任務完了?
目的地であるルマリンに到着したアドルフ一行は荷物と捕虜を乗せた馬車と御者を一旦待機させ、雇用主であるタリスマン商会とグリムロ傭兵団の所へ向かった。タリスマン商会のルマリン支店は協会の横に商館を立てていた。
商館にはダンとアドルフが来ていた。それ以外は馬車と捕虜の見張りを任せた。何でも「女の子が疲れているから休ませて欲しい」とのことだった。二人が商館に入ると、そこには大勢の人間がいた。その中に、傭兵団の一座を見つけたにで向かった。
二人が近づいてきたことに気づいたトロンは目を大きく見開いた。
「おっ、お前たち生きていたのか!?すまねぇ、助けにいけず、見捨てるようなマネをしちまって。生き残ったのはお前ら2人だけか?」
「いや、残りの奴らは疲弊しているから、別の所で休んでいる。」
「そうか、それは良かった。同じ仕事を受けた奴が死ぬのは心が痛くなる。」
「ははは、心にも無いこと言うなよ。元々、俺達を見捨てんのは最初から決まっていたんだろ?」
トロンの顔から笑みが消えた。
「何?」
「だってそうだろう?練度の低いギルド会員をまとめてチームするなんて普通に考えてありえない配置だろ。それを最後尾の馬車を当てた。つまり、襲撃が来れば見捨ててトカゲの尻尾きりって奴だ。そしたら、安全に移動でき、且つ死んだ俺達に報酬金を支払う必要もない。」
「おいおい、それは言いがかりだ。チームに関してはあれがベストだったんだ。仮にギルド会員をそれぞれのチームに割り振っても足を引っ張ったら元も子もないだろ。」
「まあ、別に俺は見捨てた事に関しては報酬さえ払ってくれたらいいよ。」
「わかった。支払おう。その代わり、護衛していた馬車を引き渡せ。」
トロンは不敵な笑みを浮かべた。荷物を持って来られなかったと思っているのだろう。
「依頼内容は護衛であって、運搬ではない。あんたたちが捨てた荷物を俺達が運搬は依頼に含まれていないはずだ。ダーブラからルマリンの護衛はしたし、殿をした俺達が仕事していないとなると、ただ逃げてただけのあんたら傭兵団はどうなんだ。仕事してないとなるだろ?俺達の報酬金が無いなら、傭兵団も無いはずだ。」
「雇い主は俺達傭兵団だ。立場が違うだろ!?」
「今回の依頼はそもそも人員を賄うものだ。つまり、俺達も今回だけは傭兵団の一員となっているはずだ。盗賊から逃げたレッテルにさらに団員に金を払えないとレッテル貼られたら、この傭兵団は仕事なくなるだけでなく、団員が抜けていくだろうなぁ。」
「クッ、それは俺を脅しているのか?俺達傭兵団は脅しに屈しないぞ!」
トロンが重心を落とした。戦闘態勢に入ったらしい。
「いやいや、俺はあんたたちを心配しているだけだよ。あんたたちと戦うつもりもない。それに戦ったらあんたたちの評判がわるくなるだけだぞ。」
トロンは不機嫌な顔をした。
「ふん、心にもないこと言いやがって。わかった。報酬金は人数分払う。それでいいだろ?これが報酬だ。確認しろ。」
トロンはアドルフに金貨の入った袋を投げ渡した。アドルフはキャッチするとジャラと袋から音が聞こえた。見た目に反して袋は重かった。
「ああ、ちょうどだ。それじゃ、俺らはこれで帰るよ。」
「二度と顔を見せんな。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
アドルフとダンは商館を出た。二人が馬車へ向かう途中、ダンが話しかけた。
「なぁ、俺来た意味あったのか?」
「というより馬車のところにいて欲しくなかっただけだ。」
「あん、それって俺が荷物を盗むってことか?」
「いや、あの3人が盗賊の仲間じゃないかと思っている。仲間のところに戻るのをつけて盗賊の拠点を見つける。馬車はその餌だ。」
「は?何であいつらが盗賊の仲間なんだ?」
「何で盗賊相手した時、お前だけ4人だったんだ?そして、あの3人は何で1人ずつなんだ。それが気になる。別に違うならそれでいいし、仲間の場合はこの報酬を渡す必要ないし、盗賊なら討伐報酬もらえるかもな。」
「いや、お前のあの魔法みたら、今逃げんのは悪手だろ。つけるとしたら解散後じゃないか?」
「うん?あの魔法ってたかが【火球】だろ。下級魔法だぞ。」
「いやいやいや、問題はあの数だ。あんなの魔法使えない奴にしたら【火球】一発で死ぬんだ。それがあんだけきたら、絶望するぞ。」
「そうか。今まで魔法使いとほとんど相手したこと無いから、わからなかったな。」
今まで戦ってきた相手は、ガゼフのような戦士、キングベアなどの魔獣だ。キースの場合はただ魔力を纏わせて殴ってくるだけ。それでも強いのだが。今回の鉄の魔法使いは魔法合戦した初めての相手だった。
「とりあえず。戻ろうぜ。無かったら別に元々俺らのものじゃねーしな。」
「そういや、捕まえた奴の尋問どうするか。」
ふと、アドルフは捕虜のことを思い出した。
「尋問するだけしといて後は憲兵に引き渡して換金だ。」
しかし、ダンの予想を外し馬車の所に戻ると馬車はなく、代わりに御者の死体がおいてあっただけだった。




