第55話 陸海空人馬
大変お待たせいたしました。安心してください、続けますよ。
ハリポタ祭りで忙しく、また苦情を受けたりと凹みそうになります。
そして新しいことも始めようとしているので時間が足りねえ!
でも引きこもったり無職だった頃に比べて充実した時間を過ごせています。
ニュースも暗い話ばかりです、だから今の内に迷惑掛けない範囲でやりたいことはやり尽くす勢いでいます。
更新頻度が怪しくなっていますが、私を変えてくれた救世の暗黒勇者は絶対に終わらせます。
まだ言いたいことも全然書けてないですからね!
陸に地竜、海に海竜、空に飛竜。
三種三様の亜竜が俺達を取り囲んでいる。
――いわゆるピンチって奴じゃないでしょうか。
「シャーリーは俺とアルヴィナとで一気にドレイクを倒すぞ!
エリザとメリーはシーサーペントを!
アンナとグレースでワイバーンをけん制しててくれ!」
エリザは凍らせる水魔術が得意だし、メリーも多彩な攻撃でシーサーペントに有効打を与えられるだろう。
一方、空を飛ぶワイバーンに関しては中々手を出しづらい。アンナのクロスボウとグレースのドルイド魔法で妨害に徹してもらう。
その間に俺とシャーリーとアルヴィナでドレイクを一気に叩き、数を減らしていく作戦だ。
シャーリーとアルヴィナと共に、ドレイクに向かって走り出す。
デカいが魔獣の迫力には負ける。
「グオオオオオオオオオォォォォォ!!」
どデカイ咆哮を上げられ、シャーリーの狼耳がへたり込む。
いきなり一人を無力化されてしまった。
彼女の聴覚へのダメージが回復するまでアルヴィナと二人で抑え込む!
「そらっ!!」
勇者の剣で横っ腹を斬りつける。
堅い鱗を削るが肉には届かない。
竜の子孫とだけあって手ごわそうだ。
俺の前に白い影が舞い踊り、ゴオオォンと鈍い音が響き渡る。
アルヴィナのポールウェポンがドレイクに直撃したが、肉が厚いせいか決定打になっているようには見えない。
だがさすがに身体を揺らされてドレイクは怯んでいるようだ。
「ふっかああああああああつ!! おらあああああああああ!!」
聴覚が戻ったシャーリーが双剣を構え突っこんできた。
アルフォンス師匠の教えが叩き込まれたおかげかナイスタイミングだ。
交差した双剣が切り払われる。
「――ぐうっ!!」
思いっきり鼻先を斬りつけたが弾かれた。
ドレイクの目がシャーリーに集中する。
視野が狭くなっている今がチャンスだ。
俺とアルヴィナで攻撃を加えようとするが――
「ギイイイイイィィィィィィ!!」
好機と捉えたのは俺達だけではなかったようだ、空中から迫ってくる奴が居る。
「クロウ、ごめん! 抑えきれなかったわ!」
「クロウ様、私の茨に捕まらないやつなんて久々だわ。気をつけて!」
ワイバーンだ。
アンナとグレースの二人でさえ手こずる空の亜竜が俺達を狙っている。
ドレイクとワイバーンのデミドラゴンサンドイッチとか冗談じゃない。
「構わない! ドレイクの方を攻撃してくれ、ワイバーンは何とかする!」
四人でぼこぼこに袋叩きにしてくれれば俺が抜けても倒せるだろう。
俺は勇者としてワイバーンを相手する!
