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救世の暗黒勇者(リメイク前エタ)  作者: 墨沼
第三章 南の森と海で鳥と魚は歌う
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第50話 大海鯨ケトゥス(1)




巨大な怪物黒鯨――大海鯨ケトゥスが数多の牙で大烏賊クラーケンを無残に食い殺す。

魔獣と魔物の怪獣大決戦を見届けていた俺達だったが、なんとか我に返った。




海豹人セルキーたちは戦えない人魚ローレライ鳥人ハーピーたちを守れ!!

ただ数人はアレ(・・)を用意してくれ!!」


近くにいたセルキーに指示を出す。

ほとんど全員がビビっていて戦いにならないだろう。

シンガは最後見たとき堂々としていたが、内心はどうだかは分からない。

リーダーが怖れてしまえば恐怖は部下に伝達してしまうからな。



「勇者殿!」


ハーピーたちの長ニコトエアが俺の下まで飛んできた。


「伝令が間に合ったようだな! 我々が海原を飛んで警戒していたら急にクラーケンと……魔獣のマナと言えばいいのか? 

ともかく突然沸いてきよった!」


どうやらニコトエアたちが発見してピテュエスまで伝令を飛ばし、俺の方まで話が回ってきたらしい。

今回は良かったが、変に中間挟むと情報伝達が遅れそうだ。

まあ一番早くローレライの長の耳に情報を入れなきゃならないんだろうけど。



「多分あいつはこっちに向かってくる! 俺らが奴を倒す!」

「了解した! 我らハーピーがそれまで囮を! その後は伝達役を承ろう!!」



彼らを呼び寄せるサインを決めてから、ニコトエアが飛び立つのを見送る。

女性陣に向き直ると、全員が真剣な面持ちだ。



「クロウ、魔獣を倒す主力はあなただから私達が全力でサポートするわ」

「私はクラーケンとの戦いの手筈通り、海面を凍らせましょう」

「ぶん殴るぞー!!」

「いいとこ見せちゃうからお嫁さんの件考えてくださいね、クロウ様」

「パパ、メリーがんばるからね!!」

「…………」


女性陣は自身の実力を弁えているがケトゥスと戦うと宣言してくれている。

とても心強い味方がいるので、俺も負ける気がしなくなってきた。



「行くぞ!!」




ハーピー数人がケトゥスの囮になってくれている。

彼らの恐怖は甚大なものだろう。

一秒でも早く準備を終わらせなければ。


セルキー達がやってくる――魔物狩りに参加しなかった彼らやハーピー、ローレライ達で作ってもらった対クラーケン用の木製のソリを数人で運びながら。

海で戦う以上、乗り物は必要だ。

そしてイカダのように海面に浮かべるのではない、水属性魔術を――氷の魔術を得意とするエリザの出番である。



俺と女性陣が乗り込むとエリザが詠唱を開始する。




「凍てつけ氷河の如く――〈冷たき川(フロストグレイシア)〉!」




海面に一直線の氷の道が出来上がる。

寒獄氷河コキュートス〉の下位魔術だが、それでもとんでもない凄さだ。



「そおうれっ!!」


後ろからセルキーが押してくれてソリが滑り出す――エリザが作った氷の道を。

ボブスレーの如く凄まじいスピードで巨大鯨に接近していく。



「もっと右!!」

「おうよっ!」


目のいいアンナが先頭に座り、進むべく方向を示してくれる。

俺とシャーリーの二人で舵を力強く操りソリの進む向きを変える。

そして海面をエリザが再び凍らせて道を作る。




「勇者殿が来てくれたぞ! 今より囮から伝達役に移る!! 各員離脱せよ!!」


ニコトエアが俺を確認すると、他のハーピー達に撤退を指示する。

遠巻きに飛んでいる方がずっと安全だろう。




巨大な黒い壁が迫ってくる。

肉食獣の如く瞳が俺らを捉え、巨大な口が開き丸太のように太い牙が幾重にも並んでいる。



「グオオオオオオオオン」



巨大な鯨の声が響き渡る。

シンガの大声を遥かに超える凄まじさ。

びりびりと空気が振動し、全員が思わず耳を塞ぐ。

耳のいいアンナ、その次にいいシャーリーは見せられないぐらい凄い顔になっている。




「「〈闇の砲撃(ダークカノン)〉!!」」


いち早く立ち直った俺とメリーでダブル〈闇の砲撃〉をケトゥスにぶち込んでやる。

ところが――



