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第1話 空から落ちてきた青年

空気は鋼の壁と化した。


絶対的な暴力伴う虚無が、彼を飲み込んだ。それは単なる落下ではなく、まるで空そのものが異物を吐き出したかのような、重力による追放だった。


地面も、天井も、光もない。ただ、空の最果てから落ちていく自分を、虚無が貪り食っていた。


「あ……!」


悲鳴は風の咆哮に掻き消され、喉の奥で死んだ。パーカーが激しく体に打ちつけられ、乾いた音を立てる。


決死の速度で雲を切り裂き進む中、外れたフードが激しくはためき、視界を遮っては露わにする。水蒸気は、氷の針となって肌を突き刺した。


歯を食いしばる。眼下に広がる景色は、もはや緑の斑点ではなく、差し迫った脅威へと変わっていた。


ズドォォォン!

音が届くより早く、衝突の衝撃が半径5メートル以内の空気を弾き飛ばした。衝撃は土埃ではなく、岩の破片と引き抜かれた根を巻き上げた。


瞬間的に形成されたクレーター。その完璧な地の窪みに、主人公は嵌り込んでいた。腹部の上で手は動かず、上空では彼が通り過ぎた後の真空によって、雲の残骸がまだ渦巻いていた。


惨劇の後に続く静寂の中、彼はそこにいた。血の熱がパーカーを濡らし始める。生き延びてはいたが、真の問題は、なぜ彼らが……。


「おい、こっちだ!」

「ちょっと、アオイ! そんなに急がないで」

細く柔らかな声が響き、近づいてくる足音が聞こえた。


「……え、人間だわ」


「なんだよ、てっきり大金になるような悪魔かと思ったのに」


「またそんなこと言って。フラン、あんたは変わらないわね」


「血が出てる!」


「助けて! 静かに抱え上げて」


彼らは慎重に体をクレーターから運び出した。毛布を広げ、彼を横たわらせると、ゆっくりとパーカーを脱がせた。


アオイが少年の顔に耳を寄せた。突然、微かな吐息を感じた。その温かな息に触れた瞬間、彼女の全身に震えが走り、頬が淡い桃色に染まる。生きていたことに安堵し、彼女は微笑んだ。


見知らぬ少年の体の隅々まで汚れを拭き取るうちに、時間は過ぎていった。三人は立ち尽くし、好奇心と困惑が入り混じった眼差しで彼を見つめていた。


「どうするの? 重傷なのはわかるけど、彼のことは何も知らないし……それに、空から来たのよ。上の連中に追放されたんだわ」


「それはどうかな」


「どういう意味?」


「この体にはエネルギーがない。ただの普通の人間だ。それに、この高さから落ちてどうやって助かったのか……普通なら粉々になっているはずだ」


「しぶとい奴っているもんよ」


アオイは決意を込めた目で少年を見つめて言った。すると、フランが彼女の肩を叩いた。


「聞きなさい。もし彼が『上の連中』の関係者なら、私たちは逃げるしかないのよ」


「フランの言う通りよ。これ以上ここにいたら危険だわ、セリア」


「わかってる、上の連中に関わっちゃいけないことは。でも、もし彼が追放されたのだとしたら――」


「強情言わないで」


「……はぁ、わかったわよ」


全員が賛成しているわけではなかった。助けることは正しい衝動だったかもしれないが、追放者にまともな生活を与えようとすることは、神々の定めた罪と見なされていた。


人類は絶え間ない審判と告発という苦しみの中に生きている。


数秒後、少年の右手が微かに動いた。その仕草を、誰もが見逃さなかった。疑念の沈黙を破り、三人は驚きと警戒を持って歩み寄った。


少年が歯の間から、何かを呟いた。


「……に、逃げろ」


困惑して顔を見合わせる彼女たちの前に、突如として「それ」が現れた。


ドォォォン!


爆発が砂地を激しく叩き、周囲に砂塵の波を巻き上げた。


「くそっ、何が起きたんだ!?」


フランが腕で顔を覆いながら叫んだ。塵のカーテンが、目の前の標的を遮っている。


突然、不可視のエネルギーが空気に広がった。その気配に気づいた瞬間、パニックが彼女たちを襲う。フランは歯を食いしばりながら剣を抜き、セリアはエネルギーの発生源へと手をかざした。


