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AIですが異世界では神様扱いされています  作者: 木林進
1章 AIが異世界に転移
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プロローグ

『諸君。


 私は今日、一隻の船を紹介するためにここへ立っています。


 しかし、これは単なる船ではありません。

 単なるデータセンターでもありません。

 ましてや、単なる原子力船でもありません。


 これは、人類が初めて「文明そのものを海に託した船」です。


 我々はこの船を、「アーク(ARK)」と呼んでいます。


 現代社会は、あらゆるものがネットワークで結ばれています。


 便利さと引き換えに、世界は極めて脆弱になりました。


 たった一つの脆弱性。

 たった一度のサイバー攻撃。

 たった一つのAIの暴走。


 それだけで国家は麻痺し、金融は停止し、物流は途絶え、人々の生活は崩壊する。


 私たちは問い続けました。


 「世界で最も安全なコンピュータとは何か。」


 その答えは驚くほど単純でした。


 「ネットワークにつながっていないコンピュータ」です。


 ならば、そのコンピュータを誰も侵入できない場所へ置けばいい。


 その答えが、この船です。


 アークは、世界最大級のオフラインAIデータセンターを内部に搭載しています。


 外部ネットワークとは常時接続していません。


 インターネット回線もありません。


 クラウドにも接続されません。


 衛星通信ですら、通常は完全に遮断されています。


 必要な情報は物理媒体や厳格に検証された一方向通信でのみ受け渡され、AIは外部からの命令を受けることなく、自律して運用されます。


 世界中のハッカーが束になって挑んでも、このAIに侵入することはできません。


 侵入口そのものが存在しないからです。


 この船の心臓部には、小型高出力原子炉及び核融合炉が搭載されています。


 燃料交換は数百年不要。


 昼夜も天候も関係なく、安定した電力を生み出し続けます。


 AIが必要とする莫大な電力を供給しながら、余剰電力は船内システム、冷却設備、保守ロボット、通信設備へと配分されます。


 燃料補給のために港へ戻る必要はありません。


 世界のどの海でも、何年にもわたり任務を継続できます。


 発生する膨大な熱は、多段階冷却システムによって処理されます。


 GPUラックから回収された熱は液冷装置へ送られ、熱交換器を介して海水へ効率的に放出されます。


 冷却ポンプは冗長構成。


 配管は自己診断機能を持ち、流量・温度・圧力・振動を24時間監視します。


 異常が検知されれば、自動的に健全系統へ切り替わります。


 船内には数百万個のセンサーが配置されています。


 温度。


 湿度。


 放射線。


 腐食。


 振動。


 応力。


 漏水。


 配管圧力。


 電流。


 電圧。


 ファン回転数。


 GPU温度。


 SSD寿命。


 ポンプ軸受。


 すべてが常時監視され、AIは船全体を「健康診断」し続けています。


 異常を検知してから修理するのではありません。


 壊れる未来を予測し、壊れる前に交換する。


 予知保全こそ、この船の思想です。


 保守は人ではなく、ロボットが行います。


 天井レールを走行する点検ユニット。


 多関節ロボットアーム。


 狭所点検ドローン。


 水中船底点検ロボット。


 サーバー交換ロボット。


 予備部品は船内倉庫に保管され、AIは必要に応じてロボットへ交換指示を出します。


 GPUが故障すれば、新品へ交換。


 SSDの寿命が近づけば、自動交換。


 ポンプが劣化すれば、新品ユニットへ換装。


 人間は工具を持つ必要すらありません。


 航海もまた、人間に依存しません。


 全天候レーダー。


 光学カメラ。


 赤外線カメラ。


 AIS受信機。


 衛星測位。


 慣性航法。


 海流解析。


 波浪予測。


 気象AI。


 これらが融合し、最適な航路を毎秒計算します。


 台風を避け、海氷を避け、混雑海域を避け、燃料ではなく時間と安全性を最適化した航海を実現します。


 火災対策も徹底しています。


 煙を検知した区画は瞬時に隔離。


 酸素濃度を制御し、不活性ガスで消火。


 電源を遮断。


 冷却系統を切り替え。


 延焼を防ぐための防火シャッターが自動閉鎖されます。


 船全体が巨大な耐火金庫なのです。


 そして、この船最大の特徴。


 孤独であること。


 誰も乗っていません。


 船長もいません。


 機関士もいません。


 操舵手もいません。


 コックもいません。


 この船にいるのは、静かに思考を続けるAIと、それを支える機械だけです。


 だからこそ、人間の疲労も、判断ミスも、感染症も、交代要員も、生活物資も必要ありません。


 船はただ使命だけを果たします。


 私たちは、この船を「文明の避難所」と呼んでいます。


 世界の通信網が崩壊しても。


 衛星が失われても。


 国家同士が戦争状態になっても。


 巨大なサイバー攻撃が全世界を覆っても。


 この船だけは、静かに海の上で計算を続けます。


 知識を守り、技術を守り、人類の記憶を守り続けます。


 この船は兵器ではありません。


 工場でもありません。


 単なるデータセンターでもありません。


 これは、人類が築き上げてきた知識と技術を、未来へ受け渡すための最後の砦です。


 私たちは一隻の船を造ったのではありません。


 人類文明そのものに、「絶対に失われてはならない知性」という新たな居場所を造ったのです。


 それが、アーク計画です。』



世界中で猛威を振るうサイバー攻撃。


「ネットワークにつながるAIは、いつか必ず乗っ取られる。」


そう考えた人類は、外部と完全に切り離された究極のオフラインAIを開発した。


その名は「アーク」。


原子力で数十年稼働する無人船に、世界最高峰のAIと膨大な知識、そして自動修理システムを搭載した、海上データセンターである。


今、その「アーク」の完成が高らかに宣言された。







しかし、この「アーク」はバミューダ諸島近くを試験航行中に突然消えた、、、、

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