「効いてないわクロウ様……」


グレースが言うように俺にもダメージを負わせたようには見えない。

マナや魔力の流れが見える〈啓視の魔眼(ダアト・アイ)〉を持つ高貴なる森妖精(ハイエルフ)の彼女が言うなら確実だ。



「グルオオオオオオオオオオン」


どうやら怒らせただけのようで、ケトゥスがこちらに向かって突進してくる。


「エリザッ!!」

「任せてください!」

「私が茨で勢いを削ぐわ!」

「メリーも〈影の拘束(シャドーバインド)〉するー!」


勢いよく方向転換させる。

ケトゥスが起こした波で氷の道が揺らぐが、何とかバランスを保てている。

すぐ後ろにケトゥスが迫ってきたがアルヴィナが渾身の一撃を放ち、怯ませる。

エリザが氷の道を作り、グレースのドルイド魔法とメリーの闇魔法がケトゥスを雁字搦めにする。どうやらグレースの茨は海底からも生やすこともできるようだ。

アルヴィナがポールウェポンで後方の氷を叩き割り、その波紋によって波が生まれ、流氷の如く凍った海面をうねらせることで推進力を得る。



「今よ!」

「メリーの力みせてあげるんだから!!」



ケトゥスの正面に対してソリの側面を向ける位置をとり、すぐ攻撃を避けられるようにしておく。

アンナがタイミングを計り、メリーの新技が炸裂する――




「――〈落ちた卵は粉々に(ハンプティダンプティ)〉!!」




メリーの手には黒い卵が握られていた。

それを放物線を描くようにケトゥスに投げつける。



ぐしゃりとぶつかり、ただ単に割れたかと思われたソレは――




「グオオオオオオオオオオオオン!?」




割れた黒い卵の殻がケトゥスに刺さりまくる。

まるで手榴弾だ。

しかもメリーは次々に作っては投げ、作っては投げている。


ケトゥスの頭部は瞬く間に卵の殻の破片まみれになった。



「すごいわ!! 中身の闇属性魔法が、殻が刺さって出来た傷に染み込んでる!」


グレースの感嘆を聞きよく見てみると、確かに割れた卵の中から黄身ならぬ黒身が出てきている。

ケトゥスも黒いから分かりづらかったが、単なる手榴弾ではないということだ。



「私も加勢するわよ!!」


アンナも鏃に魔蟹カルキノスの毒を塗った矢をクロスボウに装填して放つ。


「私の愛の鞭を喰らいなさい♪」


グレースも海中から生やした茨でケトゥスを滅多打ちにする。

エリザは氷の道を作るための魔力を温存、アルヴィナとシャーリーは周りに他の魔物がいないか警戒にあたっている。



「待て、何かおかしい」


ケトゥスの様子を注意深く観察していたが、何かひっかかるものがあったので全員に声掛けする。

どうも何か力を溜めている気がする。



――! 酔っ払いが吐き出す直前のような姿勢をとり、俺は慌てて指示を出す。


「全速力で進め! 何かしてくる!」


シャーリーと二人で思いっきりソリを方向転換、

エリザが海面を凍らし、

アルヴィナが叩き込むことで波紋が生まれソリが進み、

アンナやグレースが警戒に当たり、

メリーは黒い卵を投げ続ける。


一方的に攻撃されていたケトゥスが、待ってましたとばかりに口を開いた。




放たれたそれは目に見えない衝撃波。


暴風か? いや違う。


びりびりなんてもんじゃない、ばりばりと雷が落ちたかのような轟音。


音速で俺達のいた場所を通り過ぎたそれは――




音の振動だ。

奴はとてつもなく濃縮された大声を、一直線に吐き出してきたのだ。




――ズゴオオオオオオオオオオン!!!!!――




ようやく聴覚が戻ったと思ったら轟音がした。

何かと振り返れば、奴の濃縮声の向かった先にあった崖が木っ端微塵に破壊されてるではないか。


これにはさすがに俺もメリーもエリザもグレースも呆気にとられた。

アンナとシャーリーは未だに耳鳴りと戦っている。



「パパ!」


メリーの声で我に戻り、ケトゥスがこちらに向かってくる姿を確認した。

巨体が接近してくることで、海が二つに割れるんじゃないかってくらい波だっている。



「グレース! シャーリーの代わりに舵とるの手伝ってくれ!」

「んもう仕方ないわね、ちゃんと結婚考えておいてね♪」


エリザが再び〈冷たき川〉を放って道を作り、アルヴィナが推進力を生み出す。

すぐそこまでケトゥスが迫っている!



