ブレイブフォン 第11話
ピックを目指して旅を続けていくのである。ブブはミルとレイアの2名とブレイブナンバーを交換することができたのが、その内レイアの番号はブブが不正に入手した物で、容易に呼び出せるものではなかった。実質交換できた者はミルのみということだ。
ブブがブレイブタウンを出発して三時間…、ブブはカレッジシティを目指して、まずはその途中にあるモスヴィレッジという小さな村へと向かい、サザンウインド平原を歩いていたのだった…。
第2章 登場人物
ブブ「はぁー、もう大分歩いたなぁー。確かモスヴィレッジの村はそんなに遠くないはず…。昼過ぎ頃には着けるかなぁ」
ブブが今目指しているモスヴィレッジはブレイブタウンからそう遠くない所にあった。だが交通機関が全くないこの世界では徒歩で向かうしかなかったため、モスヴィレッジに行くにも半日近くは掛かってしまうのであった。ミルカウロスやブレイブニルの馬車を使えば一時間程で着くのだが、あいにくブブはお金をほとんど持ち合わせていなかったために利用することができなかった。因みにミルカウロスはこの地域原産の牛のことで、ブレイブニルとは世界中に生息が確認されているが、数が非常に少ない馬のことである。青い身体に水色のたてがみで、走るスピードはこの世界に生息する馬の中でもトップクラスであり、買おうと思うと一頭5000万以上はする。
ブブ「くそぉーー、前にカレッジシティに行った時はお金があったからブレイブニルの馬車で一飛びだったのに…。歩きだとモスヴィレッジに行くのにもこんなに時間かかるのかぁ〜」
ブブはこれまで2回ほどカレッジシティにまで行ったことがあったが、何れもブレイブニルの馬車を利用したので一日程で到着していた。一回目は限定仕様のトランプフォンを買いに行った時で、この時は今までの貯金をはたいて馬車を利用した。2回目は“ジャッジメント・オブ・カレッジ”の決勝大会の時で、この時は大会運営者が馬車を手配してくれたので料金は掛からなかった。
ブブ「こんなペースで旅してて、ブレイブピックになんて出れるのかなぁ〜。やっぱりどこかでお金を調達しないとなぁ〜。モスヴィレッジで少しバイトでもしていくか。確かブレイブフォンの所有者限定のバイトみたいなのがあるんだよね。それをやればお金が入るだけでなくブレイブピックへの出場の近道になるとか。確かそんなようなことが説明書に書いてあったはず…」
この惑星ブレイブの世界にはクエストと呼ばれる特殊な仕事が存在する。クエストとは一件の仕事ごとに依頼者、雇用者、仕事の内容が違い、依頼者と雇用者が直接契約する仕事のことである。依頼者とその依頼する仕事の内容に制限はなく、雇用者の資格や制限、そして報酬などは全て依頼者が決めることが出来る。
ブブ「確かその町や村に設置されている電子掲示板から仕事を検索して、そこから直接依頼主に連絡を取って、ちゃんとした契約をするんだよね。そういえば母さんがよく魔物の討伐とか貴重な素材とか採ってきて小遣い稼ぎしてたっけ」
クエストはその町ごとに設置された電子掲示板から検索することができる。この世界では町ごとに電子掲示板が設置されており、クエストだけでなく住民への連絡なども電子掲示板で行われていた。
ブブ「よーし、僕もバンバンクエストをこなしてお金を稼ぐぞ〜。ついてにクエストでどうやってブレイブピックに出れるようになるのかも調べてみようっと」
レイアがクエストを利用してお金を稼いでいたことを思い出すと、ブブは意気揚々になってモスヴィレッジへ向かい強い南風が吹くサザンウインド平原の街道を駆け抜けて行った。サザンウインド平原とはその名の通り強い南風の影響によって世界で有数の大草原地帯となった平野のことで、風になびかれて草花が波打つ海のように見える壮大な風景を見に観光客が訪れる程だった。ブブは壮大な風景の中を正面から南風を受けてとても気持ち良さそうだった……。
