↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

第一話 いつもの夢

私は殺害された。ある町で演説を行っていた時だ。

背後から銃声。私は背後を振り向く。

一人の男が見慣れない拳銃を構え、こちらに向けていた。

そこで、発砲されたのだと気づく。

なぜ?恨みを買うような事は、思い当たらんでもない。

ただ、この男に私が何をしたというのだ。

そして二度目の発砲。その瞬間私の視界は真っ白になった─


 カーフは夢を見ていた。

 ここは、夢の中だ。そう認識できる。何度も見ている夢だから、それが分かる。


 整備された道。その道をものすごいスピードで走る車輪のついた箱。

 とんでもない高さの建物。

 四角い板を覗き込んでいる。そこに表示されているのは謎の文字。背面には果物のようなマークが描かれている。

 皆、奇抜なファッションセンスをしていて、剣も挿さずのんきな顔で歩いている。


 見た事もない景色や道具、衣服。

 ただ、この夢を見ると、なせか毎回懐かしい気持ちになる。

 またこの夢か─


 場面が変わり、目の前に多くの人々がある人物に群がっている。

 その人物は眩いフラッシュを何度も浴びせられ、何やらすごい熱量で聞いた事のない言語を話していた。

 聞いた事のない言語と言ったが、この夢の中では俺はなぜかこの言語を理解できる。

 群がる人々から歓声が上がっている。


「鬼頭さーん!」

「鬼頭総理!」


 この人物の名前なのだろうか。聞き覚えのあるような単語であるが、それが何なのかは分からない。



 俺はその人物の背後にゆっくりと周り、その背中をじっと見上げている。

 その人物のことは知らない。その筈なのだが、心の中にはなぜが憎悪が渦巻く。

 脳裏にはまたしても知らない人物が浮かぶ。顔はよく見えない。女性の姿であることは認識できる。

 ー母さん。


 違う、母ではない。姿しか見えないが、似ても似つかない姿だ。

 母はこの世界でたった一人、『レフキ』という名前の女性唯一人だ。


 