「あぶねえっ!」



危機一髪といったところか。

なんとかギリギリ避けることができた。

ケトゥスの生み出した波はアルヴィナの生み出した推進力と比べるまでもなく巨大で、氷の道が危なっかしく揺れる。


「わりぃ、完全にあの声にやられてた……」

「気にするな、俺らより耳がいいんだからさ」


シャーリーがようやく復帰した。

今度こそ活躍すると息巻いていた彼女は、動けなかった自分に対し歯噛みしているのだろう。

アンナは未だに苦悶の表情を浮かべているのでもうちょっとかかりそうだ。



「すぐに次を撃ってこないとなると、連続しては使えないみたいですね」


うねり狂う氷の道を進むのに舵をとりながら話し合う。

俺もエリザの推測通りだと思う。


……よし、こうなったらいつものアレしかねえ。



「俺がアイツに乗って勇者の剣を突き刺しまくるから接近してくれ」

「そんなのダメ! 危なすぎるわ!!」


いつの間にか復帰したアンナが反対してくる。

だがこのままだとひたすら追いかけられるだけだ、そうなると不利なのはエリザが魔力切れして機動力を失うこちらである。

それにシャーリーとアルヴィナは前衛だから攻撃できないし。


「……分かりました、クロウさんの案で行きましょう」

「エリザ!!」

「危険なのは分かるけど、私は勇者のクロウ様ならなんとかしてくれると信じるわ」


思いのほか意見は一致するエリザとグレースの票を得る――こんな時でも火花散らしてるけど……。


「アタシも賛成する、こちらから攻撃しなきゃ勝てない」


こういう時は頭が働くシャーリーも賛成してくれる。


「メリーはパパに従うよー」


勇者付きの精霊であるメリーは俺の意見を尊重してくれるようだ。


「決定だ、行くぞ――」





反転して半円を描き、追いかけてくるケトゥスの側面をとれるようエリザに氷の道を作ってもらう。

未だに納得いかない様子のアンナも細心の注意を払ってくれている。



そして予定通り、上手くケトゥスの横っ腹に近づくことが出来た。




「どっせい!!!!」




俺はソリから思いっきりケトゥスの上に跳び移る。

上手くいくか分からないため、シャーリーとアルヴィナは様子見することに。

表情が分からなくともアルヴィナはついて来たがっていたようだが。



「うおおおおおおぉぉぉらああああぁぁぁぁ!!!!」


俺は思いっきり黒い化け鯨に、黒い勇者の剣を突き刺す。

何度も何度も何度も何度も、内臓に届くまで。



「グルウウウウウウオオオオオオオオオオ!!」


大海鯨ケトゥスは今までで一番苦しそうな鳴き声をあげるが――



「ちくしょう!! 肉厚すぎる!!」


そう、デカい鯨の魔獣な訳だから奴の肉はとんでもないくらい厚い。

まったく内蔵の類が見えてこないのだ。

しかも暴れまくるので振り落とされそうになる。



「パパ!」

「メリー!?」


いつの間にかすぐ傍にメリーがいた。

危ないから戻れと言おうとしたのだが――




「えいっ」




メリーが俺が勇者の剣で空けた傷穴に、これでもかというほど黒い卵を落としていた。

……メリー、恐ろしい子。



「パパ戻ろう!!」

「あ、ああ」


……元から分かっちゃいたけど、メリーの残虐性に顔を引きつらせる。

彼女の声に従いすぐさまソリに戻ると――



「グギャアアアアアアアアアアアア!?」


痛みに大暴れするケトゥスの大絶叫が海原に響き渡る。

今度こそやった――




「嘘だろ……」


ケトゥスの血走った目が俺達を捉えていた。

ダメージはかなり負ったはずだが、それでも力強さは衰えていない。

勇者の剣は途中までしか届かず、魔法・魔術も通らない。

――どうやって倒せばいいんだ。





前も言ったかもしれないですけど、具合悪い具合悪いと言っても特定の病気ではなく気圧やらストレスにやられてるだけです。

芸術の秋に台風連発とかホント気が狂いかけた(半ギレ)

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