いきてみようか
「君はさ、何のために生きているんだい」
唐突にそんなことを聞かれた。何のために、そんなことを言われても返答に困ってしまう
「強いて言うなら、惰性かな」
生きているから生きている。それだけの事だと思う。さらに言えば、わざわざ死にたくはない。死はとても怖い
「僕はね早くこの命を終わらせたいよ」
「えっ」
「ん、どうしたの」
こいつは、しれっと何を言い出すんだ。そいつを見るとニタニタと笑っていた。子供のくせに何か、えたいのしれない何かを感じる
「まあ、そんなことあるはずが無いんだけどね」
どっちだよ。まるで詐欺師を連想するような奴だ。どうにも信用ならない。
「そんな顔しないでよ。僕は嘘だけはつかないから安心して欲しいな」
どうだろうか、こちらの心情を覗いてくるあたり、余計に信用できなくなってくる。ゆじうよきだったか、その名前だって偽物っぽい
「そうそう、友達を呼んでるんだ。そろそろ来るはずだよ」
また唐突に・・・いつの間に連絡したんだ。視野の前方から誰か走ってくるのが見える。少女のようだ。
「私はいたうゆき。始めまして」
意田雨雪。うーん、どうにもよくわからない。訳の解らない名前にするのが最近の流行りなのか、もしくは偽名か
「僕から問題ね、全ての始まりの形は何でしょうか」
なぞなぞだろうか、全ての始まりの形。うーん、真面目に考えるのなら
「私わかる。球体でしょ」
「そうだよ。正解、球体が全ての始まりだ」
やっぱりか、全ての根元である原子、際も安定してる形状であって、始まりと相応しい完璧の一つ。
「だってこの問題。始まりなら私に解けない問題はないよ。始める事が私の存在意義だからね」
「うん、知ってる。君が答えるってことも解っていた」
まて、こいつらの会話についていけない。意味不明な事が多すぎる。何処から確認すればいいのか迷うほどだ
「さて、次は旅人さんね」
どうやら疑問を解消する時間をくれないらしい
「何で始まりが球体なのか答えて」
また言いにくい問題だ。確かに球体は安定している形だとか言ってもいいのだけど、それで目の前の子供が納得するとは思えないし
「全ての根元である原子が球体だからだろ」
とりあえず、無難な答えを言っておく
「まあ、何でもいいんだけどね」
いいのかよ。何なんだ本当に、訳が解らない
「確かに君の思ってる通り、球体は安定している。そして、とっても曖昧で・・・人智を超越している」
「・・・何が言いたいんだ」
球体を、人は認識できないと言いたいのか、安定しているのに曖昧とは・・・そもそも何で人の思考を読めるんだ
「君たちは円すらも解析出来ていないじゃないか。0から9のくくりに入らない数字、君たちは見つけられていない。その不明が、又不明の数だけ積み重ねられた球体について、本当に理解したと言えるかい」
円周率。ああ、確かに円周率を表現する数字を確かに見つけられていない。曖昧過ぎるそれを無理矢理あてはめているだけだ。
「人智を超越したものを、人の認識の中に無理矢理あてはめようとするものだから、収まりきらない部分が、それを無限と認識させてしまう」
そいつは笑っている。不気味なくらいに、ただ笑っていた。あの少女はいつのまにか居なくなっていた。本当に彼らは、わからない
「滑稽だよ。自ら無限を産み出すなんて、苦の塊をね・・・」