ブブ「はぁ、はぁ。もう駄目だ〜、足が痛くて走れない〜。気持ちいいからって向かい風に向かって走るじゃなかった」
調子が上がってつい走り出したブブだったが、向かい風の中を全力で走ってしまったために30分も経たずに力尽きてしまった。その場に倒れ込んでしまい、乾いた喉を潤そうと水を求めていた。
ブブ「くっそー、考えてみれば水も持たずに旅立してしまってたんだ、僕」
今日のために準備をしてきたつもりだったブブだが、実際は水も食料も、そしてお金も一切持たないまま旅にでてしまった。小さめのリュックの中にブレイブフォン以外で持ってきた物は、いつも大事にしているトランプフォンと、昔マーシー川の河原で拾った綺麗な水晶玉だった。直径2センチほどの大きさで、拾った時に不思議な輝きを放っていたことから宝物にしていたため、ペンダントにして首に下げていた。後はレイアに渡された救急セットとこの辺りの地図だけだった。
ブブ「あー、どうしよう。このままじゃあ力尽きて死んでしまう…。そうだ、こういう時こそミルを呼び出して水と食料を持ってきて貰おう。でもこんなことで呼び出してたらまた怒られ…、あっ!」
力尽きて倒れ込んでいたブブの目に、何やら休息所の様なものが目に入ってきた。円形の建物で、屋根は傘の様な形をしていた。そこまで広くはなく、直径7メートルの程の広さだった。ブブは取り敢えずその休息所に入ることにした。
ブブ「よし、取り敢えずあそこに入ってみよう。それからどうするか考えようっと」
ブブはなんとか立ち上がり休息所の中へ入っていった。中はシンプルな作りで、円形になっている壁際に椅子が備え付けられており、中央には給水器が設置されていた。それを見たブブは早速給水器で水を飲むことにした。
ブブ「“ゴクッ、ゴクッ”…ぷはぁ〜、なんだこの水、凄く美味しいぞ。…なになに、南西にあるアイテール霊山から引いている天然水です…だって。道理で美味しいわけだ」
アイテール霊山とは雲を突き抜けて天まで届くと言われている山地のことで、サザンウインド平原の南西に位置している。大草原の中で特異的に起伏となっていることから霊山と呼ばれるようになった。実際その地形は世界でもかなり特殊で、皆神聖な場所としてあまり近寄らなくなっている。
ブブ「はぁ〜、水飲んだら何だか安心して眠くなちゃった。少しここで寝ていこうっと」
乾いていた喉を潤すことができて安心したブブは、つい眠くなっていまい休息所の椅子で眠り込んでしまった。円形の壁際に沿っていたために、背中を猫のように丸くして寝ていた。ブブはそのまま一時間ほど起きなかった…。
ブブ「うっ、うーん…。もう食べられないよ〜、むにゃむにゃ…」
休息所ですっかり眠ってしまっていたブブは、大好きなサンドイッチをお腹一杯食べる夢を見ていて、幸せそうな寝言を言っていた。ブブはそのまま起きる気配はなかったが、急に大きな音が鳴り響き、ブブは目を覚ました。
“プォーーーーーーン”
急に大きな汽笛のような音が鳴り響き、ブブは慌てて休息所の外に出た。するとそこには草原の向こうから走ってくる黒い汽車の姿があった。
ブブ「あ、あれはブレイブエクスプレスじゃないか!。通ってるところを見られるなんてなんてラッキーな。トランプフォンで写メ取ろうっと。ついでに“ジャッジメント・オブ・カレッジ”のスリープにでも設定しようかな」
この世界には交通機関がないと言ったが、実はブレイブ協会が唯一運行する鉄道機関があった。それがブレイブエクスプレスである。ネットワーク技術と違い、やはりほとんど発展しおらず、ブレイブフォンの技術等と比べると未だに蒸気機関を使っているとかなり見劣りする。しかも運行本数も極わずかで、停車駅も各主要都市にしか置かれていない。この辺りで言うとカレッジシティぐらいしか停車駅がなく、当然ブブの住んでいるブレイブタウンには駅はない。しかも乗車料金がかなり高額で、一回乗るのに数十万はかかる。そのため利用しているのは一部の上流階級のみである。一部ではブレイブ協会が自分達の移動手段として配備したのではないかと噂されている。
