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ファルーサ・カイデン10-1

 4月になった。

 春だ。

 先月に芽吹き始めた、街中に植えられている様々な草木が、色とりどりの花を咲き誇らせている。

 日向は暖かい。

 「高温耐性」や「低温耐性」があっても、俺にとって快適な範囲であれば、普通に温度を感じる。

 蝶等の虫の魔物が街中を飛んでいるのはどうかと思うが、草木が身を付けるためには、そのような小さな虫が必要なんだそうだ。人を見れば逃げていくような弱い魔物なので、まあ良いだろう。

 しばらくいい天気が続いていて、空も綺麗だし、風も気持ちいい。

 すぐにでも外に出ていきたくなるが、昨日は行けなかった。

 領主館に新たに入庁する文官の入庁式と、領軍に新たに入隊する兵士の入隊式に、俺も参加するように言われたからだ。

 領内の学校で基礎的な勉強を終えた新成人や、成人後に2~3年、領内外の専門学校での高等教育や、士官学校での教育・訓練を終了した新人さん達のためのセレモニーだ。

 お父様とマリアールお母様、そして2人のお兄様達がいればいいんじゃないかと思うのだが、お兄様達に参加するように言われた。

「ファルが領主を継ぐ可能性もあるのだから、こういう場所で領主館の職員や、領軍の兵士に顔を覚えさせておく必要があるからね」

 とのことであるが、時々お兄様達が「ファルが次期領主になればいい」と言っているのは冗談だよね?本気じゃないよね?

 俺は、怪我をせずにまあまあ稼いで来れる、そこそこに強いハンターになるよ。

 あまり顔が売れると、迷宮に行くために、しょっちゅう城壁に向かって町外れに行っているのがバレてしまうので、勘弁してほしい。

 そんな訳で昨日は迷宮に行けなかったので、今日は目立たないよう迷宮を目指す。


 第3層は骸骨とゾンビとミイラだけかと思っていたら、1週間位前から「幽霊」が出るようになった。

 俺は魔法攻撃が出来るので問題ないが、幽霊には物理攻撃があまり効かない。

 幽霊も物理攻撃はしてこないが、「水魔法」で水の塊を飛ばしてくるうえに、近付いてくるだけで「ひんやり」する。これ、もしかして「低温耐性」が無かったら、体温を奪われてヤバかったんじゃないのか?

 しかも、時々身体が重くなると思ったら、「眠り」の精神攻撃を仕掛けてきていた。

 これに気付いた途端に、俺は幽霊が出ないエリアでSPを一所懸命に稼いで、それまで貯めていた分と併せて「状態異常回復魔法」を一気にレベル8(6「毒を回復させる」、7「麻痺を回復させる」、8「精神異常を回復させる」)まで上げたうえに、「精神攻撃耐性」もレベル8(「精神攻撃の効果を80%軽減する。又は精神攻撃を80%の確率で回避する。」)に上げた。

 眠らされてしまったら回復も何もできなくなって、やりたい放題されてしまうので、とにかく効果を薄くして、少しでも異常を感じたら回復するのが最善だと思ったからだ。

 でも、これまで出なかった魔物が出てくるようになったということは、第3層も大分深いところまで来ているのだろう。

 もしかしたら、次の層への入口が近いのかもしれない。

 その他にも「物理防御」と「魔法防御」をレベル8(「衝撃及び斬撃によるダメージを800軽減する」、「魔法によるダメージを800軽減する」)に上げ、「生命力量回復速度向上」と「魔力量回復速度向上」、「疲労回復速度向上」をレベル7(「それぞれ回復速度が1,000倍早くなる」)に上げた。

 迷宮が生み出した紛い物の魔物とは言え、アンデットを相手にするのは、恐怖心やらストレスが全くないわけではないので、何かあった時に逃げ帰れるよう、防御力と回復力は上げておく必要を感じたからである。

 今日も幽霊が出る辺りにやって来た。

 第3層に来て最初の頃に、骸骨、ゾンビ、ミイラは結構倒したので、数が大分減ってる。

 特にゾンビは、この第3層に充満する臭いの元凶だと思っているから、見つけたら必ず倒している。(それでも、俺の周囲の空気を綺麗にするために発動し続けている「浄化魔法4」を、停止する勇気は俺には無い。)

 そのおかげか、今日はまだ、骸骨とミイラを1体ずつしか倒してない。

 少しずつマッピングをしながら進んでいると、今いる通路の正面に扉が見えてきた。と言うか、この通路の行く手を扉が塞いでいた。

 左右それぞれ1枚の石板で出来ているような、両開きの扉だ。

 こちら側に取っ手も窪みも無いことから、きっと押して開くタイプなんだろう。

 もしかして、この向こうに、下の層に通じる階段があるのか、と思ったが、今まで階段に通じる通路には扉なんか無かったので、きっと違うんだろう。

 もしかしたら、扉の向こうには宝箱があるのかも。

 第1層では、宝箱が床や壁の土の中に半分以上埋まっていたことがあったし、第2層でも、生い茂る薮の中に宝箱があったりした。

 それらと同様に、宝箱を見え難くしているのだろう。

 左右の扉を同時に手で軽く押してみる。

 さすがに石の扉だけあって、重いんだろう。簡単には開かない。

 少しずつ力を加えていくと、今度は驚くほど簡単に開いた。

 いや、「ゴゴゴゴゴッ」て大きな音がしたんで、「筋力」が仕事をしたんだろう。

 中は結構広い空間になっているのか、通路側にいる俺の「照明魔法」では、中の様子は暗くてよく見えない。

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