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適正試験

試験会場はギルドの裏に立つ競技場で行われる。


「じゃぁまずは神田浩一お前からだ、フィールドに上がってこい」


この競技場は貴族が使う馬上大会や祭りでは賭け試合、武闘大会、などなど祭りごとにも使われ、ギルドが管理している、だから見学する者はしっかりした観客席で楽しく観覧できるというわけだ。

そんなミッシェルとロトのせいで、沢山集まった観客の目にさらされ、可愛いクマさんの刺繍をされたエプロンアーマーと聖なるネギを携えた浩一はなんと間抜けに見える事か、

仕方ない、武器を買う時間も無くマーサにギルドに連れてこられた。武器を買いたいと言ったのは言ったのだがミッシェルに持ちなれない武器で試験を受ければそれで自分を傷つけるからネギで大丈夫なんて言われて却下されたのもあるのだが・・・・

だがネギだ、ネギでどう戦えというのか


「おい、あいつネギとエプロンだぞ」


「おいおいぼくちゃん、ふざけてんのかー!」


やいのやいのと周りが騒ぐ、わかっている自分の今の格好はなんとも間抜けでふざけていることくらい、こんなことになるから嫌だったのだ。

ギルドマスターも微妙な顔をする。


「ネギが武器ってマジだったんだなぁ、確かに普通のネギにしてはつやっとしているが、そんな装備で大丈夫か?」


「全然無理」


浩一は嫌そうな顔をしながらもネギを構える。


「お、おう、なんかお前不憫だな、とりあえず試験を始めるか、武器を使うのは初めてらしいからな……Eランクの‥…ピッチャあたりでいいか」


「それはどんなモンスターですか?」


試験では試験官がモンスターを召喚してその戦闘を見てランクを決める、ギルマスは当然知っているだろうと言うように言うので、浩一は戦う物の生態を知るために問う。


「ん?あーそうか異世界人だっか、ピッチャは小さいドラゴンだ、ちょこまかと煩わしいがそんなに素早いわけでもない、ただ、顎の力が強くて噛まれたら確実に骨を砕かれるから気をつけろ」


「わかりました」


緊張しながらも浩一はネギを構える、そして自分の手元を見て泣きたくなる。


「じゃあ行くぞ、召喚獣ピッチャ!」


目の前の魔法陣が光りピョコンと可愛らしい子犬ほどのドラゴンが出て来た。

召喚されて戸惑っているのか首を曲げていろんなところを確認している、そんな姿が可愛いなぁと思っているとピッチャが浩一を見つけ目線が合う、キュルキュルした目が可愛いと思っていると口を大きく開けて奇声をあげながら浩一に走って来た。


「きしゃあああああああ!!」


「うお!この!」


襲い掛かってくるピッチャに驚きはしたがネギを何とかピッチャに向けて振る、すると

小さなドラゴンの体と頭がスパンと分かれた。


「え、マジで切れるの!?」


ぱた。ころりと切れて落ちているピッチャを見て、何となく嫌な気分になりながらもネギを見れば赤い血を滴らせている、ネギに赤い血・・・・なんかヤダ


「本当にネギが武器になってるんだなぁ、驚いたが、この程度なら倒せるか、ならもう一匹Eランクモンスター行ってみるか」


「もう一匹ですか、」


浩一の問いにギルマスはじっと観察する様に浩一を見る。


「ピッチャは好戦的なモンスターの中でも弱いモンスターだ、いつもなら別のモンスターを試験に使う、そっちで試験してもよさそうだな」


つまり、これからが本当の試験という事だ。


「本当の試験、頑張ります」


「うん、いい顔だ、このモンスターは森に入ったらよく出会う、3匹で動く初心者泣かせのモンスターだ、頑張れよ」


「はい!」


一気に3匹と聞いて浩一は少し臆してしまう、だが本当にネギが武器になるとわかった今、もう帰れない現代の世界からこの世界に順応しなければならない、ロトも心配だし、仮にも勇者パーティーに居るのならば頑張らなければ。


「召喚!オノケ!」


魔法陣が光り個性のある3匹の猿が出て来た。きょろきょろとあたりを見回して浩一を見る、

浩一を見た3匹は顔を見合わせニヤッと笑う、3匹はサッと浩一を囲ってだが襲うのではなく騒がしく歌いながらおちゃらけて踊って浩一の周りをくるくる回る。


浩一はネギを構えながら猿たちの襲撃に備えるが、なんとも間抜けな自分の姿を考えると、どうも集中しきれない、そんなことを考えていれば後ろから頭を殴られる


「いって!」


「うきききき」


オノケの一匹が浩一を小突いたのだ、そして痛がる浩一を指さして笑う、イラっとしていると、また後ろから小突かれる、オノケたちは代わる代わる浩一を小突くだけで攻撃と言う攻撃をしてくるわけではない事に苛立つ


