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ベルーサ・カイデン1-3

 四の月のある日、午前中は公務が無く、午後からも視察が1件入っているのみ、と言う日があった。視察先へも直行・直帰で良いらしい。

 午前中は久しぶりに家でのんびりし、昼食の席でファルと一緒になった。

 ファルが今日の勉強の時間に習ったことや、武術の練習でやったことを話して聞かせてくれた。自分が得た知識を、私に教えようと話してくれるファルが可愛い!

 なお、武術の練習に関しては、本人の希望で、この四の月から午前中に行われている。その分、勉強の開始時間が繰り上がっているのだが、ファルとしては午後いっぱい遊べる方が良いらしいので、そのように変更した。

 来月には11歳になるのだから、遊び盛りなんだろう。

 そんな話をしているうちに、今日の視察に一緒に来るか誘ってみると、付いてくるという。正確には、視察先の近くに新しい甘味処が出来たので、そこに誘ったのだが。


 昼食後しばらくして、私はファルと馬車で領主館に向かった。

 本日はマリアールが私用で出かけているので、私とファルの二人だけだ。

 因みに馬は、我が領で使役されている馬の中でも、脚力、持久力ともに高い馬を2頭立てで使っているが、街中なのでゆっくり走らざるを得ない。人を撥ねたりしたら大事になるからな。

 まずは13時半に領主館に行き、15分程書類を確認する。その間ファルには、私の執務室の横にある応接室のソファーでジュースを飲んで待っていてもらった。

 その後視察先に馬車で向かい、14時に到着して14時15分には終わるので、ファルには馬車の中で待っていてもらう。

 後は領主館への帰路で、視察先から5分程の甘味処へ向かうのだが、私が馬車に乗り込んだ時、ファルの様子がおかしかった。何となく落ち着きが無いというか、しきりに馬車の外を気にしている。

 ファルにどうしたのか尋ねたが、何でもないと答えたので、御者に言って馬車を出発させた。

 馬車が走り出してすぐ、ファルが急に真剣な顔で私の方を向いて、中央公園に行って花見がしたいと言い出した。

「お父様、今の時期は中央公園は花でいっぱいです。2人でお花見をしませんか?」

 ファルと触れ合える良い機会だとは思ったが、甘味処とは方向が違うので、公園に行くにはすぐに方向転換しなくてはならない。

 甘味処でのスイーツは食べられなくても良いのかと問うと、

「スイーツも食べたいですが、ここのところ、なかなかお父様とお出かけできる機会が無かったので、お父様と2人で、ゆっくりお花見したいです」

 ファルの言葉で感動に打ち震え、私は御者に、すぐに方向転換して中央公園に向かうよう命じた。

 馬車は次の角を曲がって5分程で、中央公園に到着した。

 公園の植栽は、その殆どが花を付けており、ファルと2人でこれら満開の花々を見て歩き、ファルが喜ぶのを見るのも良いなぁ、と思っていると、だんだんと周囲が騒がしくなってきた。

 何かあったらファルを守らなければと思っていると、領軍の警邏隊の隊長の1人が、公園の中に部下数名を引き連れてやってきた。

 その隊長が私を見つけ、駆けつけてきたので何があったのかを訊いた。

 何でも、この近くで不審な集団がいたので職務質問をしようとしたところ、20名程度の武装集団であることがわかり、別の隊が現在交戦中。

 今日の視察の件は警邏隊の中では共有されているので、私が襲われた恐れがあると考え、この隊が私の馬車について住民等に聞き込みをしたところ、馬車がこの公園に向かって行ったことを知ったため、探しに来たと言う。

 他の領軍にも連絡して、付近の住民の避難誘導に当たらせるのとのこと。

 私の馬車を待ち伏せて襲撃するつもりだった可能性もあるとのことで、私にもすぐに避難するよう言って来た。

 場所を訊くと、この公園のすぐ近く。と言うか、先程公園に行き先を替えず、そのまま甘味処や領主館に向かっていたら、その武装集団に襲われていた可能性が高い。

 ファルも今の会話を横で聞いていて事情が把握できていたのか、すぐに領主館に戻ると言っても、文句一つ言わずに馬車に乗り込んだ。

 馬車の前後を警邏隊が護衛し、現場を大きく迂回して領主館に戻った。

 ファルと共に2時間くらい執務室に閉じこもっていると、先程の隊長が、武装集団の制圧を完了したと部屋に報告に来た。

 これから武装集団の生き残りに対し取り調べを行うが、どうやら私の命を狙って来たのは間違いないらしい。

 5千年前に人族が滅亡しかけた後、為政者やその他責任ある立場の者は、自分の利益を2の次とし、住民等のために尽くすのが常識となっているのだが、たまに自分の利益を最優先に考える愚か者が出てくる。

 恐らく、私に取って代わりたいどこかの弱小新興貴族か、我が領内での商いに食い込めなかった中途半端な規模の商家の差し金だろう。

 貴族家当主を襲おうとしたのだから、これから苛烈な取り調べが行われるだろうが、金で雇われたであろう武装集団を問い詰めても、依頼者に辿り着くことは出来ないと思われる。

 それにしても、あの時ファルが中央公園に行きたいと言わなかったら、私もファルもこうして生きていなかったかもしれない。

 そう言えば、ファルは、私が視察を終えて馬車に戻った時から落ち着きが無く、外を気にしているようだった。

 もしかして、ファルには未来が見えている?危機を回避する能力がある?

 ・・・

 ・・・・・・・・・・

 まさかね。


 家に帰ると、家族全員が私達の無事を喜んでくれた。

 が、その後で私は、何でファルを危ない目に合わせたのかと、家族全員に長時間怒られた。

 私はファルと2人の時間が欲しかっただけなのに・・・・・

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