ブブ「う〜ん、まだ距離がちょっと遠いからよく撮れないな〜…。あっ!、あそこに踏切が設置されてる。よし、あそこまで行けば通り過ぎるところを目の前で撮れるぞ」
ブレイブエクスプレスの写真を撮ろうとしていたブブだったが、回り大草原に囲まれているため、線路に近づくことができずちゃんと撮影できないでいた。折角だから近くで撮りたかったブブは、街道の先に踏切があるのを見つけ、そこでならよく撮れるだろうと汽車が通りすぎる前に急いで走っていこうとした。だがその時ブブの背後の草むらから異様の声が聞こえてきた。
“ガルルルルルゥーーー”
ブブ「な、何だ」
ブブが声に反応して振り向くと草むらから何やら黄色い目の様な物が光り、そこから急にブブに向かって何かが飛び出してきた。ブブがとっさに後ろに下がって避けると、そこには小さな猫の様な猛獣がいた。
ブブ「こ、この猫みたいな魔物は…、確かペイルキャット!」
ペイルキャット、この辺りに多く存在する猫のような魔物のことで、かなり攻撃的ではあるがそれほど強い魔物ではない。剣術や武道の心得があるものなら楽に倒せてしまう魔物だろう。
ブブ「よ、よし。この程度の魔物なら大したことはない。ミルを呼び出せば楽に倒してくれるはずだ」
ペイルキャットを目の前にしたブブは、ミルを呼び出そうとブレイブフォンを取り出した。そしてミルの電話帳の画面を開き、転移ボタンを押そうとした。だがボタンに指が触れる寸前ブブは急に考え込みそのまま止まってしまった。
ブブ「…どうしよう。本当に大丈夫なのかな…。もし呼び出す途中で事故とか起きたらミルの命にかかわるんじゃあ…」
ブブはブレイブフォンの転送機能を使ってミルを呼び出そうと思ったが、本当にちゃんと呼び出せるのか怖くなってしまい、ブレイブフォンの画面を開いたまま固まってしまっていた。実際今までブレイブフォンによる事故は起こったことはないが、ほとんどの人が人を転送したことなどないため、ブレイブフォンに選ばれた者は大体怯えてしまい、なかなか転送機能を使うことはできなかったのだ。
ブブ「…やっぱりやめとこう。もしミルの身に何か起きたら嫌だし…。でもかと言って僕の実力じゃあペイルキャットにも勝てるかどうか…」
ブブはミルのことが心配になって呼び出すのをやめてしまった。だがブブには戦闘の心得が全くなかったため、魔物の中でも危険度はかなり低く、大人の男性で恐らくほとんどのもが倒せるであろうペイルキャットにも怖気づいてしまっていた。
“グルルルルルゥー”
小さい体とは相反してペイルキャットの鳴き声はまるで獰猛な虎のようだった。ペイルキャットは腰を低く落とし、頭を下げて今にも再びブブに飛びかかろうとしていた。
ブブ「うぅ〜…、このままじゃあペイルキャットに食べられちゃうよ。……よし!、こうなったら…」
追い詰められたブブは街道をモスヴィレッジの方へと振り返り、一目散に逃げていった。ブブが逃げ出すのを見るとペイルキャットは怒りだしブブの後を追いかけていった。
ブブ「早く逃げろ〜、でないとあいつに追いつかれちゃう…。っていうかあいつ追ってきて…」
“ガウッ、ガウッ”
ブブ「思いっきり追ってきてるーーーーー!」
全速力で逃げていたブブだったが、後ろを振り返ると凄いスピードで追ってきてるペイルキャットの姿があった。弱い魔物ほど一つの獲物に執着する傾向があり、ペイルキャットも何が何でもブブを逃がしたくなかったようだ。
ブブ「どうしよう〜、このままじゃ追いつかれちゃうよーーー。……んん!、あれは…」
“プォーーーーーーーン”