「パパー! メリーの攻撃ぜんぶよけられちゃう!」
「クロウさん! 何とか持たせていますが過信はしないでください!」
どうやらシーサーペントの方も中々上手くいってないようだ。
奴は闇魔法を身体をくねらせて回避し、時折海の中に潜って姿を消している。
エリザが海を凍らせて範囲を狭めているが、本人の言うとおり任せっぱなしには出来ない。
「私は向こうの支援に回るわ」
「分かった、頼んだぞ」
支援の矢の雨を降らすアンナがシーサーペントの対処に回ってくれるとのこと。
完全に安心は出来ないがそれでも心強い。
さすが賊妖精いちの気配り屋だ。
アンナとグレースが持ち場を変え、俺は上空のワイバーンを睨む。
皆から離れたところまで連れて行き戦うことも考えたが、あまり意味は無いかもしれない。
空を旋回する相手な以上、下手に離れていると味方が襲い掛かられたとき助けられないからだ。
「手ごわいわねえ、クロウ様みたいだわ」
ワイバーンへの注意を怠らないようにしながらドレイクの方を見やると、グレースが茨で雁字搦めにしていた。
少し余裕が出てきたのかいつもの軽口が飛んでいる。
「っと!!」
ワイバーンが急降下してきた。
狙いは俺のようだ。
避けたら仲間に被害がいくから受け止めるしかない。
「! アルヴィナ!」
剣を構えていたらドレイクを相手していたはずのアルヴィナが横入りしてきた。
ポールウェポンを思いっきり振り抜き、ワイバーンの鼻っ柱を折りにいく。
「グギャアアアアアアァァァァァ!?」
真正面からぶつかり合ったせいか、さすがにダメージが通ったようだ。
ごぎぃという嫌な音を響かせてワイバーンがもだえながら空に戻っていった。
「アルヴィナ、助かったがドレイクの方は――平気そうだな」
「…………」
茨まみれのドレイクはシャーリーが獣化してぼこぼこに殴っていた。
「おらあああああああああああああぁぁぁぁぁぁ」
反撃する暇も与えないようだ。
拳がもはや残像を残すレベルで繰り広げられている。
シャーリー百烈拳だ(勝手に命名)。
「死すべし敵を封じ込めよ――〈墓石の棺〉」
グレースが地の魔術を唱え、ドレイクが石碑のような岩に閉じ込められていく。
いくら亜竜といえど、あれを耐え切るのは厳しいだろう。
名前通り、魔術によって生み出された石碑は奴の墓石や石棺となった。
「万物凍てつくす冷たき王よ、今ここに氷の世界を創り給え――〈絶対零度〉」
エリザの一際長い詠唱が終わったかと思うと、見える限りの海が凍りだす。
南の島ともいえる場所なのに北極とでもいうべき氷海と化していた。
さすがの海を自由に泳ぎまわるシーサーペントでもこれは逃げ切れない。
ワイバーンが再び急降下を始めた。
「……来い」
迫り来るワイバーンを見据え、剣を構える。
ごんっという鈍い音を立てて衝突。
俺はワイバーンに対して体積では遥かに劣り、押されかねないが勇者パワーで踏ん張る。
剣を思いっきり奴の眉間に突き立てた瞬間、俺はニタリと悪い笑みを浮かべて魔力を漲らせる。
「喰らえ!!」
闇属性の魔力を纏わせた勇者の剣はまるでバターを切るかのようにすっとワイバーンの肉に入り込んでいく。
ワイバーンの頭は魚の開きモノのように真っ二つになった。
ワイバーンの力が抜けていき、ずうぅぅんという音を響かせながら倒れていく。
空を舞う厄介な魔物を初めて相手したが、タイミングを間違えなければどうとでもなることが分かった。
「大分お堅い人だったけど、そこまで大したことなかったわね♪」
「暑い……死ぬ……」
シャーリーとグレースの方を見ればドレイクが紙を丸めたかのような、肉団子状態になっていた。
そりゃあれだけ大きな岩に押しつぶされれば当然だ。
シャーリーも暑い中でよくやってくれた、体を動かして余計熱を帯びてしまい大の字でぶっ倒れている。
「さすがの亜竜でもここまで凍りつかせれば倒せますね……」
「やったねアンナ!」
「メリーもいい動きしてたじゃない」
シーサーペントも凍り付けになっており、もう生きてはいまい。
エリザは魔力を消費しすぎたせいか、顔に疲労の色が浮かんでいる。
アンナとメリーもよくけん制してくれたものだ、仲良くハイタッチしているのが微笑ましい――口に出したら子供扱いするなってアンナ怒りそうだけど。
「今、子供を見るような目で見なかった?」
「イイエ、ミテナイデス」
アンナさん鋭すぎませんか。
「倒した亜竜たちを調べておきましょう、今後の戦いがスムーズになるかもしれません」
「そうだな、だけどエリザはシャーリーと休んでていいぞ」
「……そうですね、そうします」
海一面を凍らすほどの魔力を消費したからな、冷静沈着な顔が崩れかけている彼女には休んでもらっておく。
「メリーはアルヴィナと辺りを警戒な」
「はーい!」
……? なんか嬉しそうだな。
まあやる気があるみたいだし、いいことだ。
「アンナとグレースは俺と亜竜たちの検分な」
「分かったわ」
「喜んで♪」
メリーと違いアンナは不機嫌そうだ。
別にグレースと比べるとかじゃなくて単純に二人の知識を借りたいだけだからね?