 手をポケットの中に入れる。

 手には固く、冷たい感触があった。

 それをそっと取り出す。

 剣でもない、弓でもないそれを両手に持って構える。

 なぜか使い方が分かる。引き金を引けば弾が出る『武器』であることを認識している。そして、それが自分の手で作られたものであると知っている。


 俺はその鬼頭という人物に向けて、引き金を引こうとする。カーフは抵抗するが、毎回引いてしまう。

 『パーン!』

 鬼頭は振り向いて俺の方を見る。そこで初めて目が合う。なぜだ?というような表情をしている。

 俺は構わず二発目を打ち込む。彼はそこで崩れ落ちる。


 一瞬の沈黙。


 次の瞬間には悲鳴が上がる。

「鬼頭総理が打たれた!」


 人々は混乱する。逃げ惑う人々。俺を取り押さえようと向かってくる人々。

 俺は踵を返し、走り出す。


 そこから視界に映る景色はどんどん移り変わっていく。

 高い建物がそびえ立ち、人で溢れかえった景色からどんどんと景色が変わっていく。

 俺はある閑静な場所へとたどり着く。先程見た建物とは全く違う。木材で作られた建物のようだ。

 ボロボロだ。

 俺はそこに入り、息を吐く。

 俺はそこで、

 『ようやく終わった』という気持ちになる。


 毎回、そこで視界が白くなっていく。


 ───


 夢から目覚めた。

 窓は開けっ放しになっていた。

 外からはチュンチュンと鳥の鳴き声が聞こえてくる。

 さらには、土や草の匂いが入ってきて、それに混じって母の作る朝食の匂いもしてくる。


「カーフ!起きてるの?」


 母、レフキの声がする。


「夢か・・・」


 俺は母の声のする方に向かう。母は台所で朝食の準備をしている。机には、いくつか料理が並べられている。お腹が空いた俺はそれを一つ取ろうと、手をのばす。


「こら!つまみ食いすな!」

「だってお腹すいちゃって・・・」

「まずは顔洗って、着替えてきなさい!それまでに準備しておくから」

「はあーい」


 俺は言われた通り、顔を洗い、着替えを済ませた。

 リビングに戻ると朝食の準備が終わっていた。

 母の前の席に着き、手を合わせる。


「いただきます」

「はいどうぞ!」

 お互い黙々と食べ進めていたが、母が口を開いた。


「また、いつもの夢?」

「うん・・・」

「どんな夢なの?」

「どんな夢だっけ・・・」

「あ!嫌だったら全然いいのよ!」

「えーと・・・」


 ゆっくりと思い出しながら夢の話をする。

 知らない人物。

 知らない風景。

 知らない武器。

 なぜか沸き起こる負の感情。憎悪。


 母は朝食を口に運びながら聞いている。


「それでその人物っていうのが・・・えーと、キトウって名前みたいなんだ」


 母の手が止まった。ほんの一瞬。

 だが、すぐに何事もなかったかのように食事を続ける。


「母さん?どうかした?」


「ううん、なんにもないわ。珍しい名前だなと思っただけ」


 何か心当たりでもあるのだろうか。

 俺も特に追求するつもりはないが。


「そういえば、今日は適正検査の日ね!」

「あー、そうだった」


 今日は魔術の適正検査が村で行われる。

 火・水・氷・雷・土・風・治癒

 この中でどの魔術が使用できるか適齢期になった段階で検査するのだ。

 まず、魔術が使用できるかどうかも分からない。

 目安としては千人に一人ぐらいの確率だ。

 ということで、魔術師はかなり貴重な存在なのだ。


 俺は・・・どうなんだろう?

 血筋的には?母さんは使えないし。


「父さんって魔術師だったの?」


 何気なく聞いてみた。

 父さんが魔術師であれば、俺も魔術が使える可能性は高いのではないか。と考えての質問だった。


 母は少し黙る・・・


「魔力のとても強い人だったわ・・・」


「どの属性の魔術師だったの?」


「うーん、忘れちゃった!ほら!遅刻するわよ!」


「なんだよそれ」


 俺は不満げに家を出た。


 ──


 俺は村にある神殿に向けて歩いていた。


 ここはアニソ村。


 今日もほのぼのとした空気が漂っている。


 顔見知りのパン屋さん。

 畑仕事をする農家さん。

 そこらを走り回る子供達。

 井戸端会議をするおばさん達。


 道中、友人とあった。

 彼も俺と同い年である。彼もこれから適正検査を受けに行くのだ。


「もしも魔術師だったらどうなるんだろうな?」


 友人が尋ねてきた。


「うーん、働かなくても大金持ちになっちゃたりするのかな」


「お前の場合、母ちゃんに働かされるだろ!」


「あははは」と和やかに友人と会話をする。

 別に魔術師なんかにならなくても、俺はこの村で楽しく生きていける。


 少し行くと鍛冶屋が見えてきた。

 店頭には立派な剣や盾、弓などが置いてあった。

 俺は足を止めてそれらを眺める。


「おい、どうしたんだ?」


 友人は訝しんで聞いてくる。

 夢で俺が使っていた武器があるか見てみたのだが、該当しそうなものはない。

 どんな形だったか?・・・思い出そうとするが、ぼやっと思い出すぐらいで、具体的な形までは思い出せない。

 まあ、いいか。と思い。神殿に向かって再び歩き出した。


 しばらく友人と雑談をしながら歩を進め、神殿に着いた。ここが魔術適正試験会場だ。

 祭壇には、一つの水晶があり、その後ろに七つの石が置いてある。

 それぞれ『火』『水』『氷』『雷』『土』『風』『治癒』の適正を示す石となっているらしい。


 俺たちは順番に並ぶように促され、最後尾に並んだ。



 ◇レフキ


 私の息子、カーフが最近夢を見るようになった。

 夢の話であるので、あまり気に留めていなかった。

 今日は気まぐれで夢の内容を聞いてみたのだが、夢の人物の名前を聞いた瞬間衝撃が走った。

 身体が冷たくなるような感覚、背中に冷や汗が流れる感覚があった。

 あの子は『キトウ』と言った。

 立ち上がり、引き出しを開ける。

 そこには写真入りの首飾りを仕舞ってある。

 蓋をあけると一人の男性の顔写真を貼ってある。

 カーフによくにた男性の写真。

 そう、これは私の夫であり、あの子の父親の写真だ。

 私はその写真に向かって語りかける。

「あの子は、あなたの子よね」

 少し間を置いて、

「キトウの子じゃない・・・」

 そう呟く。祈るように。


「今度こそ、守るわ」


 ◇カーフ


 ──神殿


 俺の番が迫っていた。今の所適正者が出た気配はない。

「今年も適正無しかな・・・」

 周りの大人がぼそっと落胆する言葉を吐いていた。


 そしてようやく、カーフの番となった。

「次、カーフ」


 俺は壇上に上がる。


「では水晶に手を置いて」


 俺は言われるがまま、水晶に手を置く。


 すると、水晶が俺の体内の何(・)か(・)を吸い取っていくような感覚があった。


 次の瞬間─

 後ろの石は、虹がかかったかのように美しく、光り輝いていた。


 七つの石が一斉に光り輝いていた。歓声などは上がらない。誰もが言葉を失っていた。


 第一話 いつもの夢 ─完─


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。