「あーーーーくそ!やーめーろーーーー!!」


ネギを振り回してわめく浩一を猿たちは指さして笑う、冒険者たちも笑って「坊主頑張れー」なんてからかってくる。


周りに笑われ苛立っているとオノケたちが一斉に襲ってきて、何とか対応しようとしたが一匹は真っすぐ浩一の正面から飛びかかり、

浩一の頭を押さえて飛び越え、一匹は腹を殴って行き、一匹がネギを奪って行った。


腹の痛みに膝をつき、えずきながらオノケたちを見ればオノケたちはネギを折って投げ捨てたところネギが伸びてきて、それを面白がりまたネギを拾ってちぎっては投げてた。

ギルドマスターは武器を奪われた浩一にもうだめだろうと思って試合を止めようと思ったがミッシェルに止められる。


「まだだ」


「まだってもう・・・・あれは・・・・」


浩一はゆっくりオノケたちに近寄るオノケたちはネギに夢中だったが浩一を見てにやにやしながらちぎったネギを投げつけて来た。ネギは顔に当たりオノケたちはわめく浩一を期待したが、その目の恐ろしい事、絶対零度の極寒の地にいきなり投げ捨てられたように縮み上がる、そして浩一はネギを奪い取り優しく撫で、背中のネギホルダーにネギをしまい、オノケたちの頭に拳骨を落とした。


「食べ物で遊んじゃダメでしょうがああああああ!!!!!!!!!」


「「「そっちぃぃぃぃ???????」」」


会場中が浩一の怒りに驚いた。いや、お前は武器にしとるやんと、


「俺はな!本当は武器にだってしたくなかったんだ!可愛い可愛い海翔(かいと)!俺の弟と!すき焼きにして美味しくいただくはずだった大切なセール品のネギだぞ!それを・・・・それを武器にしろだの、なんだの、そして大事なネギをおもちゃにしやがって!お前らは許さない!!!!ぼこぼこにしてやる!!!!」


「「「ききいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」」」


さっきまでの動きはどうしたのか、オノケたちは浩一にぼこぼこに殴られるのだった。


WIN神田浩一


何とか浩一はEランク試験に合格した。


勇者パーティーのおかんという二つ名を手に入れて、


「ききぃ」


次の試験の為にギルドマスターが近所の森への移動ポータルを開いてオノケたちを逃がそうとした。

モンスター召喚はレアリティーの低い、低レベルの物は近くのモンスターを召喚し高レベルの物は地下に捕獲している物を召喚する、と言ってもBランク以上のモンスターを召喚する事はめったにないのだが、そんなわけで悪戯好きなだけでさして害のないオノケは森に返すことにした。他の冒険者なら切り伏せられただろうが浩一はぼこぼこに殴ってお説教しただけだからだ、だがオノケたちは帰ろうとしない、


「どうしたお前達、帰っていいんだぞ」


ギルマスの言葉にオノケたちはもじもじして踵を返し浩一のもとに行く、


「な、なんだよ」


さんざん馬鹿にされ、さっきは怒鳴りつけたオノケたちに仕返しでもされるのかと、浩一は構えたがオノケたちは頭を地面に付けて「きぃ・・・・」と小さく鳴いた。


「え、なになに」


浩一がわけがわからず戸惑っているとギルマスが浩一の肩に手を置く


「テイムされたいんだとよ」


「テイム・・・・ですか?」


うんと頷くギルマス。


「浩一は確かテイマースキルSSSだったろ、戦闘スキルは正直使い物にならないが」


「使い物にならないって・・・・」


運動神経は無いのはわかっていたが戦闘スキルが使い物にならない判定を食らっていたことに浩一は肩を落とす。


「オノケはEランクモンスターだが・・・その知能、身体能力はEランクモンスターの中でもずば抜けている、武器を持てばAランクモンスターほどの連携能力と攻撃能力があるのではとも言われている、性格的に悪戯、遊びにしか興味がないからテイム向きではないが・・・・・・完全に服従しているように見えるなぁ」


「服従ですか・・・・」


浩一はギルマスの言葉を聞きながらオノケを見る、オノケは浩一にキラキラした目を向けている、

それはそれはまるで今生で最上の出会いを果たしたように、掛け替えのない尊敬する人を見るように、その穢れを知らぬ目は浩一をまっすぐ見ている。


「テイムしてやれ、戦闘の苦手なお前にはいい護衛だ」


「そう言われましても」


ギルマスは困っている浩一を見て気がつく


「あぁ、テイムの仕方がわからんか」


「はい」


「名前を付けるだけだ」


「え、そんなことで?」


なんてないように言われた簡単な方法に驚く


「そんなことで良いんですか?」


驚く浩一にギルドマスターは、顎を撫で厳しい口調で言う。


「名は大事だぞ、魂の形を決め、力を引き出す、冒険者も二つ名が付くことによってレベルが上がる者もいる、そしてファミリーネームはそのまま互いの力を結びつけ、関係を固める、テイムはそのモンスターに名前とファミリーネームを渡して自分との繋がりを強く家族としてモンスターを迎え入れる行為だ」


「な、なるほど」


浩一はそれを聞いて改めてしっかりオノケを見る、そして何かを思い浮かべながら名前を付けた。


「一番小さいのがケンで一番大きいのがダイで一番力があったお前がユウだ、神田ケン、神田ダイ、神田ユウだ!」


浩一がそう言うと、オノケの3匹の額が光り、額に同じマークが浮かんでいる。


「それが浩一のマークだ、これでこのオノケ達はお前の相棒たちだ、異世界人の浩一には特別待遇でオノケ達の武器を提供してやろう、ピピ、モンスター用の武器を渡してやってくれ」


「かしこまりました、浩一様こちらへどうぞ」


「は、はい」


「浩一の試験は一時休戦だ、マーサ僧侶、Cランクから試験開始だ」


自分は最低ランクそのEランクでも弱いモンスターから始まりだったのに、本当に自分は弱いのだなぁと少し落ち込む浩一だった。



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