ペイルキャットで追いつかれそうになって気動転しそうになっていたブブに、先程のブレイブエクスプレスとその線路と踏切が見えてきた。ブレイブエクスプレスはまだ踏切を通過しておらず、ちょうどブブが踏切に差し掛かる時に通過するかどうかというところだった。
ブブ「あ、あれは、ブレイブエクスプレスとその踏切…。そうだ、あれを使えばペイルキャットを振り切れるぞ」
ブレイブエクスプレスとその踏切を見たブブはそれを使ってペイルキャットを振り切ろうと考えた。ブレイブエクスプレスが踏切を通過する寸前にブブが踏切を通り抜ければその後のペイルキャットはブレイブエクスプレスに阻まれてブブをおって来れなくなる。もうその作戦しかなかったブブは最後の力を振り絞って踏切へと走った。
ブブ「あ〜、このままじゃあ間に合わないかも…。急げ〜」
ブレイブエクスプレスが踏切を通過するのにブブが間に合うかどうかはまさにギリギリといったところだった。もし間に合わなかったら逆にブブがブレイブエクスプレスに阻まれてペイルキャットに追い詰められてしまう。そうなったら勇気を振り絞ってブレイブフォンでミルを呼び出してみよう。そんなことを考えている内にブブと踏切との距離がもう10メートルを切るところだった。
ブブ「げ〜、よく考えたらこのままだと下手したらブレイブエクスプレスに跳ねられちゃうかもしれないじゃん。やっぱりミルを呼び出して…。ってうわ〜、ペイルキャットももうすぐそばまで来てるじゃないか〜。これじゃあ呼び出してる間に襲われちゃうよ〜」
ペイルキャットはもうブブのすぐ背後にまで迫っていたために、ブレイブフォンを開いてミルを呼び出す時間もなく、ブブは踏切を走り抜けることを決意した。
ブブ「…もうこうなったら覚悟を決めて走り抜けるしかない。……南無三!」
ブブは思わず“南無三!”っと意味は良く分かっていないがドラマやアニメ等で良く坊さんが口にする言葉を力を込めて発声した。恐らく仏にもすがる思いだったのだろう。
ブブ「うぉ〜〜〜〜〜〜」
恐怖を振り払うためにブブは大声で叫びながら踏切を突っ切っていった。当然遮断機は下りていたため、ブブは走ってきた勢いに任せてそのまま遮断機を飛び越えようと思いっきりジャンプした。あまりの恐怖に反対側の遮断機のことを考えず、空中に浮いている途中で目を瞑ってしまい、そのまま着地と同時にまた全力で走り出してしまった。普通ならもう一つの遮断機にぶつかってしまうはずだが、ブブはそんなことはお構いなしに街道を突っ切って草原の中を走っていった。なんとブブは最初の遮断機を飛び越えたと同時に反対側の遮断機も飛び越えてしまっていたのだ。ブレイブエクスプレスは上りの車線と下りの車線が全く別のルートに分かれていて、この踏切は一車線しかなかく、それでも踏切の幅は5メートル程はあったのだが、これまで全力で走ってきたこともあって、ブブの走り幅跳びは非常に美しく、その飛距離は8メートルをも超える程だった。そのためブブが着地したところは反対側の遮断機の遥か向こうだった。当然ペイルキャットは踏切の前に取り残され、ブレイブエクスプレスに阻まれて、悔しそうにブレイブエクスプレスによって真っ黒に遮られた向こう側を見ていた。
“ガルゥ〜〜……”
ペイルキャットは気を落としたような声を上げて自身が出てきた草むらの方へと帰っていった…。
ブブ「うぉ〜〜〜〜〜〜〜〜」
無事ペイルキャットを振り切ったブブだったがそんなことには全く気付かず、未だに目を瞑ったまま大声を上げてサザンウインド平原の大草原の中を突っ走っていた。もうすでに街道からは大きくそれてしまい、回りを見回してもどこが街道か分からないほど草原の奥深くまで来てしまっていた。それでも止まることを知らないブブだったが、その勢いは急に草むらを突っ切った先に現れた川によって止まることになった。
ブブ「うん…?。…!、う、うわぁ〜〜〜」
“ドッボーーーーン!”
