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その6  降臨祭

神湖の街の民は、神徒の再臨を快く出迎えた。

セイが訪れたことで、エリオンではどうやら祭りの準備が始まったようだ。そしてもう既に、次の祭壇に関する話が進行し始めたようだ。

セイを支える戦士を、セイは選ばねばならなくなる。

 夜、白猫のような姿をした少女が一人、静かな部屋で寝ている。




 今日の昼、探索師(たんさくし)ペトリエと出会ったセイは彼女に導かれ、この滅びかけの世界で人間が住むという街エリオンへとやって来た。

 そして、そのエリオンの中でも特に神徒(しんと)に協力的だという宗教団体・鏡幽会(きょうゆうかい)を訪ねていた。かつての神徒もその(ほとん)どがここを拠点としていたらしく、彼等の為に用意された部屋が今も残っており、セイは今そこに居る。

(暖かい部屋にふかふかのベッドだ…ミカハチの寝台とはえらい違いね)

 かつての神徒達が使ったという部屋で、セイは布団にくるまっている。そこまで広くないにしても小綺麗なその部屋は、エリオンでは貴重であろう調度品で彩られている。

 ちなみに鏡幽会には神徒同様に護送機用の部屋も用意されているらしく、ミカハチは今日ずっとそこに置いてある。その部屋は建物のちょうど中央付近…おかげで移動制限があるセイも建物内なら不自由が無い。

(ここは結構居心地が良いなぁ。ずっとこうしていたいけど…)

 ミカハチに連れ回されていたセイにとって、こうして人間に崇拝(すうはい)されたり同世代の少女と交流できるのはなかなか悪くないと思えた。しかし彼等がセイを崇拝する理由を考えれば、そうも言っていられない。


 彼等がセイに求めるのはただ一つ…“祭壇(さいだん)”の攻略なのだ。


 セイは憂鬱(ゆううつ)な溜息と共に頭から布団をかぶる。

(“明日は色々忙しくなる”…ランティはそう言ってたわね。それに、後でまたって言ってそのままどっか行っちゃったペトリエ、この街に着いてから全然喋らないミカハチ…何かやだなぁ)

 この平穏など、使命の間にある(わず)かな時間…。

 セイはそう理解したくなかった。











「セイ様、昨夜は良く休めましたか?」

「うん、ありがとねランティ。ミカハチの小屋よりずっと快適だったよ」


 翌朝、セイはランティに導かれ、ミカハチと共に鏡幽会を出た。

 エリオンの街は何やら騒がしい様子だったが、それについては“後で説明する”と言われてしまったのでとりあえずセイは従う事にした。

 今、セイ達の前に広がるのは…広大なエリオン湖だ。

「セイ様、こちらが祭祀場(さいしじょう)です。今までの神徒様も多くがここで鏡幽会の行う祈祷(きとう)を受けて使命へと向かっています」

「遠目にも大きい湖だったけど、近付くともっと広いね。あと真っ黒だ」

 その祭祀場はエリオン湖に突き出した桟橋(さんばし)のような形をしており、そこから湖全体を一望できた。湖面は()いでおり、水質の関係かその色は透明度を感じない漆黒(しっこく)だ。周囲は深緑の風景なのだが、遠い対岸は雪原の端っこらしく銀世界だ。

 その祭祀場には、龍のような形の木彫りの像が置かれている。




 波の少ない黒の湖面には、周囲の景色が映り込んでいる。

「うふふ、近くで見るとより美しいでしょう?」

「…そうね、鏡みたい」

「我々が“鏡幽会”と名乗っている由来がこれです。終末世界においてこの美しさ、水質のお陰で全面凍結も稀ですし、水温が微妙に高くて生物もたくさん住んでいます。もちろん飲料水にも使えます」

「なんで温かいのかしらね?アードゥラにも湖があったけど、ミカハチが乗れるくらい厚い氷が張ってたわよ?」

「さあ、それは良く分かっていませんね。湖底湧水(こていゆうすい)が高温とも噂されていますが、それを示す旧世界(きゅうせかい)の文書は見つかっていませんし、我々にそれを観測する技術もありません」