まずはドレイクだ。
といってもぺちゃんこになってるから調べるも何もないと思うのだが。
「多分三種のうち一番鱗が堅いわね」
「残ってる鱗もあるぐらいだしその通りね、私の〈墓石の棺〉に耐えるぐらいだから相当よ――降り注ぎたまえ、〈雨の放水〉」
アンナの意見を肯定し、超局地的な雨を降らす水の魔術で綺麗にしてからグレースが鱗を拾い上げる。
鈍く輝いている。
勇者の剣でやっと削れるレベルだから相当だろう。
魔獣に比べればそれほどの相手でもないが、堅さに限っては今まで戦ってきた奴の中で上位に君臨するのではないか。
こいつの先祖である、絶滅したはずの竜なんかが出てきたら苦戦するかもしれないな。
「人食いみたく口も脅威だけど、尻尾も中々凶悪だったわね」
「側面攻撃が理想だよな」
「私は相手してないけど、この手の奴は目を狙うといいわ」
アンナさんえげつねえっす。
地上にいるからといって戦いやすい訳ではない、ドレイクはそのことを意識させられる相手だった。
「はい、手繰り寄せられたわ」
グレースに氷が溶けて沈みかけていたシーサーペントの死体を茨で引っ張ってきてもらう。
島亀に乗っていた時は海の藻屑になったし、調べてる余裕もなかったからいい機会だ。
「大きいわね」
「ご立派ね♪」
意味深な感想はやめましょうね。
特にグレースは絶対狙ってるだろ。
「遠巻きに見てても攻撃してても分かってたけど、やっぱりそんなに堅くはないわね」
アンナがシーサーペントの鱗を触りながら言う。
あまり堅すぎたら身体をくねらせて泳ぐのが困難になるからだろう。
「問題は海中に潜まれたらどうやって対処するかだな」
「クロウが飛び込めばいいのよ」
「さすがの俺も海中戦はキツいぞ」
「クロウ様なら大丈夫よ♪」
さすがの勇者様でも水の中を自由に動けるほどチートではないぞ。
あとグレースがウインクしながら言ったせいで、アンナからいちいちアピールするなオーラが立ち上り始めた。
さっさと次行って不穏な空気を続かせないようにしよう、そうしよう。
「ドレイクほどじゃないけど堅いわねえ、それを切断するなんてさすがクロウ様♪」
「皮膜も中々丈夫だわ、天幕に使えそうね」
ワイバーンの検分を始めたが、なんかもう攻略法じゃなくて素材の活用の話になってないかアンナ……。
グレースも俺を褒める材料にしないの!
「空を飛ぶ奴は本当に厄介でしかないわ、クロウみたく引き寄せるのは感心しないけどその手か対空武器で倒すしかないわね」
アンナに眉をひそめながら言われる。ごめんなさい、でも魔獣に比べたら無茶じゃないから許してください。
「……空を飛べるって自由で良さそうね」
「グレース?」
「なんでもないわ、クロウ様」
なんだかグレースの声色がいつもと違っていた。
どこか哀愁が入り混じったそれは彼女の心を表しているような――
(パパ! なにかたくさん近づいてくる!)
(! 今そっちに行く!)
メリーから急に念話が入った。
新手の魔物かもしれない!
休憩場所に戻るとエリザとシャーリーは既に復活していた。
アルヴィナはポールウェポンを構えている。
向こうに敵対する意志がある証拠だ。
「クロウ、途中にいた馬みたいなやつの匂いがする!」
「確かに聞こえてくる音もアレの走っていた音と一緒だわ」
アンナとシャーリーの索敵によるとどうやら麒麟モドキが近づいてくるらしい。
しかし、彼らは無害な生き物とアンナが判断したはずだ。
ジャングルの中から麒麟モドキたちが現れた。
だがそれは初めて見た姿とは異なる。
背中に角を生やしたトカゲのような存在が乗っていた。
各々が槍を持ち、ぎろりとこちらを睨んでくる。
「この者たちが……」
エリザが彼らを見て呟く。
きっとそうだ、彼らは――
「――竜の島に住む種族」
目的とする種族に出会えたが彼らは敵対の意思を持っている。
亜人なのか、はたまた過激な種族なのか。
睨み合いはまだしばらく続きそうだ。




