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9. 情報は孔雀の庭で

本日3話目です。

少し短いですけど、お間違えのないように。

 メゾンからピーコック商会までは歩いて5分位。一本入った路地から大通りに出ればすぐだ。ゆっくりと歩きながら、オーキッドはピーコック商会の本店の前までやって来た。

 出入り口からは、薄いグレーの紙袋や包装された商品を持ったお客がひっきりなしに出入りしている。よく見れば、薄いグレーの包装紙には、小さな青緑色の鳥の模様が見えた。


「ピーコックのお店の包装では無いんだな」


 すれ違うお客の手元をチラリと見ながら、オーキッドは呟いた。

 まあ、そんなに直ぐに何もかもが判る訳では無い。

 ただ、あんな上質な包装紙を使えるのは限られている。上質な紙質で美しいあの色にこだわりが感じられるし、何より中央街でもあんな包装紙を手配できるのは、この店しか思い当たらなかった。


 一体誰が書いたのだろう。そして、誰があんな立派な本にしているんだろうか。まずはそれが知りたかった。何と言っても、自分がモデルかもという疑問は置いておいて、ともかくストーリー運びや登場人物たちが生き生きとしている処が良い。愛し合う(?)二人の青年が誤解や心のすれ違いをしつつ、真実の愛(?)を確かめながら、社交界や国家の陰謀や様々な事件を協力して解決している話だ。普通に読み物としても楽しめた。


 まあ、一つだけ頭が痛い所はあるけれど。


 そう、主役の二人の愛情を確かめ合う場面とか、嫉妬に駆られた辺境伯が宰相を束縛してしまう所などは……甘苦くて、背筋が震える描写が続く。それも結構な長さで。


 それを引いても、読み物としては楽しめたし、挿絵は素晴らしく美しかった。



 誰が書いているんだろう。

 本の裏表紙に描かれた、著者B・B、挿絵C・C、そして編集/販売D・Dの文字。

 イニシャルなのか、それとも奇をてらった暗号か? 


 B・Bなんて作家、聞いた事も無いけれど。



 ピーコック商会を探れば、何か出てくるかもしれない。まずは、包装紙の出どころであるピーコック商会のティールームで情報収集と行こう。



 オーキッドは足取りも軽く、ティールームに入って行った。




◇◇◇◇◇◇◇




「お一人様でございますか。それではこちらのお席にどうぞ」




 ティールーム『ピーコック・ガーデン』は、そこそこ混んでいた。上流階級の母と娘らしき親子連れや、買い物に来たらしい令嬢のグループが幾つかテーブルを占拠していた。男性達は喫煙が出来る外のテーブル席にいるらしく、室内は女性たちの賑やかなおしゃべりが聞こえていた。


 オーキッドは若いギャルソンの案内について、大通りを望む窓の近くのテーブル席に腰掛けた。右隣には、貴族らしき少女4人グループが傍にいた。年頃は15歳前後の若い令嬢だ。お茶を飲みながら賑やかにきゃっきゃと話に盛り上がっていた。

 反対側には、若奥様らしき2人連れがいたが、何やら深刻そうに声を潜めて会話をしていた。


 最近流行りの珈琲という飲み物を頼んで、バッグから単行本を出し読む振りをしながら周りの様子を伺う。なるべく周囲に溶け込むように心掛けるが、どうしても目立ってしまう様だ。チラチラと視線を感じずにはいられなかった。






「じゃあプリシラ様は、まだご覧になっていないの?」


「ええ。メルジー様。昨日まで郊外に言っていたものですから。テルシーヌ様とアリシア様はご覧になっていて?」


「「届いた日に読みましたわ」」


 二人の少女の声がハモって聞こえた。


『おや?』


 オーキッドは本から目線を外す事無く、隣の少女達の会話に耳を傍立てた。今、読んだ。と言わなかったか?


「今回も素敵でしたわ。主役が替わってどうなるかと思っていましたけど、更に素敵なお話しになりましたわね。安定の続編で、シリーズ化して頂けそうで何よりですわ」


 ミルクカフェ色の髪に、大きな鳶色の瞳が印象的な少女が言った。うーん? どこかで会ったことがあるかな? 何となく見覚えがありそうな? 


 彼女達は興奮した様子で話を続けているが、時折小さくヒソヒソと声を潜めたり、その後顔を真っ赤にしてくねくねと悶えたり? と意味不明な挙動不審な様子で盛り上がっていた。


 でも、キーワードが幾つか聞こえている。最近届いた本。登場人物が交代したシリーズ本。少女達が見悶えて、声を潜める内容。


 まさか、アレの事か? もしそうなら、この娘達もあの本を手に入れて読んでいるのか? なんて、嘆かわしい……


『珈琲を飲んで、少し落ち着こう』


 そう思ったオーキッドがカップに口を付けた。


「「ああ、どこにいらっしゃるのかしら、オーランド・ヴィスタ・バルモンド辺境伯」」


 少女達の夢見る様な呟きだった。






 ぶ・ぶーっ!!


 


 オーキッドは思わず珈琲を吹いた。




 第一読者ヲ発見シタ。


 


 




ブックマーク、誤字脱字報告ありがとうございます。

感想も頂けると嬉しいです。

評価ボタンの☆も付けて頂けると頑張るパワーになります。


ティールーム『ピーコック・ガーデン』で会った女の子集団は

妖精姫のお話しに出て来た『愛と美しき者を愛でる会』の

4人娘達です。そうです。この本の熱心な読者で、やや腐りかけ?

ています。

さて、この4人からカレンさんに行きつけるのか?


楽しんで頂けたら嬉しいです。

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