ブブは勢いよくその川に落ちてしまった。幸いにもこの川はそう深くなく、川幅も10メートルもないくらいだった。マーシー川といいこの辺りの川はどれも水深が浅くなっているようだ。そのおかげで溺れる心配はなかったが、川底にお尻をぶつけてしまい、ブブは痛みで暫く川の中で立ち上がれないでいた。
ブブ「くっそーーー、な、なんだ一体…。うん…、なんだか冷たいぞ。ってここ川の中じゃないかーーーー!」
ブブは今まで自分が川に落ちたことに気付いてなかったのか、少し落ち着いて川の水の冷たさを感じ辺りを見渡すと川えあることに気付き、慌てて立ち上がった。
ブブ「あっ、やばい!。大事なトランプフォンが濡れてしまう。一応防水加工は完璧にしてあるから大丈夫だと思うけど…、あとそうだ、ブレイブフォンも確認しとかなくちゃ…」
川に落ちてしまったことで自身の持っている機械類の心配をしたブブだったが、あろうことかブレイブフォンのことよりトランプフォンの心配を優先してしまった。まだブレイブフォンに愛着が沸いていなかったため、仕方なくもないが、やはりブブはまだブレイブフォンに選ばれたことへの自覚が足りないのかもしれない。
ブブ「ふぅー、良かった。トランプフォンもブレイブフォンも無事だ。それにしても何なんだ、このブレイブフォン。水を弾くどころかブレイブフォンの回りの空間だけ水が入って来てなかったぞ」
この世界のネットワーク技術は凄まじかったために、当然それらをサポートする防水加工の技術もかなり発達していた。そのためブブが自ら防水加工をしたトランプフォンはもちろん、昨日貰ったばかりもブレイブフォンも特殊な防水加工がしてあり、当然何の損傷もなく無事だった。しかしブレイブフォンの加工は防水というより、衝突やそれによって生じる衝撃など、ありとあらゆるものを防ぐバリアのような物だった。ブブのその性能を目の当たりにして非常に驚いていた。
ブブ「やっぱりこのブレイブフォンは凄いな…。…おっと今は川から出てなんとか街道に戻らないと…。っていうかもう街道なんて全然見えないや。一面草だらけだよ。どうしよう……うんっ!」
ブレイブフォンの性能に驚いていたブブだったが、今は街道に戻ること優先し、なんとか街道に戻ろうと辺りを見回した。一面草だらけで街道など全く見えなかったのだが、川の方を見てみるとかなり遠くだが小さな橋のような物が見えた。恐らく100メートルほど離れていただろうか。
ブブ「よーし、あの橋の方へ行けば街道に出られるだろう。…っということはこの川沿いに歩いて行けばいいのか。…はぁ〜、びしょ濡れで気持ち悪いけど…、街道出てからどうするか考えるか。どこかにまた休息所でもあればいいんだけど」
橋を見つけたブブはあの橋に向かって歩けば街道にも出られると思い、水に濡れてびしょ濡れになってしまい重たくなった体を引きずりながら川沿いを歩いて行った。更に隣の綺麗な川に見とれていたのか歩くペースはかなり遅くなっていた。
ブブ「…それにしても綺麗な川だな〜。マーシー川に負けずとも劣らないや…。やっぱりこの川もどこかでマーシー川と繋がってるのかな〜。…あっ、ブレイブユが跳ねた。やっぱりこの川にもいるのか〜」
ブレイブユとはアユ科の魚のことで綺麗な水であれば世界中のどの川にも生息しているこの世界の代表的な魚だ。この魚がいることが水質を綺麗に保てている証拠でもあったので、この世界の人々はブレイブユが生息する川になるよう皆心掛けて川を清潔に保っていた。食用としてもかなり美味しく、近くの川にこの魚が生息することは住民にとって重要な幸せのバロメーターともなっていた。
