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実の子が見つかったからと邪険にされたので、屋敷を出た養女の話  作者: 山田 勝


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グルジア大公家の凋落

「ミレーヌ様、頂いた扇お返しに参りましたの。父がダイア侯爵家の派閥に加わりまして、父の命令ですの。残念ですがお別れですわ」


 黙って処分をすればよい物を、わざわざプレゼントを返しに来る令嬢がいたわ。

 後ろにはメイドと従者を大勢引き連れている。あれは平服を着た騎士ね。

 ここを敵地としてみているのね。




 失われた王女メアリースチュアートが見つかってからグルジア家の凋落は止らない。

 お父様は外出もせずにうなだれているわ。

 お母様は他家の社交界に出ているが芳しく無い。


 寄子、一つの家門につき毎年金貨100枚の上納を義務づけているが、それも私が王妃になることを見越してのこと。


 これから先はいくら知恵を絞っても無駄だろう。




「さあ、フリア、渡して差し上げて」

「はい、お嬢様」


 私がプレゼントした扇は派閥のアイテム、これを携帯させて忠誠心の証にしていたわ。


 メイドに盆を持たせその上に乗せて私に渡す。無礼だわ。



「あら、せっかくあげたものですわ。もったいないわ。ギリー、番犬にあげてオモチャよ」

「はい、お嬢様」


 私はハンカチで挟んで扇を受け取ったわ。

 令嬢の目の上にシワが出来た。

 お前の匂いがついた扇など犬で充分との侮蔑よ。




「で、では、ごめんあそばせ」


 お茶も飲まずに帰ろうとするわね。



「あら、お茶ぐらいお飲み下さいませ。最期にお嬢様にグルジア家の最高のお茶を差し上げたいわ」


 目力で押さえ込む。使用人達に目で合図を令嬢たちを取り囲むようにしたわ。


 一気に緊張感に包まれる。



「アウグリッタ、家宝の茶器で特別なお茶を入れて差し上げて」

「はい、お嬢様」


「ヒィ、それは・・・」

「な、何だ」

「「「まさか・・」」」


 金のポットとカップだわ。毒杯を連想させる金色。


 毒でも入れそうな雰囲気だわ。


「最近、急に倒れる方が老いも若きにもいるそうですわね。お気をつけ下さいませ・・」


「お嬢様、最後って、まさか・・・」


「さあ、お茶をお飲み下さいませ。私は結構ですわ」


「それは・・・毒杯?」

「まさか、毒のグルジア家と侮蔑したものとみなしますわ。昔話ですわ」


 我が家門は毒をもって政敵を倒し王家に仕えてきた栄光の歴史がある。


 令嬢はブルブル震えているわね。


「まさか、グルジア家は大公家ですわ。伯爵家ぶせいの令嬢に断られるなんて・・・グスン、これが本当に最期ですわ。もし、お体の調子が悪かったらご家来の方に飲んで頂いても結構ですわ。面子が立ちますわ」


「「「「ヒィ」」」」


 使用人達から声があがった。忠誠心の欠片もないのね。


「・・・では、先にミレーヌ様からお飲み下さい・・・貴族の順位ですわ!」



 お茶を先に飲めと言う。お茶を一杯しか入れてない。

 だから、私は提案をした。



「あら、では殿方のようにコインで決めましょう、表と裏、どちらが良いかしら。マルガリッタ、コインを」

「はい、お嬢様」


 もめたらコインで決めるとの風習があるわ。



「ヒィ!」

「「「お嬢様!」」」


「まあ、失禁をなさったのね。臭い、臭いわ。この机と椅子は買い換えるわ」


 令嬢は肩を担がれて退場するわね。


「待ちなさい。お小水で廊下を汚すのかしら?」


「お許しを・・・」


「マルガリッタ、お着替えを用意して差し上げなさい。汚物処理業者、今日来ていたわね」

「はい、お嬢様」


 家に出入りする汚物処理ギルドの女の作業服と令嬢のドレスを交換してあげた。


「貴方は失禁してとても臭いのですから、その汚れた作業服を着れば匂いは目立たないですわ」

「ヒィ・・・」

「お礼を言って下さらないと・・・」

「あ、有難う存じます」



 いい気味だが、これも余興にしか過ぎない。




 本当は毒は入れていない。

 ただのブラフだったわ。



「全く、覚悟もないのに嫌がらせをするから失禁するのよ・・・そのまま宣伝をしてあげなさい」


「畏まりました」


 さあ、どうするか?


