しい格好をした先生が教室に入って来た。どうやら、卒園式がそろそろ始まるらしい。

 正義は、そのままの状態だと何を言われるか分かったもんじゃあないので、むくりと体を起こした。



 そんなおめでたい式典が行われようとしている幼稚園からずっと離れた所にある廃工場の中で、マハトロースが一人黙々と、魔法陣のようなものを描いていた。いつものようにモノガーンを造ろうとしているのだ。

 やがて、それを描き終えると今度はその上に、いつもの材料(鶏もも肉100g、豚ミンチ100g、牛スネ肉100g)を黙々と並べ始めた。いずれも近くのスーパーで三日前に安く売り出された商品である。更にここでその辺の中華料理屋からくすねて来た『鷹の爪』一つと、その辺を飛んでいた色んな種類の鳥の羽根五枚を追加で設置し、最後に拳一個分くらいの量の粘土のような物質を置いて準備は完了。マハトロースはいつもよりも力を込めて呪文を唱えた。それもその筈、彼はこの所失敗続き。これ以上の失敗は決して許されないのだ。

 そんな彼が『今度こそ』と念じて造ったモンスターは・・・

 「出でよ・・・『モノガーン・グレートホーク』!!」

 「モノグェァアァァーーーーーーーッ!!」

 二階建ての建物くらいはある大きな鳥だった。名前やフォルム的に、恐らく『鷹』がモデルだろう。そして、相変わらず一つ目である。

 「さあ、『モノガーン・グレートホーク』よ。この近くにいる『転生体』を見つけ出し、私の元まで連れて来い!!・・・いいな?」

 「モノグェァアァァーーーーーーーッ!!」

 「あっ!!バッカお前・・・」

 返事をするように咆哮を上げ、そのまま天井をブチ壊しながら飛び立つモノガーン。マハトロースは、瓦礫(がれき)の下敷きにならないように急いで廃工場の敷地から出て行った。

 そして、被害が確実に及ばないであろう所まで走って行き、

 「ふう、やれやれ・・・危うく瓦礫の下敷きになるところだった・・・・・・それにしてもあの力強さッ!!イケる・・・今回こそはイケるぞッ!!」

 と、廃工場の方を振り向いて、モノガーンの出来にガッツポーズをした。

 「モノグェァアァァーーーーーーーッ!!」

 モノガーンが向かっているのは他でもない、正義のいる幼稚園だ。



 一方その頃、正義のいる幼稚園では『卒園式』が始まっていた。

 会場内に敷かれた滑りにくいシートの上に設置されたパイプ椅子に園児たちが座り、園長先生がステージの上の教壇に立って話をしている。『卒園式』といっても、会場の内装や式典でやっている事は小中高の『卒業式』とほぼ同じ。()いて違いを上げるとするなら、『卒業式』よりも早く事が進んでいる事だろう。

 正義はチラチラと壁に貼られている式典の内容を見ながら、心の中でガッツポーズをした。

 「(よし、思ったより早く終わりそうだ。やっぱこういう式典は、短くないとな。これが終わって教室に帰り、先生の話聞いて解散した瞬間ッ!!俺の二度目の幼稚園生活は終了する。)」

 そして、彼は幼稚園生活をこう振り返る。

 「(始め幼稚園児の格好をした時は、うっすらとしかない幼稚園の頃の記憶が蘇り、とても懐かしい感じがしたが・・・なまじ前世の記憶があるが故に、ノスタルジーよりも不自由さの方が目立つ始末。まあ、このサイズでの活動はこの年代にしか出来ない事だから、今の内に狭いところに入ったり、小さい段ボールの中に入る等をして楽しんでおくか。)」

