第15話 美しき先客の正体は
ちょいと用事を済ませたり、某作品を読んでいたら遅くなってしまいました。
WEBに小説を載せるのは初めてではないではないのですが、前に書いたのはガチ中学二年生だったのでほぼ初心者です。
そんな初心者が前述の作品を読んでいたら色々思わせられることがありました。
拙い小説ですが読んでくれている皆さん、これからもよろしくお願いします。
まるで時間が切り取られたかのようにお互い身動きしなかった。
濡れている身体をタオルで拭いている途中であったろう彼女の姿に思わず見とれる。
淡い金髪――僅かに濃いプラチナブロンドというべきか――は絹のように煌いている。
顔はハリウッドスターのような超絶美人。
目はルビーのような綺麗な赤。
肌は病気なんじゃないかと思うぐらい白い、だがそれがまた美しい。美白の女王だ。
身体はほっそりとモデル体型。
それでいて胸は慎ましい訳ではなく、手から少しこぼれそうなほどでしかも綺麗ときた。
頂点や花園といった肝心な部分が拭いていたタオルで見えないのは残――いや何を考えているんだ俺は。
まあしょうがないよね、だっておとこだもん。
目に映るはまさしく美の女神。
そんな彼女を俺は凝視してしまい、
向こうも突然の出来事に思考停止してしまっている。
「す、すいませええええん!!」
彼女より先に理性が戻って来た俺は急ターン。
客人と言えども俺は部外者。
衛兵を呼ばれたら大変だ。
アンナを呼ばれたらもっと大変だ、冗談抜きで死ぬ予感がする。
「お待ちください」
ところがどっこい、彼女は姿と同じく聞き惚れる美しい声色で俺を呼び止める。
「申し訳ありません。風呂で身を清めた方がいいと案内されたはいえ、ノックもせず開いてしまって……」
正直に俺が悪いと言う。
もちろん正直にレリーチェさんが先客をいることを知らないとはいえ案内したと言う。
保身に走るクズです、はい。
というのは半分で、もう半分は未だ間者の疑惑があるため正直に言っておいた方が後々いいだろうという計算。
こちらに来る前の、考えなしで自分の立場を追いやられるような同じ轍は踏まない。
「いえ、こちらもメイドに言いつけず急いで入ってしまったのです。事故でしょう」
ラッキースケベだと分かってもらえた。
そのうち某先輩のようにあらんところに顔を突っ込むトラブルが――いやもうやめておこう、いろんなところから怒られそうだ。
特にこちらの妄想を見抜きそうなアンナが怖い。
「もう大丈夫ですのでお顔を見させてください」
着替え早いな、しかし俺の顔は赤かったり鼻から血を噴いてないだろうか。
心配だが無防備な姿を見られても許してくれた相手が顔を見たいと言っている。
ならば恥ずかしいが顔を向けよう。
彼女は着替えたわけではなく身体にタオルを巻いただけであった。
さっきよりは遥かにマシだが、それでも女慣れしてない俺にはこうかはばつぐんだ!
――と彼女の赤い目が光ったような気がする。
甘ったるい、花のような香りが鼻に入ってくる。
彼女の鼓動と息遣いだけが耳に入ってくる。
まるで彫刻が命を得たかのような美しい彼女の肉体だけを視界に捉えている。
思考が彼女という存在だけで埋め尽くされる――
前に、黒く塗りつぶされる。
まるでとてつもなく素晴らしい絵画を黒い絵の具で上塗りするかのように。
見覚えのある黒。
この世界に来る前に浸かっていた黒い泥。
負の感情を呼び起こす、液体の闇。
心地よい夢から醒めて、灰色の現実に引き戻される感覚。
蕩けるような匂いは消え失せ――風呂上がりのなんともいえない良い香りは漂っているが。
視界は彼女の独占から解放され、更衣室の様々な物が急に現れたかのように映る。
そして鼓動と息遣いは聞こえなくなり、代わりに困惑する彼女の声を聞く。
「〈魅了の魔眼〉が効かない・・・?」
思わずつぶやいたかのようで、彼女は考える人が立ち上がったようなポーズで思考に浸る。
そんな姿もまた様になっていて見とれそうになるが踏みとどまる。
魅了――つまり向こうは俺を意のままにする状態異常をかけようとしたが失敗した。
敵対行動ととっていいのだろうか。
「私はあなたに敵対しませ――」
ん、と言い切る前に終わりがやってきた。
「入り終わったと思って来てみれば、あんた入口で何やって――」
烏の行水かよ、俺のこの世界の名前クロウだけどさ。
いくらなんでもその想定は早すぎだろう。
いや、ボギーは風呂はパパッと入る種族なのかな?
