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死に場所を選んだ元ヤクザ、異世界で片足の貴族令嬢の右腕と左腕として仕える  作者: COOH
この世界で

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6/28

魔法

8/1

プロローグ以外の話(特に二話目)をだいぶ加筆&修正したので、興味ある方は読んでくださると嬉しいです。

レティシアに追いついて、俺は練習場所へと案内された。

案内されたのは先ほどまでいた施設の裏で、耕された小さな畑と、干された洗濯物が並ぶ裏庭だった。

畑は家庭菜園の延長程度の広さで、洗濯物の量はそれなりに多い。

つまり、この場所には俺たち以外にも多くの子供たちが暮らしている事を表していた。


しかし、今はその子供たちの姿が見えない。

その疑問を胸にあたりを見回すと、レティシアから問いを投げられた。


「ソーマは、魔法についてどれくらい知ってる?使った事とか、感覚的な何かを感じたことはある?」

「正直、ほとんどわかりません。できれば、基礎から教えてほしいです」


余計な嘘は不信を招く、そう判断して正直に答えた。


「そうよね……。じゃあ、魔力についてから説明しようかしら」


そう言ってレティシアは、俺の両肩にそっと手を置いた。

彼女の手は温かいが、その温度とは違う何かが、次の瞬間俺の内側で目を覚ます。


「――ッ!?」


その瞬間、体の奥を何かが巡っているのを感じた。

血液の流れに似ている。だが、それよりも濃く、重く、熱い。

一度意識すると、それは全身をくまなく走っているのがはっきりとわかる。

魔力――これが、そういうものなのか。


けれど、その熱に混じって、それよりも異様なものがあった。

刻印のある左手。

そこだけは、まるで別の生き物のようだった。

全身を巡る流れとは無関係に、左手の刻印から黒い何かが静かに蠢いている。

脈を打ち、それはまるで皮膚の下でうごめくように。

それは熱でも冷たさでもなく――生きた影の感触だった。



「どう、感じられたかしら?」

「……はい。体の中を、何かが流れてるのを感じました」



できるだけ平静を装って答える。

左手のことはあまり言わない方がいい。

そう直感した。


「そう。それが魔力。生き物の体内には必ず流れているものよ。全身を回るようなもの……血液みたいなもの、と言えばわかりやすいかしら」


レティシアは俺の肩から手を離し、軽く腕を組む。


「でも、流れているだけじゃ魔法は使えない。魔法を使うには、その魔力を“意識して集める”工程が必要」


そう言って彼女は、俺の手のひらを取って上に向けさせた。

その白い指先が俺の掌を軽く叩く。


「ここに魔力を集めるイメージをして。水を手のひらに集めるみたいに――溢れないように、そっと。力任せじゃなく、丁寧にね」


言われるまま、意識を集中させる。

体内を巡る熱を、手のひらへ。流れを逆らわせるように。

だが、やってみると想像以上に難しい。

意識した瞬間、熱は逃げる。押し込もうとすれば、余計に散っていく。


「……っ、ぜんぜん、集まらねぇ」


思わず息が漏れる。


「最初は誰でもそうよ」


レティシアは微笑む。その声には、諦めではなく不思議な確信があった。


「大切なのは“力づくじゃない”ってこと。魔力は生きてるの。押し込めば反発する。だから、撫でるように、優しく手を引いてあげるの」


優しく――撫でるように。

眼を閉じて深呼吸をして、もう一度意識を沈める。

……そして、その瞬間。

掌に、かすかな熱が集まり始めた気がした。


最初は気のせいだと思った。

けれど、確かにそこに“重さ”があった。

空気が震えているような、圧のような感覚。

恐る恐る目を開ける。

そこには、掌の中心にかすかな光が生まれていた。


「……できた?」


目を凝らすと、手のひらの上で淡い光が揺れていた。

火ではない。水でもない。

ただ、魔力そのものが凝縮した小さな粒。


それでも、俺には十分だった。


「……うん、上出来よ」


レティシアが頷く。声は穏やかで、少しだけ驚きを含んでいた。


「初めてでここまでできるのは、正直すごいわ。一日かかって感覚すら掴めない子だっているのよ」

「……ありがとうございます」


照れくさく感じながらも感謝を伝える。

その言葉に、胸の奥で熱が膨らんだ。



「――へぇ、すげぇじゃねぇか」


振り向けば、扉の影にカイルが立っていた。

口元にニヤつきを浮かべ、興味津々の目をしている。


「これが魔力か……」


初めて目にする魔力に、興味津々な様子で見つめる。


「これなら餓死する前に食い物にありつけそうだな」

「……その前にお前が働け」


俺は苦笑しながら、光を手のひらでそっと散らした。

集めた魔力は霧のようにほどけ、空気に溶けていく。


だが、消えたあとに左手の奥が微かにうずく。

まるで、「次は俺の番だ」と囁くように。


――影が、魔力を欲している。


その感触に、小さなざわめきが残った。

レティシアはそんな俺の表情をちらりと見て、柔らかく笑う。


「今日はここまでにしましょう。無理をすると、魔力は暴走するから。ソーマなら、なおさらね」


最後の一言に、心臓が跳ねる。

何も言えず、ただ息を吐いた。


「丁度カイルも来たし、次は二人ともできる魔力で身体を強化する方法を――」


相棒も来たことで、レティシアが新たな魔力の使い方の説明を始める。



――暴走。



レティシアの説明中も、その言葉だけが耳の奥でしつこく反響していた。




カイルと相棒の使い分け方困ってるのでごっちゃに感じる部分があるかもしれません。

ご了承ください。見つけ次第直します。

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