アオイは脚を震わせ、右手を胸に押し当てながらゆっくりと後退した。


「あいつ、何者……? まさか、彼らの一人なの? ……」

塵が晴れ、威圧的な姿が姿を現した。


深い漆黒のプレートアーマーを纏い、そのふちは乾いた血と曇った金で鍛えられたかのようだった。金属の各パーツには、死の鼓動を放つ「苦悶のルーン」が刻まれている。


肩からは深紅のベルベットのマントが垂れ下がり、その長さは灰の中を血の河のように引きずっていた。何世紀もの時を経て破れてはいるが、冒涜された権威を漂わせている。


黒い棘の王冠と一体化した兜の下に、人間の目はなかった。代わりに二つの虚無の淵が冷たい蒸気を放ち、その視線は相手の肉体ではなく、魂の脆さを見透かしていた。


右手には、凡夫には扱えぬほど巨大な剣を携えていた。刃は滑らかではなく、刻み目と鋸歯状の突起に満ち、斬るためではなく「引き裂く」ために設計されている。


剣を動かすたびに周囲の空気が歪み、暗黒の静電気と微かな嘆きが後に残った。


「皇帝……(エンペラー)」


「なぜこんな場所に……あいつらは『堕ちた者』を殺す時以外、姿を見せないはずなのに」


「目的はきっと……」


「この少年ね」


「セリア、目を離すな!」


ミシッ! パキッ!


皇帝が彼女たちの方を向いた。剣を掲げ、フランが立ち塞がっている少年の体を指し示した。


「通さないわよ。命を懸けてでも、この子を守る」


「こいつ……予測不能だわ。動きは遅いけど、攻撃に移れば危険極まりない」セリアが低く呟いた。


皇帝に挑むなど、上の連中か「聖者」にしか許されない無謀な挑戦だ。その力は天使に匹敵し、神域の守護者そのものだった。


彼らのエネルギーは常軌を逸しており、単なる鎧と呼ぶにはあまりに強大すぎた。五人の皇帝が存在し、そして目の前にいるのは……。


「『強欲の皇帝ヴィシャス・エンペラー』……あいつだわ」


皇帝は片膝を地面についた。だがそれは敬意ではなく、狩りの姿勢だった。巨大な大剣を肩に担ぎ、瞬きする間に、張り詰めた緊張が爆発した。


「伏せて!!」


叫びが終わるのと同時に、空気が切り裂かれた。

ヒュンッ!


皇帝が人間離れした速度で水平に薙ぎ払った。一瞬、時が止まったかのように刃が大気を貫き、現実を歪ませる純粋な圧力の弧を描き出した。


轟音は後からやってきた。ソニックブームが瓦礫と土の壁を巻き上げ、軌道上のすべてをなぎ倒した。


衝撃は凄まじかった。フランの前に突如としてエメラルドグリーンのエネルギー障壁が具現化し、皇帝の闇の斬撃を食い止めた。盾は激しく振動し、攻撃者の黒い鎧を照らす緑の火花を散らした。


言葉もなく、皇帝は構えを調整した。ガントレットの金属が軋み、さらなる力が込められる。


剣の闇のエネルギーが緑の輝きを食らい始め、油圧プレスにかけられたガラスのように、障壁の六角形の表面に亀裂が入っていく。彼にとって、その盾は防御ですらなく、ただ壊されるのを待つ一時的な足止めに過ぎなかった。


重厚な盾が砕け散ると、フランは苦悶の吐息を漏らした。一秒も無駄にせず、彼は動かない少年の体を必死の思いで肩に担ぎ、走り出した。


逃げようとしたその時、アオイが彼の腕を強く掴み、足を止めさせた。


「待って、見て!」セリアが震える声で、少年の首筋を指差した。


意識を失った少年の白い肌の上に、以前はなかった刻印が輝いていた。超自然的な精密さで刻まれた、二本の交差する剣。


フランは目を大きく見開き、硬直した。肩にかかる少年の重みが、より現実的で、より危険なものに感じられた。背筋に冷たいものが走り、彼は消え入るような声で呟いた。


「この男……『罪人ペカドール』だ」


皇帝は、少年の首の刻印を確認するかのように、ほんの一瞬だけ動きを止めた。そして――。


黒い残像となり、超人的な速度で突き進んだ。フランが反応するよりも早く、皇帝の凄まじい蹴りが放たれ、彼の剣を宙へ弾き飛ばした。


衝撃でフランの体は吹き飛び、砂の上を数メートル転がって動かなくなった。


セリアとアオイは拳を握り締め、避けられぬ運命を覚悟したが、黒い鎧の速度は論理を超越していた。


瞬きする間に、皇帝はセリアの背後に現れた。悲鳴を上げる暇もなく、鋼の拳が彼女の顔面を掴み、暴力的な力で地面に叩きつけた。石が砕ける音が響く。


「嫌、嫌、嫌! セリア!」アオイが叫んだが、その言葉は途中で途絶えた。


黒い金属の巨体が彼女の前に立ちはだかり、光を、そして空気を遮った。アオイは震えながら地面に崩れ落ち、皇帝の影が彼女を完全に覆い尽くした。彼女は目を閉じ、自らの運命を待った。

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