「ふーん」

 微妙に眠そうなセイと、朝から元気なランティ。

 彼女はセイと手を繋ぎ、白い毛皮を気持ちよさそうに撫でている。


 そしてランティの視線が、ミカハチに移る。

御籠護送機(みかごごそうき)八号…セイ様は“ミカハチ”と呼んでいるそうですね」

「うん」

「ペトリエさんはお喋りができると言っていましたが、本当なんですか?」

「あー…そこはあたしも流石に気になって来てね。こいつエリオンへ向かうあたりからめっきり喋んなくなっちゃったの」

『…』

 昨日の午後から全く喋らなくなったミカハチ。

 流石に気味の悪くなってきたセイは、ミカハチ頭部にある赤く光る電灯を見つめる。

「ね、ねえミカハチ…?」

『セイ、おはようございます』

「ああ喋った…あんた何で黙りっぱなしだったの?」

『エリオンに到達できれば、協力者を増やすことができると思われます。またそれ以降当機は会話を(ひか)えますので、何かありましたらお(たず)ね下さい』

「あ、あんた先にそれを言いなさいよね」

 あっけらかんと答えるミカハチに呆れるセイだが、このロボの声を初めて聴いたランティは目を輝かせる。

「あぁ、凄い…!護送機が喋るなんて!機体の仕様は恐らく記録にある七号と同型なんでしょうが、そんな機能過去の護送機は持っていませんでした!ねえミカハチ様、貴方は何故お喋りができるんですか!?」

『…』

「あ、あら?引かれちゃいましたかね?」

「ごめんねランティ、そういうわけじゃ無くて…」

 セイがミカハチの難儀(なんぎ)さを説明しようとした矢先、ミカハチの頭部が動いて単眼のような赤色電灯がランティの方を向く。


『神徒のご指示で、対象の固有名を当機に登録することが可能です』


 相変わらず(わずら)わしいミカハチに、セイは思わず脱力する。











 セイ達が祈祷を終えて鏡幽会に戻ると、彼女も見知る顔が出迎えた。


「やっほーセイちゃん、おはよう!」

「ペトリエ!また来てくれたんだ!」

 昨日出会った探索師ペトリエが、再びセイに会いに来たのだ。今日の彼女は装備も無い、だいぶ身軽な(よそお)いだ。嬉しくなったセイはペトリエに駆け寄る。

「また会いに来るって言ったでしょセイちゃん。今は神湖祈祷の帰りみたいね」

「そうだよ。もう来てくれないかと思った」

「いやいや、折角神徒様が現れたんですもの。こんな機会を逃す気は無いわ!」

 セイに少し遅れて、ランティとミカハチもペトリエの元に来る。

「ペトリエさん、やはり来ましたね。しかし、貴女が進もうとしている道は…」

「構わないわ。それが長年の、私の望みだったんですもの」

 昨日は旧知らしく親しげに語っていた2人だが、しかし何故か会話が突然真剣な感じになる。空気の変化を感じ、セイは毛並みがざわつく。

「…何の話?それにペトリエ、そういえば貴女は何で神徒を待ち望んでいたの…?」

 セイに問われ、ペトリエの表情が変わる。

 彼女は深呼吸一つをし、そしてセイに告げる。


「ねえ神徒様、私も貴女の使命を手伝いたいと思っているの。一緒に付いて行っても良いかしら?」






 セイ達はランティの勧めで、鏡幽会の一室に移動した。

 二階にあるその部屋からは、慌ただしいエリオンの街が良く見えた。

「今日、神徒様がエリオンに現れた事を祝う“降臨祭(こうりんさい)”が行われます。皆その準備をしているんですよ」

「お祭りか…」

 (うるさ)いのがあまり好みでは無いセイはあまり乗り気でもない。しかしそんな彼女に構わず、もっと重大な事をランティが教えてくれた。


「エリオンに神徒様が降臨したら、まず鏡幽会がお迎えし、皆で降臨祭を祝います。そして紅蓮隊(ぐれんたい)から神徒様に付き従う戦士が選ばれ、そして恒例のヴォンダーン攻略となりますね」