 幼少期の満喫の仕方が斜め上な気もしなくもない正義。話をしている園長先生そっちのけで、そんな事を考えていると・・・

 「モノグェァアァァーーーーーーーッ!!」

 ・・・奴が幼稚園の上空にやって来た。

 「な、何だ今の音・・・いや、鳴き声か?」

 モノガーンの咆哮に保護者席がざわつく。そのざわつき(というか動揺)は、前方の卒園児たちにも伝わり、ほとんどの子の顔色が悪くなってしまった。中には、『不安』を煽るような空気に耐え切れなくなり、泣き出してしまう子も出て来た。

 このままでは、『卒園式』が台無しになってしまう。そう思った司会担当の先生は、

 「み・・・皆さん、落ち着いて下さい。今のは・・・・・・そう、工事です。ドリルか何かの音が響いてしまったんです!!」

 と、必死に声を上げたが、それも無駄な努力だった。

 「モノグェァアァァーーーーーーーッ!!」

 「おい、やっぱりコレ工事の音じゃあねえよ。俺、分かるんだ。だって、その職に就いてるんだからよぉ~。」

 「早く子供達を連れて逃げた方が良いわね。何か嫌な予感がする・・・」

 「中止だ、中止!!」

 もう一度聞こえたモノガーンの咆哮に、保護者席にいる父兄からそんな言葉が聞こえて来る。ここまで大勢でざわつかれては、静めるまでにかなり時間が掛かる上に難しい。卒園式の会場は、最早パニック一歩手前の状態になっていた。

 それは先生たちも同じなようで、

 「ど、どうしましょう・・・この状況・・・」

 と、園長先生の元へ二、三名の先生が不安な顔をして駆け寄っている。

 その一方で、園長先生は冷静だった。どうすればいいのか分からずに戸惑っている先生たちに、てきぱきと指示を出した。

 「とりあえず貴女たちは、何の音なのか表出て調べて来なさい。それで工事とかの音なら、それを保護者の方たちに伝えて御納得頂けた後、式典を再開します。」

 「は、はいっ!!」

 園長先生の指示に、集まって来た先生たちがそれぞれ別の所から外に出る。

 そんな中正義は、一人冷や汗をだらだらと流していた。言わずもがな、例のモンスターが彼の脳裏を過ぎったのだ。

 「(この展開・・・まさか・・・・・・)」

 正義がそう思った瞬間、式典会場の天井をブチ抜いて、モノガーン・グレートホークが現れた。嫌な予感的中!!モノガーンは式典会場に入って来るや否や、

 「モノグェァアァァーーーーーーーッ!!」

 と、大きな咆哮を上げた。

 「うわああああああああああああああ!!」

 「キャアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」

 モノガーンの咆哮を至近距離から聞いた園児たちが、それに負けないくらい大きな声で一斉に悲鳴を上げる。それに続けて、先生と保護者も同様に悲鳴を上げた。

 こうなると、最早『卒園式』どころではない。園児も保護者も先生も、パニックになっていた。その中には、足がパイプ椅子に引っかかったまま逃げ出している人や、他人を突き飛ばして自分と子供だけ助かろうとしている者もいる。モラルとかそういうのは置いといて、みんな目の前のでかい一つ目の鳥モンスターから逃げるのに必死なようだ。

 そしてここで、

 「グルルルル・・・」

 「あ・・・軽くヤバい。」

 正義の目と、モノガーンの目が合ってしまう。これによりモノガーンは、彼を『捕獲対象』と認識。そのまま口を開け、


 バクッ!!


 と、素早い動きで正義を頭から食べた。いや、正確には『噛みついた』、もしくは『咥えた』と言った方がいいのかもしれない。飲み込む事も、噛む事もしていないのだから。

 この光景を保護者席から見ていた正義の母・裕子は、

 「正義ッ!!・・・ああっ。」

 一気に青ざめた顔をして、その場で気を失ってしまった。まあ、目の前で子供が食べられてしまったのだから、無理も無い。

 その後モノガーンは正義を咥えたまま、会場外へ勢い良く飛び立っていった。行き先は勿論、マハトロースのいる廃工場だ。

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