まあ何にせよ、最悪のタイミングで(エッチな事に関して)最悪な人物が来て最悪の事態が起きたわけで、最悪すぎて最悪がゲシュタルト崩壊なわけで。
俺は死を覚悟した。
「はあ」
湯船に浸かり、思わずため息が出る。
いかん、幸せが逃げてしまう。
アンナが事故現場に出くわして死を覚悟した。
ところがプラチナブロンドの素敵な美人さんが、
「アンナ、こちらの不手際によりちょっとしたハプニングが起きましたが問題ありません。
そしてちょっとお話していただけなのです」
魔眼とやらでこちらを魅了するのがちょっとお話なのだろうか。
思うところはあるが、彼女が庇ってくれていなかったら俺は二度目の死を迎えただろう。
むしろ命の恩人。
よって異議なし!!
「そう」
アンナが大人しく引き下がった。
あれだけ俺を鬼畜変態不潔野郎と罵っていた彼女が、である。
・・・そこまでは言ってなかったかな?
「少し落ち着いた方が良いでしょう、また後ほど」
とお互い自己紹介する前に彼女は言外にこれから着替えますよ、と申してきた。
確かに俺もアンナもプラチナブロンドさんも少し間を置いた方が良いだろう。
そもそも疑いのある客人という身だ、大人しく従った。
そんなこんなで俺は当初の予定に戻って風呂で疲れを癒している。
風呂は命の洗濯とはよく言ったものだ。
この世界にも広げていくべき名言である。
せっかちな賊妖精――アンナの性格かもしれないが彼女を待たせすぎても要らん騒ぎが起こるかもしれない。
もう少し浸かっておきたいがそろそろ出よう。
着替え終わり、そういやこの後どうすりゃいいんだと思いながらも更衣室を開けたら廊下にレリーチェさんがいた。
どのくらいの時間かは知らないが俺を待っていてくれたようだ。
「申し訳ございません、私の不徳により災難な目に遭わせてしまいました」
「レリーチェさんだけが悪い訳ではないですよ、顔をあげてください」
本職メイドさんに頭を下げられる。
ちょっと憧れていたシュチュエーションだ。
しかし薄い本のように「なら言う通りにしろゲへへ」なんて野卑な事は言わない。
下半身が蜘蛛だからって訳ではない。
かといってそういうのが大好きってことではなく、俺は強要するのが嫌なだけ。
そして相手がお誘いしてきたらお受けするスタンス。
あれ?俺こんな奥手だから前の世界では・・・。
これ以上はやめておこう、過ぎたことを考えてもしょうがない。虚しくなるだけだ。
ノックしなかった俺も悪いし、プラチナブロンド美人も悪いし、レリーチェさんも悪い。
と、彼女に伝えると、
「確かにそうなのかもしれませんが、主に失敗の罪を着せる訳にはいきません」
なるほど。
メイドの立場で主人が悪いと言えるだけだろうか。
しかもここは反帝国軍本拠地。
お金のために仕えているのではなく、色々な恩義があるのだろう。
ん?
「主?」
「はい、この館の主にして反帝国軍首領のエリザ様でございます」
ああまだ詳しくは知らないが、私を勇者に選んでくれた女神よ。
ラッキースケベのお相手はここで一番偉い人でした。
……どうしよう。
館の二階へと案内され、大きな両扉の前までやってきた。
レリーチェさんがノックしてからドアを開き、先を促す。
緊張しつつも部屋に入る。
どうやら執務室のようだ。
だがそれはよくテレビで見るような大きな机が鎮座していたり書棚が並んでいるだけではない。
紙の山脈。
そう表現するのが正しい。
執務用の机の周りにはとにかく紙の山が見張り塔のようにそびえ立っている。
それをとんでもない速度で処理するのはもちろん先程お会いした美人――エリザ。
様をつけろよ、デコ助野郎!偉い人なんだから!
脳内ツッコミは置いといて。
明らかに人間の域を超えるだろう速度で読み、サインするか或いはせずに箱にそれぞれ仕分ける。
そしてアンナが何か書かれた紙を次々とエリザに渡している。
人間至上主義国と戦っている、魔眼という時点で予想していたが見た目は人間でも彼女は別種族なのだろう。
キリよく終わったのか彼女は立ち上がり、こちらを向く。
あんなことがあったが、彼女の言う通り時間を空けたからかなんとか顔を合わせられる。
「ようこそおいで下さいました、私は反帝国軍の総責任者エリザと申します」
「人間の身で館にお招きいただきありがとうございます、クロウと申します」
丁寧に自己紹介されたのでこちらも失礼のないよう挨拶する。
「先程は試すような真似をしてしまい申し訳ありません、アンナに聞けば勇者様だったのですね」
魅了しようとしたことを謝られる。
「いえ、敵は人間なのですから疑うのは当然でしょう。ところで――」
あなたは何の種族ですか、とストレートに聞くのも失礼だろう。
言葉を選んでいるとエリザ様はこちらの意を汲み取って言葉を続けてくれた。
「私は吸血鬼です、勇者様」
男ならハートを釘まみれにされそうな笑顔で彼女は言った。
にっこりと笑った口からは異様に長い犬歯が覗かせていた。
ラッキースケベ一旦終了のお知らせ。