 これにはセイも驚く。

「えっ、もう次の祭壇!?それに行先まで決まっているなんて…!」

「…でもセイちゃん、今までの神徒様もその多くがそうしてるわよ?」

 やや気が滅入っているセイに追い打ちをかけるよう、セイの黒い首輪から機械音声が流れる。

『“機甲(きこう)の祭壇”は、比較的攻略が容易な祭壇です。早い段階での攻略をお勧めします。エリオンの民衆も歓迎し協力してくれるでしょう』

 近くにミカハチはいないのに急に話しかけられ、セイはぎょっとする。

「げっ…あんた何で!?この首輪って喋るだけじゃなくて聞く事もできるの!?」

『はい、その通りです』

 不意打ち気味で多少驚いたセイだが、ミカハチの不条理に慣れ始めたせいでそこまで衝撃を受けていない自分に嫌気が差す。

 セイはもうミカハチを放置し、ランティとペトリエとの会話を続ける。

「…ミカハチはもういいや。ねえランティ、今言った“紅蓮隊”って?」

「エリオンを守ったり、土地を外側に広げる開拓を行う一団ですね。特にエリオン東側の“機甲の祭壇”は領域拡大を活発に行うので、普段はそれを抑制するために前哨基地(ぜんしょうきち)を破壊したりしていますよ」

「祭壇と戦おうって人達が一応いるのね」

 そこでペトリエが自慢げに、大きな胸を張る。

「そう!普通はその中から神徒様が戦士を選ぶか、もしくは紅蓮隊が推す戦士を選んでくれるわ。まあ私は紅蓮隊に所属なんてしてないけどね!」

「ちょっと待って、それじゃあ…」

 セイは嫌な予感がする。

 尻尾を抱き抱え、耳もぺたりと寝てしまう。

 そして次のランティの言葉で、セイの予感は確信に変わる。


「今日の降臨祭では、同行を願う紅蓮隊の戦士達がセイ様に会いに来るでしょう。その中から気の合う者を選ばれても良し、紅蓮隊に任せるも良し…希望があれば私から紅蓮隊に伝えておきますが、如何(いかが)致しましょう?」











 その日の昼から、エリオンの街の大きな広場で祭りが始まった。


 豊かではないというエリオンだが、大勢の人間が食べ物や酒を持ち寄ってそこに集まった。そして茣蓙(ござ)がそこかしこに敷かれ、広場がそのまま宴会場になった。

 セイとミカハチが鎮座(ちんざ)するのは広場の隅、様々な団体の要人が集まる一角だった。主賓(しゅひん)という厄介(やっかい)な立ち位置のセイだったが、有難い事にやることは無く、ランティが何とか酔った大人を良い感じに避けてくれていた。

 白猫獣人という珍しい姿をしたセイを見に、街の子供達が遠巻きに彼女を見に来たりもした。しかし意外な事に、武力組織“紅蓮隊”の戦士はまだ誰も現れていない。




「セイ様、お疲れ様です」

「はぁー…あたしもう疲れちゃった」

「あははは…お休みになりたいようであれば仰って下さい。私から皆に話を通しておきますので、護送機と一緒に鏡幽会までお戻りください」

「…うん、だけどもうちょっと居るかな」

 今日知らない人間と沢山話したセイは、もうだいぶ嫌になっている。しかしここでいろんな話を聞けたのも確かで、エリオンの事情やヴォンダーン攻略の糸口が見えてきた。


 一つ。

 やはりミカハチの言葉通り、ヴォンダーン攻略の難易度は低めらしい。

 ヴォンダーンの“機甲の祭壇”だが、それはどうやら大量の機械兵を産み出し操る物のようだ。しかしかの国には護送機をどうこうできる火力が無いらしく、護送機の中に居れば神徒はほぼ安全らしい。そしてそんな護送機を(おとり)にした作戦が慣例のようだ…。

 二つ。

 エリオンの民にとって、ヴォンダーン攻略は喜ばしい事だという。

 ヴォンダーン攻略にはエリオンの安全圏を広げる意味もあるが、それ以上に破壊した機械を持ち帰るというのが大きいらしい。そうして得た武器や道具、そしてくず鉄までもがエリオンの発展に役立つのだという。


