表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
1/6

プロローグ



 長尾ながお智子ともこは、空を見上げていた。

 銀色のバトンが、青く高い秋空に吸い込まれるように舞っていた。

 あの空を見上げた瞬間から、新しい挑戦と冒険が始まった。

 智子はそう思っている。


◇   ◇   ◇


 九月も中旬に入った。

 群馬県の中之条中央小学校では、運動会の準備が始まっていた。

 智子のクラスの五年一組でも、休み時間になると運動会の話題で持ちきりだった。

「リレーのれんしゅうやろうぜ。二組は、もうきのう、やってたぞ」

「はやくおうえんの練習しようぜ。三組はもう、やったってよ」

 といった会話があちこちから聞こえてくる。


 そして、運動会につきものの入場行進の練習も始まった。

「はい、全体、止まれ! イチ、ニ!」

 担任の皆川先生の快活な号令が校庭のトラックに響いた。

 他のクラスは体育の時間に入場行進の練習をしているが、智子たちのクラスは違った。皆川先生は「体育の時間は運動に集中するもんだ」と言い、放課後に練習をさせていた。

「よーし、集まれ!」

 皆川先生は、自分の周りにクラス全員を体育座りさせ、練習の講評と運動会当日の注意を説明しはじめた。


……先生、また同じ話をするのかな……。一番後ろに座っていた智子はそう思い、よそ見をしていた。


 校庭のトラックの中では、バトン部が演技の練習を始めていた。

 この小学校では、運動会の昼休憩の時間に、吹奏楽部の演奏にあわせて、校庭の真ん中でバトン部が演技をするのだ。先週、部員が集められて練習がはじまったと、智子は聞いていた。

 バトン部の女子児童は、バトンを高く宙に放り投げたり受け取ったり、バトンを指先で回転させたりしていた。

 空は青く高く、西側にはうろこ雲が広がっていた。まだ夏のような暑さは残っているけど、さわやかな日だった。

 青い空に銀色のバトンが舞う姿に、智子は、丸く大きい目を広げて見入っていた。 この姿を絵に描いてみたいと思った。


「長尾!」

 よそ見をしていた智子は、皆川先生に声を掛けられた。びくっと背筋を伸ばし、慌てて正面を見て返事をした。

「はい!」

 両耳の上で結ばれている、濃い栗色のツインテールがふわっと揺れた。

「さっきから、空ばかり見てどうした? 空でも飛びたくなったのか?」

 皆川先生が笑いながら言う。クラスの子達もつられて笑う。

「すみません……」

 智子は少し頬を染め、頭をちょこんと下げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