ブブ「あ〜〜、久しぶりに食べたいな、ブレイブユ。昔よく父さんが釣ってきてくれたっけ…。そうだ!。モスヴィレッジに着いたら釣竿を買おう。そしたら川の魚を食料源として旅が出来るぞ…。…おっ、名案が閃いたと思ったらもう橋に着きそうだぞ。街道も見えてきたぞ」
そうこうしている内にブブは無事街道へと出られたようだ。だがブブはこの道がモスヴィレッジへ続いているものかどうか分からなかった。走ってきた方角的に恐らくこの道で間違いないのだが、ブブは一応地図を取り出して確認することにした。だが流石に地図は先程川に落ちたせいで濡れてしまい、ヘナヘナになってしまいページを開こうとすると破れてしまった。
ブブ「…もう仕方がない。こうなったらこっちの道に進もう。いくらなんでもちょっと走ったぐらいで道が分かれてることもないだろうし…」
地図で確認できなかったがブブは自分の勘を信じてこの街道を進むことにした。ブブが歩いていた街道はモスヴィレッジまで一本道であったためそんな心配をする必要はなかったのだが、目を瞑って走り回ったせいでブブは少し不安になっていたようだ。
ブブ「うーん、あとどのくらいでモスヴィレッジに着くんだろう。さっき夢中で走り回ったせいで感覚がおかしくなっちゃった。…って、うん!。あれは休息所じゃないか。しかもさっきのやつよりしっかりしてる。…というかほとんど宿屋みたいだな。まぁいいや、あそこでこの濡れた服をなんとかしようっと」
橋を渡った先の街道を歩いていくと、再び休息所の様な建物が見えてきた。今度はかなりしっかりした建物で、2階建てで宿屋のようだった。だが人がいる気配はなく…、どうやら昔宿屋だったところを休息所として使っているようだ。なにはともあれ今のブブにはありがたいことだった。
ブブ「ごめんくださーい…。誰かいませんか〜…。誰もいないみたいだな…。宿屋みたいだったから誰かいると思ったのに。あっ、2階へ続く階段が木板で塞がれてる。もう宿屋として使ってないみたいだな。ラッキー、だったらお代もいらないから思いっきり休んでいこうっと」
宿屋に誰もいないことが分かるとブブはこれは幸いだと思いびしょ濡れになっていた服を脱ぎ捨てた。そして部屋の端にあったタンスを開き、中からバスタオルのような大きい布を取り出し、体に巻いた。どうやら定期的に誰から整備しているようで、タオル等も補充しているようだ。
建物は2階建てで、2階へと続く階段は木板で塞がれてる。一階は広いロビーの様な造りになっており、宿屋と使われていたときのままなのだろう。部屋の中央を囲むようにソファーが配置されていて、その真ん中には大きめのテーブルが置いてあった。受付として使われていたであろうテーブルの向こうには、冷蔵庫と、隣の戸棚にはいくつかの食器が置かれていた。ブブが冷蔵庫の中身を確認すると、中には水といくつかのジュースが入っていた。ジュースがあることに驚いたブブは自分の大好きなアップルジュースがあることに気付き、隣の戸棚のコップと共にテーブルへと持っていった。
ブブ「いや〜、ジュースまで置いてあるなんてこの休息所は凄いな〜。?ゴクッ、ゴクッ?…ぷはぁ〜。…でもこの濡れちゃった服はどうしよう。…そういえば外に物干し竿みたいなのあったな。よし、それに干しておけば今日は天気もいいし一時間ほどで乾くだろう」
ブブはジュースを飲んだあと脱ぎ捨てた服を外にある物干し竿に干しに行った。今日は快晴で日差しが強く、心地のいい風も吹いていたので恐らく一時間もすれば乾くだろう。服を欲し終わったブブは再び休息所に戻り、ソファーに横なり、服が乾くまで寝ることにした…。今日2回目の昼寝だが、やはりブブにとって朝早くの出発はきつかったのだろう。ソファーに横になるやいなやすぐに眠ってしまい、また暫く起きることはなかった…。