(はぁ、あたし以外は皆乗り気なのね。あたしにはそのヴォンダーンとかいう国がどんな所かすら知らないのに…)

 しかし、そもそも使命に乗り気ではないセイにとって、周りの人間達が盛り上がっているこの状況はあまり居心地が良くなかった。自分だけが場違いな気がして、群青(ぐんじょう)色の髪を(いじ)りながら居辛そうにしていた。




 祭りの盛り上がりに付いて行けないセイ。

 そんな彼女の元に、屈強な男たちがやって来る。

「やあ、美しい神徒様!お初にお目にかかる!」


 セイの前に現れたのは、自信満々な表情の男戦士だった。

 金髪金眼金鎧という目立ちすぎる姿、そもそも身なりがかなり良い。取り巻きのような男たちを何人も連れており、揃いも揃って厳ついながらも美形だ。そいつが爽やかな笑みを浮かべて、セイに握手を求めてきた。


「…どうも」

 セイはと言うと、体格の良い男数人に詰められる形になり、全身で警戒感を示してしまった。毛を逆立て、猫背になり、下から(にら)み上げるような顔になる。

 男としてはこの反応が予想外だったらしく、安心させようと慌てる。

「おっとすまない、俺様はもちろん怪しい者じゃない。俺様の名はナイーゼ、かつて3番目の神徒様と共に戦った最初の“紅蓮隊”の総隊長の末裔(まつえい)だ。俺様の父は紅蓮隊の現総隊長であり、俺様も次期総隊長の座が約束されている。総隊長一族である俺様の実力は疑いようもない高さであるからして、神徒様の随伴(ずいはん)という事であれば俺様やその精鋭を置いて他には考えられない訳で…」

「あ、あの!」

 一度に喋る上に訳の分からない小話を(はさ)むナイーゼという男にまずドン引きしたセイは、彼の言葉を(さえぎ)るように声を上げた。

「ど、どうした神徒様?」

「あの、お供の人はもう鏡幽会に選んでもらうようお願いしちゃいました」

「な、何故だ!?俺様の精鋭部隊がお守りすれば、神徒様は後衛で安全に居られるのに!?」

(神徒を囮にする作戦が慣例なんじゃなかったの?この人、まさか自分が危険な目に遭いたくないだけなんじゃ…)

 たったこれしか言葉を交わさなかったものの、ナイーゼの言動に危うさを覚えたセイは、既にランティに告げた内容をそのまま彼にも伝える。


「その、紅蓮隊にもあたしと歳の近い女の人が居るって聞いて…そういう人に護衛をお願いしたいんです。だからあの、その…ゴメンナサイ」


 断られると思っていなかったらしいナイーゼは、大口を開けて愕然(がくぜん)とする。






「あらセイちゃん、ナイーゼの護衛を断ったってホント?」

「あ、ペトリエ…」


 護衛の申し出を断ったセイの元に、祭りでほろ酔いのペトリエが現れた。

 彼女は上機嫌に、ちょっとへこんでいるセイをふわつく。

「セイちゃんふわふわー♪」

「ちょ、ペトリエ酒臭い」

「ペトリエさん、セイ様が嫌がっていますわ」

「もーランティちゃんも、堅いこと言わないの!」

 ペトリエは酒瓶片手に、辺りを見渡す。

「まあ聞いたと思うけど、ナイーゼは紅蓮隊のお偉いさんの身内だからねー。ああやっていつも誰にでも偉ぶってる嫌な奴よ」

「確かにそんな感じだったね」

「あいつもしかして、紅蓮隊の若い娘を探しに行ったのかしら?まさかセイちゃんのお供を辞退させる気だったりして。嫌な奴ねぇー」

「うーん…」

 そうは言うセイだが、形はどうあれ好意的な申し出を無下(むげ)に断ってしまったことに時間差で落ち込んでいたのだ。

 そんな時。


「この機体…」


 セイの背後、ミカハチの方から小さな声が。

(また誰か来てる…)