「あら、お父様」

「ミレーヌよ。領地に戻ろう・・・ドラゴンが暴れたら城の地下に籠もるのがセオリーだ」

「いえ、策はありますわ」



 ゼークト家を寄子にしてメアリー返還の裁判を起させましょう。

 メアリーは贅沢三昧で追放されたと主張させるのです。

 勝てなくても悪評は広まりますわ。



「あの家門は東方貿易の失敗で爵位を手放さなければならないほど困窮していますわ」


「しかし・・・な」


「では、平民を1万人殺す策にしますか?」

「ヒィ、・・・分かった。許可する」



 ゼークト伯爵を呼び出したが、代わりに夫人が来たわ。

 調べでは実子の代わりにメアリーを閉じ込めて愛玩動物のように可愛がり無聊を慰めた女だわ。



「ゼークト伯爵夫人マリアロッテでございます。主人は気の病で伏せっております」

「ミレーヌ・グルジアですわ」


 伯爵夫人なのにメイドを1人しか連れていない。


 時間が無い。単刀直入に話を振った。


「資金援助をしますわ。その代わり告発をして欲しいのですわ」


 得得と利益を話したが・・・・



「お断りしますわ。スージ、帰ります」

「はい、奥様」


 簡単に断った。


「何故ですの?」

「メアリー様にはいろいろ助けて頂いたわ・・・せめて邪魔をしないのが罪滅ぼしだわ。たとえ平民に墜ち栄光あるゼークト家が滅んでも・・・グスン」


 様?もう、執着はないのかしら?



「そう、なら、最期にお茶をお飲み下さいませ。奥様の決意、貴族の女として敬意を表しますわ」



 金のポットを用意したわ。

 一杯だけいれた。やはり、意味は分かるのだろう。固まっている。


「もし、具合が悪かったら使用人の方が飲んでも大丈夫ですわ。面子の問題ですから」


「奥様、私が頂きますわ」

「スージ・・」


 フン、忠義メイド気取りか・・・気に食わない。


「スージ、お茶を頂くのは女主人の役目ですわ。引っ込んでいなさい」

「奥様・・・」


 しかし、マリアロッテは涼しい顔で飲み干したわ。



「大変美味しゅうございましたわ。では、これで最後ですね。失礼しますわ」



 はったりが利かない。



 もしかして、聖女の気が感化したのかしら・・・

 気に食わない。気に食わない。気に食わないですわ。

 もう、あの策を実行するしかないわ。



「相手が聖女なら聖女を超える存在になれば良いわ。しばらく研究塔にこもりますわ。お父様には内緒に」


「は、でも、私どもにお手伝いをさせて下さい」


「いいわ。これは私の問題よ」



 犯罪は1人で行うのが上策だわ。

 関わる人が多かったらバレる。

 疫病を流行させる。



 我が家門は毒と解毒剤がセットで使えが家訓だわ。





 ・・・一方、メアリーは。



 ☆☆☆


 メアリーは王宮にあがった際、ぼんやりと医療に携わろうと考えていた。

 厳重に警備されたメアリーの元に二つの報告が来た。


「メアリー様、ポーションが品薄です」

「ハニャ?メアリーちゃん発掘でポーションいらない説が出てきたの~」

「いえ、値は高騰しています」


「ハニャ~?おかしいの。調べてみるの~」

「はい、メアリースチュアート様」


「もう一つ、報告です。シマ・・・いえ、商売のテリトリー内の下水ギルドのマダムが作業着と交換で高価なドレスをもらったと・・・しかし、少々臭いとの事です。『洗って売るわ』とのことです」


「三行ニュースなの~、どこの家門なの~」

「グルジア家です。ですからお耳に入れました」



 グルジア家・・・これはゼークト伯爵夫人が言っていたな。気をつけろと・・・

 何か情報が不均等だ。

 あたしゃ、閃いたよ。少しこちらから探ってみるか。


「政争なの、メアリーちゃんは可愛いだけの幼女から腹黒幼女にならなければならの?」


「メアリー様・・・・それはすでに・・ゴホン」



 ・・・部下は口をつぐんだ。この時のメアリーはそれはそれは見事なおすまし顔だったと云う。




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