 ペトリエの来訪で気が付かなかったが、どうやらミカハチを見物に誰かが来ていたらしい。ミカハチ本体を挟んだ反対側なので、セイからはその姿が見えない。

 来賓席に座りっぱなしなのも飽きてきたセイは、ミカハチを回り込んでその来客の姿を確かめる。




 その来客は、ナイーゼ以上に異様な奴だった。

 まず、大柄だったナイーゼより上背がある。肉体も屈強だ。そんな奴が、全身茶色のツナギを(まと)っているので、素肌が全く見えない。胸部を見ても、胸なのか胸板なのかも判別付かない。頭部すらも全てマスクで覆っており、どんな奴なのかが全く分からない。

 ただ一つ…マスク後頭部から出ている空色の長いポニーテールのみが、こいつ本体で見えている部分だった。


「ひっ…」

 あまりの異様さに、セイは動きが固まる。

 そして短い悲鳴を上げたセイの方をそいつが見る。見ると言っても、見えているのか分からない顔を向けられたので、怯えたセイは縮こまってしまった。

「神徒様か」

「は、はい…」

「ちっさいなぁ、これで本当に強いのか?いや、まあ今までのもそうか」

 ちょっと(かす)れた、中性的な声。

 やはり男か女かもわからない。

「…ナイーゼはそう悪い奴じゃない」

「え?」

「まあ気にすんな、ああいう奴なんだ」

(…?ああ、もしかしてあたしとペトリエの会話を聞いてたのかな?)

 異様な風体、口数も少なそうだ。悪人では無いのだろうが…。

 今まで出会った事の無いタイプの人間に困惑するセイだが、そいつは構わずどんどん続ける。

「おい神徒様」

「は、はいっ!?」

「わたしを選んだというのは本当か?」

「は、え、な…何が?」

「司祭様にそう言われたんだが」

「えっ」

「紅蓮隊にはわたし以外、条件に合うのが居ないからな」

「ちょっと待って貴方まさか…」

 その異様な奴が、セイに覆いかぶさるよう前かがみになりながら告げた。


「わたしはスーマグレオ、鏡幽会から呼ばれてここに来た。神徒様は若い女の紅蓮隊員を探しているらしいが、そんなのわたし以外に居ないからな」
















 祭の終わった深夜、ミカハチの置かれた倉庫のような部屋に誰かが来る。


「今日は素敵な夜だったわね。ねえ貴方、私とちょっとお話ししましょう」

『その行動は当機にとって非常に困難です』

「あらそうなの。でもまあ、聞いてくれるだけでも結構よ」

『了解致しました』

「ふふ、嬉しいわ」

 ほぼ闇の中、ここにはミカハチの赤い電灯の光だけしかない。

「私、貴方の小屋に入ってみたいわ。駄目かしら?」

『申し訳ありませんが神徒以外は動力室に入れません。また御籠も神徒の為の設備ですので侵入は控えて下さい』

「動力室?とかは興味無いけど、小屋だけでも駄目?」

『はい、その通りです』

「ふぅん…つれないわね」

 人影は…一人。

 その言葉は、夜の冷たい空気とほぼ同温。

「ねえ貴方、一つ聞きたい事があるの」

『…』

「貴方、あの神徒様について率直(そっちょく)にどう思う?」

『…』

「無理に答える必要は無いわ。だけどあの娘…私の見立てだと、だいぶやる気が無いみたい。優秀だったというかつての7人目の神徒様とは比べ物にならないでしょうし、使命を果たすのは到底無理ね」

『…』

「あんな娘より、この私を神徒にしてみない?私は祭壇が憎いし、使命をやり遂げたいっていう想いも本物よ」

『…』

「…まあ、すぐにどうこうする気は無いわ。考えておいてね」

『…』

「じゃあもう遅いし、また明日。おやすみなさい」

『ペトリエ、おやすみなさい』

「ふふ、この事はセイちゃんには秘密よ♪」


 人影は去る。

 ミカハチの電灯が消え、部屋が暗闇に包まれる。

これを見て頂いた皆様にありがとう。

屈強な女子も良いよね。

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